選歌 令和6年5月号 1 短歌の会 覇王樹|短歌会 2024年4月21日 21:00 まっかな爪消して行くなり雨の中今日の会議は元職の会(松下睦子)寒き夜にサクラの精は生れしとふ雪降る今宵しづかに待ちぬ(岩本ちずる)程々の疲れセーター身に纏ひ朝のコンビニ午後のコンビニ(臼井良夫)恵方から点火されたる左義長の弾ける音は山登りゆく(浦山増二)淋しさを重ね重ねて三月の空は未だに白雪散らす(児玉南海子)驚きているのは鹿も同じらしふいの出会いに固まっている(高田好)白子産一番海苔のあざあざし目に食べて今朝は二度に味はふ(橋本俊明)三歳はどんどん人に成りゆくか早くも園に好きな異性この出来(三上眞知子)深海のさかなのように灯りつけ午前六時の師走のさんぽ(宮本照男)少しずつ何かが歪んでいくようなコロナの後の神の敷く道(森崎理加)懐かしき名のみ残る茶碗蒸し「プラ」の容器の宅配の品(伊関正太郎)何にでも柚子の香添える人だった脈絡もなくふと思い出す(小笠原朝子)風に舞う枯葉のように頼りなくわたしの意識は散らばるばかり(鎌田国寿)鳥たちにアピールしているかのように万両の実のぎりぎりの彩(青山良子)懐石膳進むにつれて有明の海の碧さの刻々変はる(井手彩朕子)冷で呑む獨酒の味ふるさとの若かりし日のおふくろの味(高貝次郎)春の草次々芽吹く路を行く萎ゆる吾が足今日は軽やか(谷脇恵子)雪晴れの向かつ山腹上りつめあっぱれ羚羊空を見上げる(永田賢之助)国会に緊迫つづく空気無く議員バッジ居並ぶようだ(渡辺ちとせ)下り坂膝の動きの危ふさよたかがこれしきされどこれ程(成田ヱツ子)映画館君の隣で見る時はいつでもペプシコーラでいたい(渡邊富紀子)靴紐も結べぬ父と向き合う日熱き紅茶をゆっくり淹れる(建部智美)百均の修正テープに消せるよな悔いのいくつかありてこの冬(髙橋律子)巡りくる想いの納めきれぬ日は夜更けて録画の寅さんに会う(仲野京子)ひそやかに心の階段降りゆくと地下室ありて轍がありぬ(福留夕音)雪の日はこの春種まく野菜花、去年と同じと夫は譲らぬ(今野恵美子)音楽はたのしむものと隔てなくわれらの身近に与えし人逝く(才藤榮子)骨格の模型置かれた整骨院立派な骨は体育選手だ(清水素子)赤信号みんで渡り裏金をせっせとつくる政治屋さんは(髙間照子)秋来ればサフラン摘みゐし祖母思ふ指に花粉のあまたを染めて(友成節子)朗読を聴いてみる 覇王樹公式サイトへ ダウンロード copy #短歌 #短歌会 #覇王樹 1