呪術廻戦0観た -俺たちの完全版0巻-
haoriです。あけましておめでとうございます。
今回映画だけじゃなく本誌のネタバレも絡めつつの話になるので気になる人はバックしてください。
本誌勢です
呪術廻戦は「幼魚と逆罰」編あたりからのファンです。初期の初期からのファン……というわけでもないです。実際1~3巻あたりまでを本誌で読んで、ここまでの人気作になると誰が予想できた?という話。
しかしそのあたりからのこの漫画はマジでずっと面白いと思ってまして、本誌読みつつコミックスを全巻買ってた(部屋が狭すぎてコミックス全部売っちゃいました)くらいには好きです。その中には当然ながら0巻もありました。
確か最初に0巻を読んだのはジャンププラスの無料期間の時だったと思います。正直、今でも0巻が呪術廻戦全編で一番の出来なんじゃないか?というくらいこの話が好きです。呪術廻戦全体に漂っている独特のリズムみたいなのが持ち込まれたまま、かなり話が端的にまとまってて、しかもバトルシーンがかっこいいと……ジャンプギガ連載時もかなり評判だったらしいですけど、そりゃ連載決まるわってくらいいい話です。
アニメ決定前から人気作品となりつつあった本作がアニメで(主に五条悟の)人気が爆発し、ついに映画化の運びとなりました。ここだけ見れば鬼滅の刃と同じルートなんですけど、ひとつ違うのは、映画化したのが本編ではなく過去編に当たる「0巻」が映画化したということ。鬼滅の刃はアニメ⇒映画⇒アニメの順に話がつながっているので映画見に行かないとな……みたいなよくわからん義務感が発生していましたが、こっちは本編にほぼ関わりがないので自分が見たいタイミングで見に行ける!
独特の思い入れがあるので25日公開当日に見に行きたい気持ちもありましたが、この度タイミングができたので本日見に行ってきました。
純愛だよ
僕はわりとこの漫画は「愛」がテーマっぽいなと感じていたんですけど、実は全然そうじゃないっぽい。少年漫画なのでそうそうテーマとかあるもんじゃないですね。というのはまあそうなんですけど、0.5巻とか読んでると、やっぱり0巻は「乙骨のスタートの物語」というのが通念のようです。
とはいえ、0巻の乙骨と里香ちゃんの掛け合いは正直泣けるところもあるくらい尊いもので、それが映画化するというところが今回の見所のひとつでした。原作はもうかなり話が進んでいるので、そこらへんを含めて、あくまで連載前の読み切りでしかなかった「呪術高専」のリワインドとしての「劇場版0巻」に期待を持っていたところはあります。今読むと結構0巻、原作で追加されてった設定とか置いてけぼりなので、初期のワンピースを読んでる時と同じ気持ちになります。あと少年漫画で読み切りなので結構心理描写とかについては省かれてるかもと思うところは多い。
何しろ、0巻における乙骨と里香ちゃんの関係って、里香ちゃんのヤンデレ的な愛情に対して、里香ちゃんにかけた/かけられた呪いを解放したいと、「自分が生きるため」に呪いと付き合っていた乙骨が、最後に里香ちゃんの想いと向き合う、というところに「純愛」的な要素があるわけですよね。だからこそ乙骨の「純愛だよ」という言葉には涙を誘うものがある、と考えていました。
この「失礼だな、純愛だよ」の台詞はたぶん0巻で一番人気があって、0巻の人気を確立している重要な台詞だと思っていて、これが映像と音声がついたアニメ、映画という形で解釈が確定してしまうこと、声優さんや監督さんの解釈がここで与えられるということがすごいことだなと思っていました。
実際ここの演技めちゃくちゃ難しいですよね。難しいんじゃないかと思いながら上演前の広告を見て考えてました。このシーンはあくまで夏油の「女誑しめ!!」という台詞から繋がってきているものなので、それに対して乙骨の「失礼だな、純愛だよ」という台詞が果たして、真面目にプロポーズ的な重みも持って発せられるのか、それとも夏油に対して茶化した風に表現されるのか、はたまたそれ以外の表現がされるのか?ということを考えると気が気でなかった。表現者ってこういうのすごい大変なんだろうなと、外様から拝察します。
映画がまた原作を面白くしてくれる
結論から言うと乙骨は女誑しでした。
映画見た後、僕が0巻を読んだ時の印象と違ったので、パンフレットを購入し、一度紙版を売った0巻をkindleで買い戻して読みながら考えていました。
