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インド旅行記 ー はらいそ通信 - vol.4

 超豪華なホテルを満喫することもなく後にした私たちは、コルカタの街に繰り出した。コルカタ、昔の言い方はカルカッタ。インドの西に位置し、人口は約450万人。イギリス人曰く「この宇宙でもっとも最悪の町」といわれたコルカタは、路上生活者は200万人とも300万人とも言われる。ある意味で最もインドらしい街ともいえる。

私たちを乗せたバスは、街の中心部に向った。とにかく、人と車の大混乱。コルカタ中の人と車が目の前に集まっているような状態。喧騒と無秩序。なんじゃこりゃって感じ。「インドを頭で理解しちゃいけないよ」友人の声が聞こえる。しかし、目の前の景色をそのまま受け入れることに体や頭が拒否反応をしめしている。

しばらくすると第一の目的地に到着。まずはヴィクトリア記念堂を外から見学。コルカタのタージマハル」と呼ばれる白亜の殿堂は、1901年に死去したインド皇帝ヴィクトリアを記念して、白大理石で造られた建物である。バスから外に出ると物乞いばかり。しかも、体の不自由な子どもや老人が多い。まいったなぁと心でつぶやきながら無視をする。路上には人や犬が寝ている。

インドは独特の臭いがする。カレーとお香、埃とゴミ、犬と牛、そして血と汗と涙と欲望の混じった匂い。日本にはないインドの匂い。その上に喧騒。クラクションと怒鳴り声と謎めいた誘惑の囁きが、街に反響している。煩悩のカオス。そう、それがいインドだ。気の弱い私は、すっかり飲み込まれている。

「お昼はもちろんカレーね」インドに圧倒され食欲はなかったが、ガイドさんが案内してくれた本場インドのカレーが意外に美味しく満腹。食後の腹ごなしに川べりを散歩する。沐浴をしている人がいる。初めて見る沐浴に感激。と言いより、驚きである。本当にこんな汚い川で水浴びをするのか。と、思う間もなくインドのご婦人は、さも当然の如く腰まで川に浸かり頭から水をかけている。「日本人は絶対にしちゃいけないよ。日本に帰れなくなるからね」このインド人のガイドさんは、まじめなのか冗談なのか分からないジョークを言う。

川岸でチャイの屋台を発見。チャイはインド式の甘く煮出したミルクティーである。インド名物とはいうものの、まさか目の前の川の水で作っているのではないかと半信半疑。素焼きのぐい飲みのような入れ物に、川の水と一緒の色のミルクティーが渡される。「煮出しているから多分大丈夫でしょう」と日本のガイドNさん。お腹壊したらどうしようと不安がよぎるが、清水の舞台から飛び降りる気持ちでグイッと飲む。むむむ、おおぉー。美味しい!なんとすごく美味しいのである。やっとホッと一息ついた感じ。少しずつインドに慣れてきたようだ。

ぶらぶら歩いてバスに戻る途中。女性の人が道端で寝ている。その女性の子どもだろうか、まだ1、2歳の子どもが二人、その女性のそばにいて泣き叫んでいる。今日一日見てきた路上で寝ている人たちとは、ちょっと違った雰囲気。

「ねぇガイドさん、あの女性ってさ・・・」
「ああ、死んでるね」

ちょっと、ちょっと、そんなに簡単に言わないでよ。「どうなるのあの人」勢い込んで聞くと「うん、大丈夫、ああいう人を片付ける人がいるのよ。インドにはいろんなカーストがあるからね」さも平然と言う。

「じゃ、あの子どもは」「ウーンわかんない。でも、なんとかなるんじゃない」生まれて初めて、ハンマーで頭を殴られると言うことを実感した。「インドを頭で理解しちゃいけないよ」友人の声が遠くでこだまのように反響して聞こえる。

to be continued
大乗山 経王寺「ハスノカホリ no.42」より

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