好きな人に向ける視線

「好きな人に撮られると、きれいに映る」なんて言葉をまことしやかに聞く。
そういうこともあるのかもしれないけど、私の感覚は真逆のところにある。

恋人に撮ってもらった写真は、どうしても好きになれない。
こんな顔をしていたのかと、恥ずかしくなるからだ。
それは恋する表情が恥ずかしいのではなく、自分の見た目に対するコンプレックスがなにか増長して感じられるのである。こんなに小さい目でごめんなさい、みたいな気持ちになるのだ。

私の恋人だった人のLINEのアイコンは、私が撮った写真であったことがなかった。きっと私と同じで、私が撮った写真では気恥ずかしくなってしまうのだろう、と思い込むことにする。が、きっとそんなわけはない。

どちらにせよ、いまはどちらでもいいことなのだ。
好きな人と別れるということは、その人にまつわる色々な心配事から開放されることを意味する。

息子がグレて「こんな家、出てってやるよババァ」と言ったあと、「何言ってもいいが大学にだけは行っておけ」と送り出し、旅立つその日に「これ持っていけ」と渡します。