[エストニアの小説] 第4話 #9 一人語り(全15回・火金更新)
それは夜のことだった。ニペルナーティはしばらくじっと立って、額の汗をぬぐい、考えはじめた。そして渡し舟で川を渡った。居酒屋のまわりを長いこと歩きまわり、裏のドアをあけて足を踏み入れた。
「アン・マリ」 ニペルナーティは小さな声でささやいた。盗っ人じゃないよ、わたしだ。そこで静かに眠っていて。わたしはきみを傷つけようなんて思ってない。ちょっと来ただけだ。足の裏が燃えるようで、どこにいても心を沈められないんだ。きみが片方の耳で聞いてくれるだけでいい、あとは眠ってていいから。き