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カレーなしよ(袖ヶ浦 としまや弁当奈良輪店 )グレイトな秘伝のタレのおかずたち。

千葉のローカル弁当チェーンとして名を馳せる、千葉県民ならおおかたみんな知っている、いや、最近では若い世代は徐々に知らなくなってきているかもしれぬ。千葉県民が大切に思っている弁当店、それが

「としまや弁当」

である。

わたしは「千葉の細い街道のような」という例えを他の地域でも使ったりするが、関東において千葉のローカル街道は独特の味わいがある。なかなか表現し難いが、ちょっとこう、なんというか粗野な感じで荒れた細い街道とでもいおうか。

そんな表現よりももう少し小綺麗な街道沿いにぽつりと建つオレンジ色の屋根と大きな弁当の文字の看板。控えめに端の方に描かれた緑色のカバ。これがとしまやだ。
どこの店も同じ感じに古びていて、しかしそれがなんだかとても嬉しくて、温かい気持ちになる。これは一体なんだろう。
どこの店でも白い給食服のおばちゃんが待っていてくれる。

どの店もみな朴訥とした平台の上に無造作に弁当が並び、その端にレジがある。わりと茶色っぽい弁当が多い。前もそう書いた。それはつまり「秘伝のタレ」のことなのだ。とにかく大好きな、

「ミックス弁当」

を買わねば話にならぬ。

このミックス弁当、いわばとしまやを代表する秘伝のタレを使ったおかずオールスターズと呼べる内容の、まずは買うべきもの。
としまや名物がただもう愚直にごはんの上に並ぶだけというシンプルな弁当。
当然温めないでも大丈夫。本来弁当というものは、そういうものだ。

そして弁当を買う時にセットでやってくるイベントとも呼べよう、無料の味噌汁を自分で鍋からカップにすくってフタをして、というあの幸せ無限大の行為。
これを持ち帰ること、ゆめゆめお忘れなきことを。

まずはぐるぐるとかうずまきとか呼ばれるチャーシュー。としまやのチャーシューのファンは千葉県民には多いと聞く。

実はかたくてがびがびした、というのががはじめの印象であった。
が、旨くて仕方がないとしまやダレに引っ張られて噛んでいくと、これがどうにもいいもの、旨いもの、素晴らしいものであったことに気がつかされる。さきほどのファーストインプレッションを撤回、謝罪したくなる。

豚とか肉とかの味を無視してるのか、というくらい濃い味、あまから味のタレ、しかしその間から確実にチャーシューの旨味、香りが顔を出す。味と味との物凄い戦いだ。傍観できない。その面白さに引き込まれ、巻き込まれてしまう。

焼き肉も思わず「同じかっ!」と叫ぶくらい同じ味で同じ濃さタレ。笑ってしまう。そして、同じなのに違う。違うのに同じ。なんだこれは。もうどうでもいいのだ。このとしまやダレがうますぎるから。
そう言いながら、その秘伝のタレの中からそれぞれの肉の味わいの違いがほんのり浮かび上がる。これがとしまやマジックである。

そして実はちょっと小馬鹿にして後回しにしていたイカフライ。揚げ物というポジションでこの大きさというところにいささかうんざりしていたのだが、否、それは違う。旨い。旨いのだ。ちゃんと旨い。いや、ちゃんとしてなく旨い。あのタレだから。秘伝のタレだから。
そしてイカ、意外や柔らかく、口当たり良い。フライの衣も適度な湿り気でふんわり。見てくれはサクサクしてそうなのだがいやいや、これしっとりなのである。弁当箱の中でふたをされているから当たり前。そしてそれが、その状態が完成品なのだ。いいんだよ、このやわい衣が。あのタレに合うんだよ。4カット分も入っていた、さっきまでは馬鹿にしていたイカがあと一切れしかなくて泣きそうな自分がいる。

濃い味でごはん泥棒。あれもあまから、これもあまから。全部あまから、そして濃い味。ああ、たまらない。この弁当は、そういうこと、そういうものなのだ。
野菜が決定的に足りないところがまた潔い。こういうもの、これじゃなくちゃダメという食べ物は、強い。忘れ難い。

以前も書いたがこの味、秘伝のタレで全部が秘伝のタレ味、としまやダレ味になってしまうこの感じ。

このちょいと雑で、しかし雑だと思っていた味が深く記憶に刻まれ後戻りできないこの感じ。この濃い味は、なんというかいい意味での千葉を体現している気がするのだ。海に大きく面している地域の人たちは、おおらかで、でっかい。

あのオレンジの屋根と緑のカバが忘れ難い。

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