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八首抄 令和6年6月号

渡辺茂子選


何処へと散りゆくならむ宵の駅ひかりの中より人ながれ出づ

山北悦子


日々と言ふこの薄紙の如きもの吹きちらされて又白くなる

臼井良夫


独り居の早めに雨戸閉める日はつながる何かを拒むに似たり

吉田和代


ヒヤシンス二株庭にむくむくと全てが動く春の兆しに

伊関正太郎


約束の侮りがたし祈るごと君は綺麗に座りたりけり

財前順士


畦道を歩けば吾を待ち伏せるヌスビトハギが手足を伸ばす

上中幾代


風吹きて角引っ込めるカタツムリ引っ込め過ぎてことば失う

福留夕音


ぺらぺらと私の中身が喋っている  そろそろ彼女に私を譲ろう

森崎理加








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