7月11日 ①

 まさかの一時通過を果たしたオンライン面接の、二次面接に臨んだ。
片道二時間の遠方。万が一、合格して通うことを考えたら不安の方が大きい。しかし不合格なら再び路頭に迷うだろう。働くことを望むから、この無謀な求人にさえ応募しようと思ったのだ。
 面接先は、一年近く会っていない友人が住む町で行われる。ばりばり働いている人との関われば、自分と比較して落ち込む原因になるという自覚があるから、ちゃんと仕事が決まるまで連絡はしないことにしていた。しかしわざわざ出向くのに、数十分の面接を済ませてさっさと帰って来るだけでは勿体ない気がする。根っからの貧乏性が、自らの誓いを破らせる。忙しい人だが、連絡を取ったらその日は余暇があったらしい。駅からの送迎まで買って出てくれた。
 面接が行われる建物に案内表示はなく、何度も建物を出入りした後、受付に人が居るのを見つけて尋ね、ようやく案内されて辿り着いた。予定より30分以上早く着いてしまい、15分前まで粘ったのに、結局、指定の場所に着いたのは3分前だった。
 10分程度の面接は、あまりにありきたりだった。もっと特別なことを聞かれるかと想定していたので、反ってしどろもどろになり、上手く答えられないまま終わった。後に失言に気付き、自己嫌悪に陥る。しかしこれで何が解るのだろう…と、不思議に思うような内容でもあった。私が面接官なら何を決め手に選ぶのか悩むが、採用のプロならそれなりにちゃんと選ぶのだろう。私が何処かの採用担当として存在する未来は、きっと無い。
 個別面接だったので、他の受験者がどう答えたか想像すらつかないが、ほぼ入れ代わりで数人ちらっと姿を見ただけの受験者は、皆若くて綺麗な人ばかり。7月で梅雨も明けない蒸し暑さの中、誰も彼も長袖のスーツを着込み、下はセットアップのタイトスカート。半袖のパンツスーツで出向いた私はきっと浮いたことだろう。しかし振り返っても、私が長袖のリクルートスーツで面接に臨むことは無かったかと思う。
 面接終了後、事前に提出した面接シートの確認があるということで、別室に案内される。これは面接ではないという前提だが、職務経歴の詳細を訊かれ、あれこれ話した内容が選考に多少影響があるとすれば、こちらの方が実績を伝えるには充分な受け答えが出来たと思った。
 すべてを終えて外で友人を待っていると、受験者らしい服装に不似合な黒のリュック姿の茶髪女子を見かける。私が迷ったように、入口にも行き先にも迷っていたようだ。声を掛けると案の定であった。

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