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あね、おとうと

年子の姉弟というのはなかなか厄介なもので、中学に入った頃から弟とは喧嘩もできないほど仲が悪くなっていた。同じ家に住みながらひと言も話さず、目も合わせず、おたがいに興味もなく、そんな関係に特に違和感も覚えていなかった。

片桐はいり

「グアテマラの弟」




ワタシにも弟が二人いる。
一人はとしごで、めちゃくちゃ仲が悪い。
やっちゃんもワタシが大嫌いで、むかしっから目の敵にされつ、しつつの仲だ。聖書でいうならカインとアベル(例えが炎上しそうだけど)。競うだけでなく、お互いを削り、蹴落とし、引き擦り落とす、願わくば落ちてしまえ!と思っている。そして、いまもそう変わらない関係だと思う。

やっちゃんがオーストラリアに行って、泥棒にあって帰国できないと連絡があったとき、姉のワタシは「あ、そ」と言った。迎えに行かないワタシを、母は人殺しのように批判したが、(訂正、ひとでなしだったかも)ワタシにしたら悪いのは泥棒であって、迎えに行かないワタシじゃない、と思った。(だって迎えに行くのって近所の駅じゃないよ?オーストラリアだし)

母「弟が大変なときに助けるのがお姉ちゃんでしょ!なんのための兄弟よ!」
ワタシ「何でよ、オーストラリアに行ったんも知らんかったのにいきなり迎えに行けってなんなん。けいちゃんに頼みいや。なんでワタシなん」
母「けいちゃんは忙しいの、あんたはかわいそうやとおもわへんの?」
ワタシ、内心ではワタシの方が忙しいし。かわいそうやとおもうけど「ワタシもしごとがあんねん。泥棒に入られるくらいぽけっとしてるヤツが悪いねん」(アパートをシェアしようと言われた女の子に持ち逃げされたと後からきいた)
母「ひどい!あんたは自分がそんな目にあったらどうすんの、助けあうんが家族ちゃうの?」
ワタシ、果たしてワタシを助ける家族がいるだらうか?と思いつつ「お父さんやけいちゃんがおるのに、家を出たワタシに言うのはおかしいで?頼むひと、間違えてるわ。かわいそうかもしらんけど、子どもちゃうねんから、自分でなんとかしいや。やっちゃんがお姉ちゃんじゃなきゃいやだ、お願いしますって言うてきたら考えるわ」
母「やっちゃんがかわいそう、なんてひどいお姉ちゃんや」
いやいやいや、冷静に考えて。やっちゃん、オトナ。だいぶ譲って迎えに行くにしても、父親か一緒に住んでる兄弟でしょう?何年も音沙汰のないワタシじゃないでしょう?こんなときだけ利用するのってどうなの?あなたがたがワタシにしてきた仕打ちと比べたら大したことございません、お姉ちゃんやから、オンナやからってなんなん?ホンマ、不満しかないねんけど。
ましてや、女にだまされるって。鼻の下伸びまくり。よく母親に言えたもんや。

そんなこともあったなあ。いまはもう、笑える昔話だけど。やっちゃんは時間がかかったけど、ちゃんとパスポートは再発行してもらって、母に送金してもらって帰国しましたとさ。

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