詩36 こゑを叩く/ちひさなこゑの反響より
こゑを叩く
雨のかうして降つてゐる
かうしてしづかに
水の
波形の
形のなさを耳より両の目へ
目の想像する暗ひ外の空間へ
夜と言ふ
濡れた空気の充ちる時へ
さざなませ
しぶき また湿らし 瀬々らぐやう
笑ひ あるひはその
形のなさでもつてほほえみ
この
窓辺にゐて耳を澄ます身へも
それが雨であるとわかるやう
降つてゐる
あまり豊かなこゑであるために
所在さへ失くしたやうに降る様子が哀しひ
#礫
ちひさなこゑの反響より
けふはどのやうにか
強ひと思ふ
……、ことの在る
風や その風の力の量に
そよぎ
笑ふやうな(あたたかひ……、
花のほとりの通りにゐてしまつた
風の遠のく
道のだひぶ続く向かうに
昨日は
ここへ今在るやうな
かういふけふでなかつたと
寂しむ思ひの
ある気がしてゐる
なべてその
蒼ひ葉と 優しひ草に囲まれて
風に体を震へさせ
あるひは風を惜しんでゐる 花のためらしひ
#礫
2022年4月22日に、詩人の和合亮一さんが Twitter で行った企画、詩の礫「Ladder」に参加しました。そこに投稿した詩です。
※ Ladder =梯子
※新型コロナウイルス感染症に惹起された現況を「有事」と考えて創作物をツイートする企画です。
※題を付しました。
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