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Vol.1〜脱退自由!無理しないPTAを立ち上げた


2015年に新しく開校した東京都江東区立豊洲西小学校で初代PTA会長を勤めた米原裕さんに、新設学校で新しくPTAを立ち上げた経緯やそのときの苦労話などを聞いた。

米原写真

米原泰裕さん 国家公務員豊洲西小学校PTA会長(2016~2019)

PTA発足前に

2016年度が始まる前、PTAを発足したいことと、その立ち上げメンバーを募集しているというお手紙が学校から配られました。
仕事柄、学校の現場をずっと見てきたので、「自分の子が通う学校をどう良くするか」という気持ちと、「ちゃんとしたPTAを作らないと」という思いで応募しました。

2016年3月、応募したメンバーが集められました。
総勢8人。男性は私だけでした。
このメンバーで「PTA発足準備委員会」を立ち上げ、2016年度中のPTA設立を目指していくことになりました。

最初にやったこと

4月からいよいよ発足準備委員会がスタートしましたが、当初は近隣校の会長経験者からお話を聞いたり、とりあえず意見交換をしてみたり、と学校主導でPTAのお勉強をしている感じでした。
自律的に稼働し始めたのは7月ごろからで、その段階で設立における役職を決めたのですが、男性が私1人だったということと、文部科学省に勤めているということをポロっと言ってしまったため、「じゃあもう会長候補でよろしく」という空気になってしまいました(笑)。
そこから本格的に準備を始めたのですが、目標に掲げたのは「12月にPTAを立ち上げること」。

それを実現するために、タスクリストを作り、12月までのマイルストーンを引きました。
同時に、私たちが掲げるPTAのコンセプトを作りました。

■ PTA発足準備委員会が最初にやったこと
1.  タスクリストの作成(やらなければいけないことのリストアップ)
2. 12月までのマイルストーン(PTA発足までのスケジュールを引く)
3. 新設するPTAのコンセプト(概念と考え方を提示)や活動内容

一番難しかったのは、タスクリストを作ることでしたね。
新しくPTAをゼロから作るわけですから、すべてが手探りでした。
近隣校の会長さんたちからもいろいろと教えてもらいましたが、他校の模倣ではなく、より良い理想のPTAを追求したい、ということで何度も話し合いをしました。(もちろん、巷でいろいろなPTA批判がなされていることを踏まえつつ、です。)

役員間でコンセプトを共有しつつも、具体的な会の運営をどう回していくのか、具体的なところをつめていきました。

・そもそもどういう手続きでPTAは設立できるのか。
・任意加入を前提として、会員をどうやって集めてどう管理するのか
・会則をどうするか
・役員をどうやって決めるのか
・PTAとしてどんな活動を行うのか
・会計をどうするか(会費の集金方法、管理方法、使い道など多岐にわたる)
・区や地域のPTA団体との関係をどうするのか

この辺りをリストアップして、あとはそれぞれの役割分担を決めました。
進捗は月1回の準備委員会で、適宜共有してもらうことにしました。

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PTA発足に向けた当面の作業及び役割分担表

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今後のスケジュールと対応について

コンセプト

会則とコンセプトのタタキは私が作りました。
大事にしたのは、PTAは社会教育団体であって、あくまで「学校をよくするためにある団体」であるべきという持論です。

江東区のPTAは歴史が長い学校も多く、全体的に地元とのつながりが深くて、「昔ながらの古き良きPTA」が多い印象でした。
全員が強制加入で卒業までに必ず皆に役割を与えるスタイルです。

でも、せっかく新しいPTAを立ち上げるからには、「新しいPTAの形」を示したかった。
そこで、「加入は任意」ということを強調し、ボランティアなので無駄な活動はしない、余計なリソースは割かない、という方針を示しました。
やる人がいない活動はやらなくてもいい、やりたい人がいなければPTA自体をやめたらいい、という覚悟です。

つまり、「ボランティア」で「学校をよくするためのPTA」であり、
会員の意欲を引き出し、直接子供たちにメリットがある活動を追求する必要があるという姿勢を通すとともに、
やる人とやらない人がいるのは不公平、というよくある議論に陥らないように注意しました。

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豊洲西小学校PTAコンセプト

また、ICTをうまく使いながら事務作業を効率化するという方針も示しました。紙ベースでの資料共有は極力減らし、Googleドライブを使って資料を共有しました。
こういった方針に校長も共感してくれました。
校長とはよく話をし、いろいろな機会にコミュニケーションをとっていました。

説明会から設立総会へ

そして9月の保護者会に合わせて説明会を開き、PTAを12月に設立することと、どういった会にするのかということを説明し、会員になりたくない家庭は、辞退届を出していただくようお願いしました。
説明会には、大勢の保護者が集まってくれました。嬉しかったですね。
こんなに関心を持ってくれるんだって。
実際には、どんな義務を負わされるのか、戦々恐々としていた保護者も多かったのかもしれませんが(笑)

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PTA説明会の様子

約200人の前でPTA設立のお知らせや会の運営について20分程度話しました。資料は配布しつつも、webからダウンロードできるようにしました。

そしてPTAの辞退者を募ったところ、加入しないと表明したのは、約400世帯中7世帯だけでした。
12月に設立総会を開催し、会を設立するとともに、会則や役員の決定、方針・計画の承認を得ました。
役員には、準備委員会の8人がそのまま就任しました。

初代会長として

その後、私は初代会長として、2016年12月から2019年3月まで務めました。
運動会支援など普通のPTAがやっていることに加えて、学級活動という新しい取り組みを採り入れました。
これは、「社会に開かれた教育課程を」ということを意識して、授業などの教育活動で保護者を活用する、ということで、先生主導で1コマ、学級代表を中心とする保護者が主導で1コマの授業を企画するという試みです。
これは今でも続いています。
また、WIFIの導入やタブレットPCの購入などにより役員会のペーパーレスを実現し、効率的な会の運営ができるよう、工夫してきました。

新しくPTAを発足するにあたって苦労したことは、そんなになかったですね。
役員さんは皆さん協力的だったし、私はルール作りをしただけで、実働のところはほかの役員さんたちがかなり頑張ってくれました。

筆者後期
米原さんは「正義の味方感」が強い。
全体的に柔らかな雰囲気で語りつつも、要所要所で鋭い口調になる。
大事にしたコンセプトを聞いたときに出てきた言葉たちには、誰にも邪魔されない力強さがあった。
悪く言えば頑固、良く言えば芯が強い、そんな瞬間だった。
一方で、人の話や意見を柔軟に採り入れる器の大きさも持ち合わせている。
この強さと柔らかさが「PTA発足」という難題を、仲間の支えを得ながら成し遂げた原動力だったんだと感じた。

取材/文 加藤 拓也

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