私といえば、のひとつが梅である。
実家の庭には梅の木があり、私の誕生日ごろにかわいい花をつける。えんじのがくに、白い花びらが5枚。鼻を近付けるとふんわりいい香りがする。物干し竿の担ぎ役としても活躍していた働き者の木だった。
初夏には実をつける。父が毛虫を払ったあと、祖母と一緒に色づき始めた梅を収穫した。
半分は母が梅酒へ。半分は祖母が梅干しへ。
明かりをつけない、薄暗い台所でせっせと仕込んでいた記憶がある。龜に詰められたら、しばしのお別れ。次に会うのは梅雨明けだ。

夏の暑い日に、洗濯物に紛れて梅干しが干される日がやってくる。
プールから帰って来たら、ひとつつまむ。遊び回って、汗をかいたらひとつつまむ。まだ干してるから!なんて言われても、止められない。ちょっと食べすぎかな?と思ったら、隣に干された紫蘇を食べた。酸っぱいのを我慢して、「ぜんぜんすっぱくない!」なんて言って、はしゃいでいた。

大人になってから、梅干しを自分で漬けようと思い立ち、樽と重しを買ってきて、梅を漬けた。梅雨があけたら、仕事に行く前に梅を干し、帰宅して取り込む。
ある日、飲みに誘われたが、その日は梅を干していたので「梅が待っているので」と断った。飲み会よりも梅である。
会社では珍しかったのか、そのあと、夏が来ると「梅干しを理由に飲み会来なかった奴」といじられた。

梅干しを漬け、さあ干すぞ、と樽を開けたときのあの香り。漬け始め、上がってくる梅酢のなんとも愛しいこと。梅干しも好きだが、梅酢も万能で好きだ。
今年も、妊娠中に梅干しをつくった。今はまだ実家の冷蔵庫に眠らせている。早く会いたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?