建築の設計力3~課題を見つける力~

 「理念を紡ぐ力」では理念を紡ぐ方法を紹介していた。ここでは理念を紡いだ建築家が具体的なプロジェクトが始まってから行うコトをしめす。それは、一言でいえば、タイトルにもあるが「課題を見つける力」だ。
では、課題の見つけ方を説明していく。課題を見つけるにはまず、諸条件(環境)を整理し、そこから課題(プログラム)を見つけていく。そして、作られた課題を社会一般の問題意識に繋げるか(一般解への昇格)。
このステップで建築を作っていくことで、自身の理念を建築に落とし込むことができるうえ、社会と繋がるコトができる。
1. 環境
 環境というのは一言でいうと、建築を作る上で必要な条件のことだ。敷地の特徴、法規制、上下水道、電気などがこれに当たる。さらに、その土地の気候、文化性、政治性なども整理する必要がある。
2. プログラム
 一般的にプログラムとは建物の用途ということになるが、ここではそれを拡大解釈し、予算や構成なども含める。また、新しいアクティビティなどをさす。これは既成のビルディングタイプに落とし込むだけでなく、新たなビルディングタイプなども作ることだ。ここでは設計、施工、運営まで多くの問いを内包している。
3. 一般解への昇格
この見つけた課題をこの建物で終わらせず、社会と繋げることもできる。そのためには、この課題を建物の固有ものから社会一般の問題意識“一般解”へ昇格させる必要がある。そのため社会との繋がり方独自の視線を探してほしい。
 次からは坂牛さんの独自の視線を紹介する。それは現代哲学の問題群として小川仁志が提示する感情・物・技術・共同性の4つだ。
3.1感情
 今日、多くの情報にあふれ、数字やデータなどの理性への信頼が希薄化している。そこで、感情というものが重要になってくる。
 この考え建築にも落とし込める。建築の重要要素の中には「能力を最高にする」こともあると思う。オフィスは集中しやすい、住宅ならリラックスしやすい、などだ。これを実現するうえで、感情を抜きにして満足させることができない。
3.2物
 物としての性質には3種類に分解できる。質量性、被膜性、オブジェクト性だ。
 質量性は客観的事実を説明として表すことが困難だ。そのため実際に体験してほしい。ガラスというのは光を単に通す訳ではなく、光を反射させ輝きを放つことなどを。
 被膜性は建築の最も根源的な用途だとおもう。しかし、豊かになった人間はこの被膜に豊かさを求め始めた。
 オブジェクト性は彫刻性とも言い換えられる。このオブジェクト性の高い建築というのは広告性の高い建築ともいえる。そのため、他律的な現代においてオブジェクト性は批判の対象になる傾向がある。
3.3技術
 産業革命により新材料の導入、設備機械の発明、ガラス被膜の性能向上などが起きた。これまでの建築を一新させた。しかし、C21においてAIはこうした建築とは別次元での変化をもたらす。
3.4共同性
 この共同性は今日、重要性を高めている。なぜなら、この共同性は地域性を担う概念として、グローバリズムへのアンチテーゼとなっているからだ。
※共同性:ある地域のなかに原則均質に広がり、ものや心を共有しようとする性質だ。
※公共性:共同性に対してそれより広い範囲で異質性を受け入れながらも皆で物や心を共有しようとする性質
建築界ではローカリズムを後押ししたい立場として共同性の重要性は高まっている。また、この傾向はコロナによってより加速したと私は思う。
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