選歌 令和6年1月号 短歌の会 覇王樹|短歌会 2023年12月20日 17:38 寂しさも悲しさもみな投げ捨てて初秋の空に両手を上ぐる佐藤 愛子 心にも手足が生えているのならどちらかなくして揺らぎいる我高田 好 みぎひだりに芒の穂波かき分けて越えがたきものひとつ越えゆく橋本 俊明 流されぬ悔いの一つが雨の夜のネオンに滲む赤く膨らみ山口 美加代 日曜を駐車されゐる車たち競ふさまなくひたすら眠る広瀬 美智子 叡山の沈む夕陽の赫々と切なかりしよ生きゐることは渡辺 茂子 一升の餅を背負いて甥の泣く。笑う。泣く泣く。願うとこしえ渡邊 富紀子 木犀の香に気づかず声高に議論していたあの坂道で小笠原 朝子 スカイツリー今日は遠いねうっすらと娘の姿を遠くにじませ清水 素子 学生のひとり暮らしの三畳間全部自分の時間であった高橋 美香子 抱えきれずこぼしたことば掬い上げ三十一文字の調べに載せる髙間 照 子 やっと会えた吉野の染井桜そめい・山桜見つめる君の眼差し忘れじ田中 昭 子 三人が寄れば三人それぞれのかなしみありて秋の日は暮る藤峰 タケ子 押し並べて勤務する人深切で言葉かけくる掃除の人も高貝 次郎 チンパンジー檻から逃げしも事件とし報道になる日本の平和田中 春代 診断は異常なしでも帰られぬ土砂降りの雨ビル街浸たす永田 賢之助 彷徨いて家に戻れぬススキが原独りの旅の夢の中なり松下 睦子 古くさい禁句いくつか書き並べ読み返す無き手張の残る渡辺 ちとせ 大き国小さな国なる両首脳ボタン押せます握手の指は上村 理恵子 旅に出る事などもはや叶わぬ身流れる雲に今日は手を振る今野 恵美子 つと潜りまた浮きあがるかいつぶり湖底の今を語りいるらん吉田 和代 いただきぬ紀伊の蜜柑の白き筋 亡き娘を包む貴女のごとし建部 智美 菩提寺の代替りせる住職のバリトンの経 堂内に満つ田村 ふみ子 みをつくしふたたびきみに逢はばやと思へど水面にゆく道のなき石谷 流花 早朝の下りホームの老婦人ユンケルぐいっと飲み干して立つ三上 眞知子 今夜またちょっと猫背のドラマーがびかりびかりと発光してる森崎 理加 海のなき街に戻れり東京の地下鉄九つ出掛けの検索山北 悦子 街角に十人十色の風ふかせランドセル行く十月の尽浦山 増二 歩みくる君の姿が優しくて胸の深くで若葉がそよぐ鎌田 国寿 ドイツなる妹への長きメールおわりはいつも花のスタンプ国友 邦子朗読を聴いてみる 覇王樹公式サイトへ ダウンロード copy #短歌 #短歌会 #覇王樹