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JR西日本が赤字路線の収支を公表 対象路線の取り組みは? ①

先週、JR西日本が2019年度に輸送密度(1kmあたりの1日平均乗客数)が2000人未満だった路線の収支を公表しました。発表された路線の収支をひとつずつ見ていこうと思いますが、一気にやると非常に長くなるので今回は金沢支社管内の大糸線、越美北線、小浜線について考えようと思います。

はじめに

JR西日本は今回のローカル線の収支率等開示について、大量輸送という観点で鉄道の特性を発揮出来ていないと考えられる線区において地域の人々と共に各線区の実態や課題を共有することで、より具体的な議論をするために、一定の前提をおいて算出したとしています。
また、廃止を前提としたものではないということです。

大糸線

(写真は大糸線で2010年まで活躍したキハ52)
【大糸線の概要】
大糸線は長野県松本市の松本駅から新潟県糸魚川市の糸魚川駅に至る路線で、このうち長野県北安曇郡小谷村にある南小谷駅から糸魚川駅までをJR西日本が運営しています。JR東日本の区間は電化されており、新宿直通や、多客期には名古屋直通の特急列車が運転されていますが、JR西日本の区間は気動車の普通列車のみ運転されています。

【大糸線の現況】
大糸線のJR西日本区間では1日あたり9往復列車が運転されており、このうち2往復は糸魚川~平岩間の区間列車となっています。
大糸線の輸送密度は102人(2019年度)、営業係数は2693(2017~19年度平均)。収支は5.7億円の赤字(2017~19年度平均)でした。1987年の輸送密度は987人ということなので、ここ30年で9割利用者が減ったということになります。

【大糸線活性化の取り組み】
2020年、2021年にえちごトキめき鉄道の観光列車「雪月花」を入線させるなど、沿線自治体は大糸線の活性化に取り組んでいます。しかし、交換可能駅が少ないことからこのような臨時列車を運転すると定期列車が走れない(バス代行になる)などの問題もあります。

【大糸線の今後】
糸魚川市長はJR西日本、新潟、長野両県の沿線地域関係者と議論を深め、持続可能な路線となるよう取り組みを進めていきたいとしており、今後の対応に期待します。

越美北線(九頭竜線)

(写真は越美北線で運転されているキハ120)
【越美北線の概要】
越美北線は福井県福井市の越前花堂駅から福井県大野市の九頭竜湖駅に至る路線です。全列車が福井駅まで乗り入れています。

【越美北線の現況】
越美北線では1日8往復の列車が運転されており、このうち4往復が福井~越前大野間の区間列車となっています。
越美北線の輸送密度は339人(2019年)、営業係数は1366(2017~19年度平均)。収支は8.4億円の赤字(2017~19年度平均)でした。1987年の輸送密度は772人だったということなので、30年間で約半分利用者が減ったということになります。

【越美北線活性化の取り組み】
北陸新幹線延伸開業を見据え、沿線の観光振興を推進するためラッピング列車を今年秋頃から運行するとのことです。

【越美北線の今後】
越前大野駅周辺はかなり家が多く、越前大野城などの観光地もあります。越美北線と並行するバス(京福バス)が1時間に1本程度運転されているだけに勿体ないという印象です。2024年には北陸新幹線も開業することから、増発を行い、利用を促進することも手段のひとつではないでしょうか。

小浜線

(右側が普段小浜線で運用されている125系電車)
【小浜線の概要】
小浜線は福井県敦賀市の敦賀駅から小浜市にある小浜駅を通り、京都府舞鶴市の東舞鶴駅に至る路線です。2003年には福井県、京都府、関西電力、北陸電力などが負担して電化が実現しています。

【小浜線の現況】
定期列車は普通列車のみの運転で、1~3時間に1本程度列車が運転されており、1日1往復舞鶴線の西舞鶴駅まで乗り入れる列車も設定されています。
かつて夏季には、名古屋からの臨時急行列車や京都からの特急列車が延長運転扱いで乗り入れていましたが、現在は運行されていません。
小浜線の輸送密度は991人(2019年)。営業係数は678(2017~19年度平均)、収支は18.1億円の赤字(2017~19年度平均)です。電化路線のため費用が嵩んでいると思われます。また、1987年の輸送密度は2712人だったとのことです。ピークよりも利用者が約6割減っています。

【小浜線活性化の取り組み】
2019年、2020年には京都丹後鉄道の「くろまつ号」が団体列車扱いで乗り入れました。
また、2019年に神戸、大阪から若狭和田に河豚を食べに行く団体列車が運転されています。
コロナが収まるとこういう取り組みも容易になるので早く収束して欲しいですね。

【小浜線の今後】
開業年度はまだ決まっていませんが、北陸新幹線が敦賀駅から小浜市を通り、京都駅へ向かうルートで建設される予定です。北陸新幹線が全線開業する時には小浜線は間違いなく転機を迎えるでしょう。

今回は大糸線、越美北線、小浜線の3路線を紹介させて頂きました。次回は近畿エリアの関西本線、きのくに線、加古川線、播但線を紹介させて頂こうと思います。

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