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八首抄 令和5年12月号

宮本 照男 選


ただ独り昼の電車に揺れながら知らないひとの傍へに座る
臼井 良夫

ながながと止まらぬ愚痴の電話切るさよなら私は聖母ではない
高田 香澄

新しいシャツのタグを切り落とし淋しき朝の始まりとする
森崎 理加

秋風が夏の火傷にそっと触れ、なだめるように木の葉をゆらした
鎌田 国寿

ATMの暗証番号忘れたりのっぴきならざる峠越えなん
田口 耕生

我が事を祈った最後はいつの日か母になる前、妻になる前
山内 可奈子

ひらくとき微かな音の聞こえしか亡父ちちの扇子にさく蓮の花
髙橋 律子

さかさまに絵本持っては正確に言葉紡ぎし二歳の不思議
野元堀 順子



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