見出し画像

建築の設計力~理念を紡ぐ力2~


 前回は理念を紡ぐ上での前提について説明した。その中で「開放・閉鎖、自律・他律」という概念を用いた。ではここではそれを元にした坂牛さんの建築理念を説明する。この説明の上で建築という概念の基本的構成要素「モノ・間・流れ」の概念を説明していく。
1.2つの要素
 建築の構成要素には2種類あり。1つ目は「物」だ。床、壁、天井など空間を囲う物体をさす。2つめは「間」だ。物によって囲われた空間だ。では、この2つの概念を歴史的にひもといていく。


1.1形態から材料へ
 ウィトルーウィウスの建築論(1979年)では「用・強・美」を用いて説明していた。これは数比で形態について述べている。それから1990年になると材料にも目が向けられていた。バウハウスという建築を学ぶ場所では、造形の文法教育で形体、色彩、材料、テクスチャに分けて教えていた。材料の重要性が高まったのだ。
1.2近代の概念「間」
 この間の概念の始まりはヒルデブランドの造形芸術における形の問題(1993年)によって認知されたことだ。つまり、近代になって生まれた概念なのだ。
 この物と間の2つ関係性はどちらが優位ということもない。建築体験が建築を構成することもあれば、壁面などの物質性に美しさに感動することもあるからだ。
2.3つ目の概念「流れ」
 この2つの概念に加えて流れという要素を加えたい。この流れとは物と物の間、あるいはものに穿たれた穴にとおり抜ける光・風・音・匂い・人・動物で・家具などのことだ。こうした建築の一部ではない動く要素も建築を構成していると思う。
 この考えは生物学でいうと「動的平衡」と似ているかもしれない。動的平衡とは生物の生命はそれを包む殻によって保たれているのでなく細胞膜の中の流動体が細胞間で平衡関係を保つことで維持されている。という考えだ。
 これを建築に落とし込むと、「建築(殻)において流れ(流動体)などが出入りし、間(細胞間)に彩ることで建築を構成している」ということだろう。
3.流れ
 この流れをもう少し細かくみてみよう。この流れは物を制御板あるいは開口として設置することで流れのルートが作られる。人の通る流れならそれは廊下やコンコースなど建築ではある程度の想定が行われる。そこに流れが生まれる。これは、窓なら光や風などの流れをつくる。
 さらに、この流れという概念は自動的に対立概念である「淀み」を作り出す
4.淀み
 この淀み、川の流れを比喩で言えば、その部分は急に浅瀬になったり深くなったりする。あるいは岩場が多い白い波が立つ、こけをむしていて水と緑が艶やかに光るなど、その部位とは異なる様相が現れているのだろう。これを建築に落とし込むと自律的となるのだろう。
 この概念が坂牛さんの建築理論となる。「建築の構成要素の認識としての「物」「間」に加えて「流れ」を重視し、この「流れ」が他律性を目指す建築の要であることを確認した。しかしこの「流れ」の対立概念である「淀み」を生来し、再度他律のなかに自律の要素を挿入することにつながる」これが、坂牛さんの建築理論だ。

<1311字>

https://ganref.jp/m/isdesign/portfolios/photo_detail/373581

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?