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読書 星の王子さま

はじめて星の王子さまを読んだのが小学校6年生の時だから、実に20年以上ぶりに星の王子さまを読んだことになる。

はじめて読んだ当時はたしか文庫じゃなくてハードカバーで読んでいたはずだけど、書き出しに「この本を読むときは寝っ転がって読んだりしないでほしい」という一文があって、子どもながらにドキッとしたものだ。
背筋を伸ばして座って読んだような覚えがあるし、そのおかげか、子どもの頃の私はほとんど一晩でこの本を読み終えたような気がする。というか、確実に今よりも、当時の方が本を読むことについての意欲があった。

読んだ当時からすでに名作だったし、そういった作品に対する子どもながらの敬意があったような気もしなくはない。とりあえず、一通り読んで、突然悲しくなって泣いたのを覚えている。具体的なエピソードや話の流れで泣いたというよりも、どうしようもない悲しさに襲われて泣いたという方が正しいかもしれない。

なので、この本を思い返すときに「悲しいお話だった」という印象しか残っていなかったし(そのあたりはしっかり子どもだ)、この本について日ごろ深く考えてみることなんて全然なかった。世の中には「星の王子さまミュージアム」なるものや「星の王子さまグッズ」があるわけだが、でもそれは絵柄の印象のようなものなのかもしれなくて、要するにリサとガスパールみたいな感じだ。(リサとガスパールはかわいい。)


そんな中、肝心の本編がどんな話だったのか、いわゆる名台詞とされる「大切なものは目に見えない」というキツネの台詞が、本作ではどの場面で、どういう響きをもって放たれるのかということを忘れたまま生きてきたのだけれど、名台詞を表面的に消費しながら生きていくのもなんだか気持ち悪いなと思い、久しぶりに通しで読んでみることにしたのだった。本は10個下の妹がたまたま持っていたので、借りた。



結論から言うと、個人的に最大の名台詞はこの「大切なものは目に見えない」の次に続いたキツネの台詞だった。そういう意味で、やはりこの物語におけるMVPがキツネというのは間違いないだろう。

「さようなら」 キツネが言った。 「じゃあ秘密を教えるよ。とてもかんたんなことだ。ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」
「いちばんたいせつなことは、目に見えない」 忘れないでいるために、王子さまはくり返した。

「きみのバラをかけがえのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ」
「ぼくが、バラのために費やした時間・・・・・」 忘れないでいるために、王子さまはくり返した。

「人間たちは、こういう真理を忘れてしまった」 キツネは言った。 「でも、
きみは忘れちゃいけない。きみは、なつかせたもの、絆を結んだものには、
永遠に責任を持つんだ。きみは、きみのバラに、責任がある・・・・・・」
「ぼくは、ぼくのバラに、責任がある・・・・」 忘れないでいるために、王子さ
まはくり返した。

サン=テグジュペリ『星の王子さま』より

王子さまは自分の星にいたバラが地球のとある豪邸(?)には五千も生えているのを知って衝撃を受ける。だってあのバラはそんなこと言っていなかったから……しかし、その後に王子さまはキツネと話すことで、自分の星のバラと五千のバラが、自分にとって全く別の価値の存在であることを知る。

ちなみに、引用の台詞に至る過程に、キツネが王子さまにむかって
「おねがい……なつかせて!」
と懇願する場面があるのだけれど、そのシーンが間違いなくこの物語の中のベストオブかわいいである。


物語全体を通しての感想は、もうちょっとやりようあったんじゃないかというか、王子さまも、砂漠に不時着したパイロットも、諦めるの早すぎないか……笑 という印象だ。まあ、出会って間もない相手が突然死(?)するような物語だから、仕方がないとは思うけれど……

おそらく現代を生きていたら、なんだかんだでお互いのことをわりとすぐに忘れ、それなりに楽しく生きていくタイプだろうな。

<終わり>


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