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詩40 想ふことより/日の習ひ

想ふことより

思へば こゑ……、らしひこゑ……、たちの
ずつと風のやうに充ち
烈火のやうに身のほとりを行き
時に
花のやうに香ぐはしひ
香ぐはしく……、穏やかである
さういふ
こゑの末まで高く 野と広ごり 川と同じく
閑かである ひと頃へ
耳を傾けたり 私もこゑを発したり
その言葉の往来するとほりを
歩ひてゐたと思ふ
この……、思ふと言ふ
ひとりばかりの生の造りのうへに
こゑのなく 又 あつても静かに消へる
生の片はらの生……、と身の心そのものとを
結ぶ隧道のあつたと言はうか
字を綴り こゑを読み 今も詩を書ひてゐる

#礫


日の習ひ

風の吹く……、吹き さはぎ 渡らうと
また どこと言ふこともなく
目にだうしても見へなひ音と
時の経ち方 遥かなそのざはめき方より
夜ごと 窓を開ひてゐると
風の……、戦ぐ様子の
聴こへてくる
聴こへるつど
何ともなく 風のそこへ吹くことに
さういふ
目に映らなひ風景の
とほひ……、恐らくとほひ
幻の片はらのやうな空の近くに吹くことへ
その風を
妻恋ふ思ひで鳴き交はす
虫らの窓辺へ
ゐる気がしてくる
虫らはけふも梅雨の草陰に濡れ 静かでゐる

#礫




2022年6月17日に、詩人の和合亮一さんが Twitter で行った企画、詩の礫「Ladder」に参加しました。そこに投稿した詩です。

 ※ Ladder =梯子
 ※新型コロナウイルス感染症に惹起された現況を「有事」と考えて創作物をツイートする企画です。
 ※題を付しました。

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