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【JSAI2024 参加レポート】 AISCの研究結果の発表や企業ブースの様子をお届けします!

こんにちは!株式会社GA technologies、Advanced Innovation Strategy Center (AISC)所属のです!

先日、2024年度人工知能学会全国大会(JSAI)が浜松で開催されました。そこで弊社はプラチナスポンサーとして本大会に協賛させていただきました。また、AISCからは総勢5名のメンバーが学会に参加してきました。

今回のブログは、人工知能学会の概要、オーガナイズドセッションでの発表、企業ブースの出展、そしてメンバーが聴講したセッションについて紹介します。

AISCに興味を持っている方、また社内の方々にも読んでいただけるように執筆しました。最後までお楽しみください!


人工知能学会の概要

(前略)
人工知能に関する学際的学問研究の促進をはかり,会員相互間および関連学協会との交流の場を提供することを通じて,わが国のこの分野の学問と産業の進歩発展に貢献するとともに,国際的活動を通して世界のこの分野の進歩に貢献することを目的としています.

引用:人工知能学会|入会の案内

上記にあるように、人工知能学会は、人工知能に関する学問研究の促進と国際貢献を目的とし、会員相互間および関連学協会との交流の場を提供しています。
その交流の場の一つとして、2024年5月28日(火)~ 5月31日(金)にアクトシティ浜松で人工知能学会全国大会(JSAI)が開催されました。

今年度の大会では、200を超えるセッション、ポスター展示などをはじめ企業展示ブース、または会員同士のネットワークを築くためのイベントなどが催され、去年を超えた総勢約3790名もの会員が現地、またはオンラインで参加しました。

会場の入り口に設置されたウェルカムボード

オーガナイズドセッションの参加

オーガナイズドセッションでは、AISCの三田さん宋さんが自分たちの研究結果について紹介しました。

まずは三田さんが発表した研究

[2O4-OS-25a-02] 地理空間ネットワークデータと機械学習を用いた説明可能性の高い賃料予測                                                 Bramson Aaron、三田 匡能

マンションの家賃を予測するモデルを作るとき、物件の「緯度」「経度」といった特徴量は予測精度を高めるものの、SHAPやImportanceを出したときに結果を解釈しにくくなります。そこで「店舗の多さ」「最寄り駅の利便性の高さ」などのスコアを作成して特徴量にすることで予測精度を保ったまま解釈性を高めたモデルを作る、という研究です。

三田さんの発表シーン

その後に宋さんも自分の研究を発表しました。
[2O4-OS-25a-03] 機械学習を用いた物件設備スコアの推定:不動産データを使用したケーススタディ  
宋 宛丘、尾𥔎 幸謙山内 翔大、三田 匡能、福中 公輔

本研究は、賃貸管理事業者の設備に関するグレード感を数値化し、機械学習で再現することを目的としています。専門家へのインタビューを基に設備スコアの採点表を作成し、実際の物件を評価して教師データを生成しました。販売図面から得られた特徴量を用いて設備スコアを推定するモデルを構築し、欠損データが精度に与える影響も評価しました。その結果、専門家の知識に基づく正確なスコアリングが可能となり、モデルは高精度を達成しました。

宋さんの発表シーン

企業ブースの出展

企業ブースでは、主に不動産領域におけるAISCのDX推進活動について紹介させていただきました。特にAISCは、2023年12月に研究開発組織の技術を体験できるテクノロジー・ショーケース「TechLab(テックラボ)」を一般に無料公開しました。今回のブースでは、このTechLabをメインにデモを行い、技術の魅力を多くの来場者に伝えることができました。

ここでは、多くの学生やAIに関する研究者・エンジニアと交流する機会も得られました。これこそが、現地参加の楽しさを実感できる瞬間でもあります。

企業ブースの様子

メンバーが聴講したセッション

最後にお届けするのは、AISCメンバーの印象に残ったセッションです。

稲本さん

[2O4-OS-25a-04] Stable Diffusionによる部屋間取りを保持したホームステージング画像生成

生成AIを使ったバーチャルホームステージングに関する発表。虚偽広告になってしまうなど実用上様々な問題があるが、やはり画像が出るのはインパクトが強い。我々も学生等に向けてこういった比較的派手な研究にも取り組んだ方が良いと感じた。

