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内藤廣流”デザイン”の定義とは?

 この本は内藤さんが東京大学での最後の講義をまとめたものです。そのため、かなり内容が濃縮していて読み応えがありました。中でも、面白いのが内藤さん独自のダイアグラムが面白いです。今の建築を外側から観て周囲との関係を抽象化した図は秀逸で素晴らしいと思いました。

1.デザインを定義する図

 中でも、面白いダイアグラムは下の図です。

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 モノをどのように構築していくか、これがArchitectureで、これを人間が使いやすいようにしていく。この人間が使いやすくしていく行為をデザインという風に表した図です。建築というのは人の生活と共にあり、一方でモノを作っている。その人とモノの結節点を作っている。だから、このように、デザインを通してモノと人を繋ぐ必要がある。なので、内藤さんはこの本ではデザインのコトを“翻訳”と定義している。
そして、それをもう少し進化させたのが、下の図です

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縦が構造、設備、意匠の3つのエリアに別れている。構造っていうのは鉄とかコンクリートとかのこと、設備はエアコンとか照明とか、意匠っていうのは、形態とか、間取りとかの計画。構造っていうのはある種もっともモノに近い。逆に、意匠っていうのは人に最も近い。その間にあるのが設備、機械と人の中間にいる。この縦は建築を細分化した。
そして、このデザインであ3つのコトをしないといけない。それが“技術の翻訳”、“場所の翻訳”、“時間の翻訳”らしい。

2-1.技術の翻訳

 技術の翻訳というのは、要するに、技術のよさを専門家以外の人にも分かってもらえるようにすること、だと思う。新しい技術が入ってきたときそれは、多くの人に共感をもってもらえないといけない。産業革命によって、鉄とガラスというものが発明されたがそれの何が、いいのかが分かるように一般の人に翻訳する必要がある。こんなに細い構造で支えられるよ、などを。これが技術の翻訳だ。

2-2.場所の翻訳

 また、場所の翻訳は、建物が建つ場所の文化や気候を建物に反映させていること、だと思う。しかし、現在この翻訳はあまりなされていない。なぜなら、「モダニズム」というのは、どこにでもアル場所をめざしている。その最たるものは商品化住宅なのかもしれない。どの場所でも成り立つ、住宅をいうのを大量生産している。だから、商品化住宅は技術の翻訳しかなされていない。しかし、コロナなどによってオンラインが発達した今だからこそ、場所というものに対してもう一度考える必要があると思った。

2-3.時間の翻訳

 最後にくるのが、“時間の翻訳”だ。これは少し難しかった。ここで内藤さんが伝えたかったことは「長い時間軸でものごとを考えることが重要だ」だと思った。情報化社会などによって、時間の幅がとにかく短くなってきた。しかし、建築というのは何年も何十年も在り続ける。だからこそ、存在し続ける時間をどのように使われるか。それをどう建築という場に戻すかが必要。それが時間の翻訳でこの時間の翻訳が必要だ

この3つの翻訳をしていくことで建築をモノと人を繋ぐ結節点に始めてなり得る。その後、この本では「島根県文化芸術センター」「日向市駅」の2つの事例でこの3つの翻訳を詳しく解説していた。是非読んでみてください。

参考文献 「形態デザイン講義」著内藤廣 王国社


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