浮世絵との出会い

我が家には、浮世絵に関する図録、本がそこそこにある。

浮世絵の魅力に気づいたのは、約10年前の今頃だったと思う。

当時大学生になったばかりの私は、美術館によく行っていた。

なんで浮世絵の美術館に行こうと思ったかは忘れたが、たまたま家族で東京に行く用事があった時だったと思う。家族で行く場所に興味が持てなかったんだろうな、別行動で美術館でも行くか、となり、たまたま選んだのが歌川国芳の没後150年記念の展示だった。

そこで、国芳に惚れてしまったのである。

彼は、武者絵と呼ばれる、「THE漢」な絵がヒットして売れ、有名になった浮世絵師である。(水滸伝が有名)

それに加え、無類の猫好きとして知られ、猫をテーマにした浮世絵も多数あり、人で人の顔を描いた浮世絵などといった、発想豊かな浮世絵も発表している。

彼の絵のタッチも好きなのだが、やはり一番好きなのは、その発想の点だろうか。

彼が生きた時代は娯楽に対しての規制が非常に厳しい時代(水野忠邦による天保の改革期)。美人画や歌舞伎役者の浮世絵などが禁止された中、浮世絵師たちは政府の弾圧に抗議し続けたのだ。

そのやり方が非常に粋だな、というか、一本取られた!みたいな感じで面白いと感じる。

例えば、「猫の百面相」という作品。猫を擬人化させ、それぞれ歌舞伎役者の顔を反映させている。ほかにも、亀や金魚の顔を役者にした作品もある。(あんまり転載好きじゃないので、ぜひ検索してほしい。)

「これは役者絵じゃないか!」

「何言ってんだい、こいつはどっからどう見ても猫の絵じゃあないか」

みたいなね。落語みたいだよね。

一見、妖怪退治に見える「源頼光公館土蜘作妖怪図」という作品があるのでだが、これもよく見ると、妖怪側は当時の政府の役人たちを模しており、風刺画となっている点も面白い。

こんな感じで、浮世絵師として政府に臆することなく、庶民のヒーローであり続けた国芳がかっこいいな、と感じたのだ。

でも、その正体は猫屋敷に住む猫好きのおじさん、みたいな。存在がアメコミのヒーローみたいでいい。

彼の武者絵や風刺画も好きだが、擬人化された、人間味あふれる、それでていてどこか動物らしさも残る金魚や雀、猫の姿を描いた浮世絵が私は好き。

金魚と蛙が手をつないで夏祭りに出かける「きん魚づくし ぼんぼん」とか最高にかわいい。タイトルもかわいい。見ているだけで笑顔になる作品だ。

原宿に、太田記念美術館という、浮世絵専門の美術館があるのだが、またチャンスがあれば行きたいな、と思う日々である。


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