 [2O4-OS-25a-05] 空間領域の動線順配列に基づいた間取り型式分類法と間仕切り状態も加えた間取り表記法の考案、及び、AI活用の可能性

非構造化データである間取りを構造化データとして扱うためのフォーマットを考案したという発表。構造化できてしまえば類似間取りを簡単にリストアップするなど様々な応用が可能となる。以前東大の山崎先生も同じような取り組みをしていた。発表の本題ではなかったが、築古物件をリノベしてSOHO向け物件とすると管理が大変な水回り設備の多くをなくすことができつつ、商業利用なので価値が上がるというのは非常に興味深い話だった。

[2O5-OS-25b-01] 高経年賃貸マンションの建築的潜在価値の分析と、社会的価値付加による不動産再生の検討

福岡の築50年以上の物件をスコアリングして魅力が伝わりやすいようにするプロジェクトについての発表。懇親会で発表者と話したが、非常に面白い取り組みをしている人だった。築古の団地を1億円で買い上げて、団地内のコミュニティが活性化するようなイベントや、リノベーションを行ったり、入居希望者が増えてきたが団地は満室なので、バーチャルな入居者としての権利をNFTで販売したりしている。始めは大赤字だったが今はうまく回っているとのこと。

[3A4-PS-3-01] AIは『鉄腕アトム』の夢をみるか?~生成AIによるコンテンツ制作の可能性と問題

漫画の神様手塚治虫の息子さんである手塚眞さんの発表で、内容はAIがクリエイティビティを持つのかというテーマ。手塚眞さんは、AIを使って手塚治虫の新作を創り出すというプロジェクトに継続的に関わっていらっしゃるが、具体的にどの場面でAIを使っているのかなどが非常に興味深かった。例えば2020年の「ぱいどん」という新作では、メインキャラクタのビジュアルと、ストーリーの元となるプロットをAIで作成したとのこと。創作のプロセスは、1.企画 2.計画 3.実行 4. 検証 5. 発表と分解できるが、現状AIが得意なのは3.実行だけで、他のプロセスはあまり期待できない。特に4.検証へのAI活用が絶望的なので、クリエイティビティを持つことは今のところないというのが結論。ただプロフェッショナルなクリエイターがアシスタントとして使うのは有効とのこと。

[3B5-TS-1-01] 大規模言語モデルの開発

大規模言語モデルSwallowの開発に携わる岡崎先生の発表。大規模言語モデルの開発を1. 事前学習 2. 指示学習 3.アライメントにわけ、それぞれの概略的な歴史とちょっとしたノウハウを教えてくれるという非常に密度の濃いプレゼンテーションだった。ノウハウとして、例えば事前学習時にはエポックは1にして、繰り返し学習しない方が良いとか、事前学習で学んでいないことをファインチューニングで教えると大量のハルシネーションが起きるとか、多分使わないけれど非常に興味深い内容だった。今の大規模言語モデルのパラメータ数をニューロンの数と置き換えると今の大規模言語モデルの規模はネズミと同等ぐらいで、1パラメータ当たり20token程度の学習データが必要だが、それだけの規模のデータがないのでこれ以上大規模化できない等もとても興味深かった。質疑応答で、興味深かったのは人間はこれほど大量の本を読んでいないにもかかわらずLLMに負けない知性を持っているのは、やはり推論できるからではないかという話。データ・モデルの大規模化の先に推論が生まれるという説とそうではないという説があるが、私は門外漢ではあるが後者の方が尤もらしいと思った。

橋本さん

早いもので8年目になりましたが、やはり”不動産とAI”セッションをあげさせてください。今回は4年ぶりのオーガナイズドセッション(OS)で約60名(オンライン含む)の方が参加。各発表に対して活発な質疑もあり、盛況のうちに終えました。(OS企画者として人生初の座長を経験し、人生で3本の指に入る?レベルで緊張しました、、、)
OS内では昨年強く印象に残った冷泉荘(築50年で賃料が上昇!)同様、高経年マンションの話が興味深かったです。

