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生まれて初めて「血の気が引いた」瞬間

親との別れはいつか必ず来るもの。

そう頭で分かってはいても、

何も意識することなく
当たり前に日々を過ごしていると、
それが現実になるとは
なかなかイメージできないものです。

私自身もそうでした。

想像しようとすることはあっても、

具体的に情景を浮かべ、
そうなった場合の自分の気持ちにまで
想いを馳せることはしていませんでした。

怖いとか、縁起でもないとか、
そういう想いが浮かんで
考えることを止めていたのかもしれません。


そんな何も覚悟をしていない私に
ある日突然やってきたその瞬間。


しかも、
ひとりっ子の私にとって一番身近な母親の、

それも自死。



よく晴れた日の3月某日ー

お昼少し前の時間、
父から電話がありました。


我が家は子どもが2人いますが、
上の子は幼稚園、
下の子は昼寝中の時間帯でした。

私は1人でキッチンに立ち
さぁお昼何食べようかな、
なんて考えていたその時に鳴った電話。

電話の向こうの父の声が
少し焦った様子で、
ピリッとした空気になったのを覚えています。


「あの…
お母さんがー、
自殺を図ったみたいなんだよ」


と。


その瞬間に全てが一変しました。


え?と聞き返しながら、
あぁ嘘でしょ、なんで、、、

と頭の中はパニック状態。

自分の鼓動が全身に響き渡る感覚。
ドクドク、ドクドク、
と、その音が聞こえる気がしました。

喉の奥が詰まる感覚。
呼吸が浅くなる感覚。

声が出しづらくて、
音も聞こえづらくて、
何もかもシャットダウンされたような。

それでも…
心を落ち着かせることに集中して、

どこで?
誰から聞いたの?
お父さんは今どこにいる?
これからどうする?
大丈夫なの?

などと父に聞いたと思います。

そしてこの時はなぜか
頭のどこかで
「これは未遂に終わる、絶対助かる」
と思っていました。

母は病院に運ばれ治療を受けて
無事に助かり目を覚ます。
そして私が
「何やってんの?!どうしたの?」
と聞いている場面を想像していました。

だから知らせを受けた直後に
母にLINEを送りました。

まだまだ一緒にやりたいことがある、
やりたいこともうないの?全部叶えるよ、
大事な命をなぜ今終わりにするの?
生命力を信じてる、
お願いします、

…というような内容を。

当然出ることのない電話もかけました。

母はこの日、
前日から泊まりで出掛けていて、
その行き先も目的も、
私が事前に聞いていたものとは
実際は違ったんです。


当日は、
宿泊していたホテルの人から父へ連絡があり
チェックアウトの時間になっても
フロントに来ないので部屋を確認したところ…


という話でした。


私が詳しく知ったのはこの後ですが、
縊死でした。


私は父から知らせを受け、
次の連絡を待つ間、

スーっと全身の血が足の方へ
集まっていくのが分かりました。

頭が寒い、そんな感覚。

これが血の気が引くってことか…

とどこか冷静に感じ取った記憶があります。

生まれて初めての
強烈な感覚ばかり。

この時のことは
きっと何度も思い出すだろうし
だからこそ一生忘れられないんだと思います。


その後、
会社にいた夫も急遽帰宅。

その15分後に再度父からの電話にて
母が亡くなったという事実を耳にしました。


「お母さん
亡くなっちゃったよ」


父の震える声。

この言葉を聞いた瞬間が、
後にも先にも
一番悲しかった。

そう思います。

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