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幼イ仔

2024年7月2日


「こいつ、死ぬの?」


赤ちゃん。
ぼくは赤子を育てたことがない。
そんな赤ちゃん白痴なぼくは毎日恐怖に慄くのだ、
「死ぬんじゃないか」って。

ぼくの職場はママさんが多い。
そう、みんな何かしら「赤ちゃん」を育てたことがあるのだ。
ニンゲン、イヌ、ネコ、トリ。。。
そうだ、前言撤回だ、ぼくはヤモリとカエルの赤ちゃんは育てたことがあった。。。まあ、とにかくだ、どでかいイキモノはそう簡単に死にゃしないさ、というのは完全に真実ではないと悟ったぼくは心配で心配でたまらない。
だってさ、フニャフニャヤワヤワなんだもの。

ワクチンがまだ完全に済んでいない、とかで何やら死に至る病にかかるやもしれないじゃないか!

そんな赤ちゃんは下痢になったり、ゲロを吐いたり、しゃっくりをしたり、喘いだり、恐ろしい様子だらけだ。

けれど、ママさんたちは、言う、

「そんなのあるあるだよ。」

しかし、ぼくは、呟くのだ、

「ぼく、赤ちゃんはもういいです」


世の中の大抵のヒトは特に女性は子育てをしている。
この脆く、弱々しく、ひとりではまるで生きてゆけないグニャグニャの生き物に食べ物を与え、清潔に保ち、守ってやるのだ。

そうして、生き物は「大人」になるのだとぼくは思う。
幼な子を世話できない者はいつまでたっても子供じみていて、大人と呼ばれる風体なっても中身はまるで子供なのだ、自分のことだけ考えていればいい者は「子供」なのだ。

子を育てる。
こんなにも責任が重く、忍耐を強いられるものがあるだろうか。
こんなにも自分を蔑ろにし他者を思いやらねばならないことが他にあるだろうか。
昼はワーワーうるさいし、夜はキュンキュン泣くわで、おちおち寝てもいられねえ。

こんな休みのない苦行を24時間体制で一人で行うなら気が狂ってしまうだろう。幼な子を育てるには「家族」の協力が必要なのだ。

オオカミの子育てを見ると、非常にうまくやっているなぁと感心する。
「家族」である、お父さん、お母さん、叔父さん、叔母さん、年長の兄弟たち、みんなが協力して子供を育てる。お母さんだけがつきっきりで世話するわけではないのだ。お母さんが狩に行くなら他の誰かが子守をする。

最近の人間様は核家族化し育児も大変だろう、ゆえに保育園という「他人」
に預けねばならぬ。
うちは良い、ぼくのパパママも協力してくれるし、リルも面倒を見てくれる、そして、隣人は変わった。
リルが来てから隣人はひどく子育て熱心だったが、赤ちゃんが来てそれに拍車がかかった。
いろんなイヌの本を読み漁り、YouTubeも観まくる。
ぼく一人が責任を担うのではなく、ぼくらは重荷を分け合える。
すごくありがたい。
子どもはわがままな「子共大人」どもを結束させたのだ。

赤ちゃんは、毎日いろんなことを学んでいる。
目に映る全てが面白く、好奇心をそそる。
何でもかんでも匂いを嗅ぎ、噛んでみる。
ぼくの挙動も見ている。
ぼくの前で「座る」ことを覚える。
ぼくがテレビを見ている間「伏せ」することを覚える。
ぼくがピーと口笛を鳴らしたらこっちに「来る」ことを覚える。

ポオは、もうすぐ3ヶ月だ。
とても賢い子だ。
とても愛らしい子だ。
健康でスクスク丈夫にどでかく育ってほしい。
元気に生きてほしい。