0.5巻やパンフレットにおいて、乙骨担当声優の緒方さんが「一緒に逝こう」までのシーンが本当に悩んだという話をされています。そりゃそうだなというシーンではあるんですが、最終的に出た演技は、夏油の台詞に対して平然と「純愛だよ」と答える乙骨の姿でした(これは実物を見んとわからんし、僕もうまく表現できない)。
パンフやらなんやらを読み込んだうえで0巻を読んでみると、確かに乙骨が里香ちゃんを愛していて、添い遂げようと最初から思っていてあのシーンにたどりついたわけではないということがわかるんですよね。映画によって台詞やシーンに解釈が与えられたからこそ、その解釈で原作を読み解いて、また新しい楽しみ方ができる。原作がもう一度面白くなる。これってものすげえことだなあ、と思いました。
乙骨が呪術高専に来た目的は最初(1話終盤)にもう示されていて、ただ「呪いを解くこと」そして「誰かと関わりたい、誰かに必要とされて、生きてていいって自信が欲しいんだ」。それが呪術高専での出会いを経て、「皆の友達でいるために」、「僕が僕を生きてていいって思えるように」戦うということが示されているわけですね。台詞で。こんなわかりやすく書かれてるのに逆によく気づかなかったなと思った。
乙骨が里香ちゃんに対して恋心のようなものを抱いていたのは間違いないと思うんですけど、それはあくまで子供の口約束の話。小学生ってよく「ユウタくんと結婚するー!」みたいなことすぐ言いますからね。まあ里香ちゃんのソレはマジのガチのやつですけど。
ただ、乙骨が変わり果てた姿になって自分を守る里香ちゃんの存在や、それを縛り付けている自分の呪いに罪悪感を抱いているのは間違いないんですよね。乙骨は子供のころの恋心をわずかに抱えたまま、里香ちゃんに申し訳なさと感謝の気持ちをないまぜにしたような感情を持っている。
乙骨の里香ちゃんへの最後の言葉、
「里香ちゃんをあんな姿にして/たくさんの人を傷つけて」
「僕が夏油に狙われたせいで/みんなが死にかけた」
からもわかるとおり、乙骨が罪悪感を抱えているのは、里香ちゃんを化物にしてこの世に留めていることに対してなんですよね。別に里香ちゃんの乙骨への愛情とかはあんまり気にしてない。だって死んだ人だから。まして、里香ちゃんが死んだ理由はあくまで交通事故であって、乙骨が悪いわけじゃないし。
自分を犠牲にして里香ちゃんの能力を限定解除した乙骨は、実のところ呪言の能力をコピーしたときと同じで、おそらく本能的に何かを犠牲にすれば力が底上げできるということを知っていたんじゃないかなという気がします。というか夏油が似たようなことを直前にしているしね。だからこそ、「純愛だよ」という言葉は女誑しということを自覚して、乙骨が夏油を茶化して言った言葉でもある。
でも、「愛してるよ/里香」と言った乙骨の言葉も本物なんですよ。だからこそ難しい。
「いつも守ってくれてありがとう」
「僕を好きになってくれてありがとう」
里香ちゃんが果たした乙骨への献身に対して、乙骨はそれに応えたいという素直な感情があった。「皆の友達でいるために」、「僕が僕を生きてていいって思えるように」戦っている乙骨が、友達の敵を倒すために、自分の命を投げ打つという矛盾。この言葉がどんな気持ちで放たれたのか素人の僕にはわからん。
正直僕は真希たちに反転術式をかけるシーンの乙骨の「嫌いになんてならないよ」の台詞がめちゃくちゃ好きなんですよ。映画見ました?乙骨は里香ちゃんに感謝こそすれ、恨むなんてことはありえない。言葉ひとつ聞いただけでそれが表現されているんですよ。
夏油という強大な敵を前にして、自分が友達でいていいと、生きていていいと自信と誇りを持つために、「死んでもいい」と思えること。自分への無私の献身を前に、里香ちゃんに「すべてを投げ出してもいい」と思えること。里香ちゃんの力を解放するための打算を含みつつも、嘘のない心からの愛の言葉は相応に重い。
だからこそ里香ちゃんもその言葉に応えたのだろうと思います。
今回、乙骨役の緒方さんは芥見先生からのオファーとのことで、おそらくエヴァの碇シンジのイメージで描かれてるんだろうなという感じはたぶん誰もが受けてるんだろうなと思いました。実のところ、ネガティブ思考で引きこもり的なモヤシ系主人公という点は共通で、たぶん脚本も面白がってシンジくんっぽい台詞を言わせてるし……という。ただ、下馬評では「シンジくんにしか聞こえない」とまで言われていたのに対して、実際に聞いてみたら「乙骨憂太」だと感じられるような独立なキャラクターが出ていて、全然シンジくんじゃないじゃん!となりました。そういう点も含めてすごいですよね、声優。