 [2O4-OS-25a-05] 空間領域の動線順配列に基づいた間取り型式分類法と間仕切り状態も加えた間取り表記法の考案、及び、AI活用の可能性

言われてみれば納得なのですが、居住用よりSOなどビジネス用のほうが求める水準が低いため、築40年以上の高経年マンションとの相性の良さを感じました。AI活用の可能性については、稲本さん同様に、2019年のIEEE GCCEで発表されたグラフネットワークで間取り図を表現した下記研究が応用できないかと考えを巡らせたりしました。
A Preliminary Study on Attractiveness Analysis of Real Estate Floor Plans
Taro Narahara (New Jersey Institute of Technology, USA & The University of Tokyo, Japan); Toshihiko Yamasaki (The University of Tokyo, Japan)
不動産とAIセッション、来年も開催予定ですので、ぜひいらしてください!

三田さん

[4D1-GS-2-04] Instance AttributionとFeature Attributionの一貫性制約を満たす集合関数の局所説明法

機械学習の説明性を高める研究においては、予測に対するインスタンスの貢献度(instance attribution: IA)や特徴量の貢献度(feature attribution: FA)といった貢献度の考え方があります。IAとFAと別々に推定すると両者の一貫性がなくなる(例えば「貢献度が低い特徴量が多いインスタンスなのにIAが高い」など)ことがありえるため、一貫性の制約条件を設けてIAとFAを同時に推定する方法を提案した研究です。
私はこれまでIAを使うことがほとんどなかったのでそもそも一貫性を気にすることもなかったのですが、IAとFAを使う人にとっては一貫性を制約できるのは便利そうだなと思いました。一方で、線形回帰に正則化の制約条件を設けた正則化回帰が不偏性を失うのと同様に、一貫性の制約もなにかデメリットがありそうな気もするので使い分けを意識する必要がありそうにも感じました。

[4D1-GS-2-03] 不確実性が高い事象の確率的予測と解釈を可能とするGaussian-SAINTの提案

Attention機構を使用しており予測モデルの解釈が可能なアルゴリズムであるSAINTという手法を、点推定ではなく分布推定ができるように改良したという研究です。分布推定への拡張はNGBoostと同様に正規分布を仮定して平均・分散を点推定して行います。
私はSAINTを知らなかったのでAttentionで説明するという考え方を知ることができたのがまず収穫でした。分布推定への拡張についてはわりとシンプルなアイデアなので、私が発表を聴いていて抱いた疑問は「Attentionによる説明がどのくらいうまくいくものなのか?」などSAINT自体についてのものが多いです。のちほどSAINTについても勉強してみたいと思います。

宋さん

[2O5-OS-25b-01] 高経年賃貸マンションの建築的潜在価値の分析と、社会的価値付加による不動産再生の検討

同様にマンション自体の価値をスコアリングしようとしている研究があります。私のマンショングレード研究では、築年数が古くなるほど、マンションのデザイン、構造、設備は時代遅れになるためグレードが下がりますが、こうした高経年マンションのレトロな魅力をスコアリングすることで建物の魅力を再発見するのは興味深いです。そして「建物人格」という言葉も出てきており、本当に多様な観点から建物を評価しています。
レトロマンションを一般の方々に評価してもらったところ、若者と60年代生まれの方々がレトロマンションに対して特に魅力を感じているという興味深い結果が得られました。そうした物品や文化が存在していた時代を直接経験していなかった若者たちほど、「懐かしい」と感じてレトロマンションに魅了されているのかもしれません(私もたまにはまります)。
ただしマンションに対する現状の評価方法はまだ専門家に依存して評価を行っています。画像認識技術を用いて建物の画像を直接認識し、評価できるのであればより実用的な研究になるでしょう。

まとめ


今回の人工知能学会全国大会では、オーガナイズドセッションや企業ブースなどを通じて、多くの方にGA technologiesやAISCの活動を知ってもらう機会になりました。

また、今年の学会は対面で開催されたため、参加者同士が交流や、情報を交換する機会でもありました。普段のオフィスでの仕事とは異なる刺激を受け、有意義な時間を過ごすことができました。

最後に、今回学会に参加して企業ブースにお越しいただいた方、運営の方、心より感謝申し上げます。

また、読者の皆さん、最後まで読んでいただきありがとうございました!

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