パンフレットや0.5巻でも絶賛されているんですが、花澤さんの演技もものすごいんですよね。原作でも幕間のおまけで里香ちゃんの魔性の話は何度かされてるんですが、小学生相応におませなようでいて、それでは収まらない大人的な雰囲気の演技とか、呪霊時の演技とか……ていうか「重い女」の演技がめちゃくちゃ上手いんですね。化物語シリーズで見ました。
漫画という媒体は結局文字と絵の塊でしかないので、そこでキャラクターがどういう気持ちで言葉を発したのか、行動したのか、ということは推察して読み取る必要があります。ただ、アニメーションという媒体は、キャラクターの動きや声優さんの声の演技を通して、そこに解釈を与えられる。怖いけどすごい仕事なんだなと思いました。
最高の原作改変
漫画原作の劇場版ってだいたい「原作に出ないキャラクターが出てきて大暴れして消える」とか「原作と違うストーリーになって終わる」とかでめちゃくちゃバッシングをされることがあります。
この作品も原作改変がいくつかあったんですが、今回の原作改変は過去一最高でした。むしろもうこれ完全版でしょ。
そもそも0巻は連載開始前にやっていた読み切りの短期連載版ということもあり、原作の設定とかキャラクターとかは出てきていないものがたくさんあります。そりゃ当然そうで、ワンピースだって話が進むにつれ覇気の設定が出てくるとか、ハンターハンターも念の概念が出てきたりするので、長期連載するならそりゃ黒閃のひとつやふたつくらい出てきます。
劇場版0巻はそこらへんの読み切り版では描かれてなかった内容が、連載中の最新の情報で更新されています。中でも盛り上がりがめちゃくちゃすごかったのは「読み切り版には出てこないけど連載中の原作で出てくるキャラクターの戦闘シーン」です。
百鬼夜行は東京と京都で行われていますが、原作の方では京都の方はほとんど触れられておらず、まあせいぜい交流戦時にちょっと話が出てくるくらいだったんですが、そこの話が多少描かれています。これにより、東京・京都両方で、原作ですら戦闘シーンがほとんど描かれてないメンバーの戦闘シーンが発生しているはずです。本映画ではこれが結構ド派手に描かれてます。
まず、まずね。0.5巻の身長対比表を見て思うわけですよ。「あれ?この表に載ってるキャラクターの5, 6割は死んでるか再起不能かのどっちかだな……」と。彼らはたぶんもう原作で戦闘しないわけですよ。面白い術式を持っていても。
そんな中で、原作で2回くらいしかまだ抜刀できない三輪ちゃんとか、戦闘シーン自体1回しかしてなくてすぐ離脱した猪野さんとか、超大人気キャラなのに早々退場したナナミンが元気に跳ね回ってるわけですよ。日下部とかもう刀振り回してるだけで嬉しいわ。そしてなんと今回は百鬼夜行MVPことミゲルの戦闘シーンがちゃんと書かれます。クソでか呪霊を5秒で屠る五条悟をきっちり10分以上足止めしたミゲルの戦闘シーンがちゃんと書かれています。原作だと一瞬だけ出て次登場時には既に五条の奴隷になってるからマジで不憫だよな。
ただ、原作でも主だった戦闘シーンや術式の開示がないキャラクターについては触れられていません。ラルゥとかの夏油組や学長ですね。あと五条が最期に夏油に送った台詞も明かされません。これは原作で今後明かされるんでしょうね。
黒閃なんかも今回では要所要所で取り上げられていますし、今回はサブタイトル的に五条と夏油の確執が描かれているので、原作の五条・夏油・家入過去編も多少カットインされます。読み切りだと描かれていない内容なので、ここらへんをちゃんと取り入れてもらえるのはファン的には本当にありがとうございますという感じです。もっというとこれは原作改変もクソもなく原作ママの話なんですけど、渋谷事変後を読んでると教室での真希と乙骨の会話がすごく微妙な気持ちになりますね。
ファンは観て間違いない
見る際はCパートあるので気を付けてください。とはいえ、king gnuのエンディングがかなり良いので席を立たずに聞き入ると思うんですけど。
あとでアニメも観ます。
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