人生で初めて失恋をした、20歳の夏

 こんにちは。ほんとむしむししていて最悪ですね。私の感情を逆なでしてきているみたいです。被害妄想が過ぎましたね、ごめんなさい。

 はのとです、初めまして。

 このブログにも何度か登場したことのある恋人から、つい今朝、別れを切り出されました。振られちゃいました。

 一生懸命家まで帰ってきました。通いなれた駅から恋人の住む家までの道のり。いつもの3倍、遠く感じました。電車に揺られた2時間。何も考えられませんでした。ずっと、涙が止まりませんでした。泣いたまま、家まで帰ってきました。こんな気持ち、初めてです。誰かに聞いてほしい。でも言えない。苦しい。ここしか、ありませんでした。

 原因の一番大きなものは、価値観の違い。私は、人に誇れるような家族に囲まれて幸せに過ごしてきました。私のやることなすこと主張することは、基本的には正しい。でも、自分にとってはその正しさが苦しかったと。そう言われました。私みたいな箱入り娘は、重たかったのかも知れません。

 心情の変化をもたらしたきっかけは私でした。自分に自信がなくて、自分にも恋人にも素直になれない。だから、気持ちを伝えることが苦手でした。ずっと。特に直接会っていない間のやり取り、電話とかラインとかのとき、どうしても想いを口にすることができない。

 それが恋人には負担だったみたいです。悲しい想いをさせてしまっていました。始めこそ、私の性格を理解してくれていましたが、だんだん耐えられなくなった感じですね。私が悪いです。性格のせいにして甘えていた、私に非がありますね。

 嫌だ、別れたくない。私にはあなたが必要だ。どれだけそう言いたかったでしょう。でも、言えませんでした。今まで、私のことを第一に考えてくれていた恋人。そんな彼が出した結論にどれだけ大きな意思が隠れているのか、私にはそれが見えてしまったからです。

 もう変わらないんだろうなって。

 昨日、部活がありました。だから、久しぶりに恋人の家に泊まって、色々な話をしました。たくさん笑いました。私は、ね。それで夜。横になって話しているときに、最近人に対する興味がない。と切り出されました。だからライン返してくれないんだね、とふざけて返すと、うん、と、ふざけないで返されました。

 その後もその話をしたあと、私は冗談交じりに、じゃあ別れるの?と聞きました。彼は、うーん、と言いました。え、なんで別れないって言わないの?驚きました。わかりませんでした。彼が抱えているものが、私には見えていませんでした。見ようともしていなかったのかも知れません。

 ラインの返信がないのも、就活で忙しいからだとばかり思っていました。ストレスも溜まるだろうし、私に構っている暇なんてないよな、と、勝手に納得していました。駄目な女ですね。

 結局昨夜はそのまま眠ってしまいました。二人とも、部活で疲れていたから。

 そして朝。私は早起きしました。目が覚めてしまいました。起きた瞬間に、昨夜のことは夢だったんじゃないかって、なんとなくそう思いました。でも、胸騒ぎは止まらない。隣で眠る恋人の表情は、どこか険しく感じられました。

 数分後、恋人が目を覚ましました。その様子から、昨夜の出来事は夢じゃない、と悟りました。だから、恋人が支度を整えるのを待って、自分の心臓が落ち着くのを待って、勇気を出して切り出しました。

「これからどうしたいの」

 こんなこと言わずに、家を飛び出してしまうことだってできました。昨日の話をなかったことにして、お酒のせいで忘れたことにして、何事もなかったかのように帰ることだってできました。でもそうしなかったのは、もやもやしたまま過ごすこれからの日々に耐えられる自信がなかったから。それに、別れるなんて究極の選択、まだしないだろう、と、この期に及んでまだ楽観視していたのもあります。

 10分は沈黙があったでしょうか。

「価値観が合わない。今この段階で別れることが、一番ダメージ少なくて済むと思う。」

 冷静な声色でした。いつも通りの落ち着いた、でも、いつもと確実に違う声。様子。

 いざその言葉を聞くと、やっぱり涙が出てきてしまいました。私はつまらない女だから、笑顔でお別れなんてできないんです。まだ考え直してくれるかもしれない、もう少し考えれば変わるかも知れない、そんなことを思いながら、必死に思考を回しました。

 でも、結局口から出たのは、

「じゃあ、そうしようか。」

 それだけでした。楽しかったこと、嬉しかったこと、初めてばかりの新鮮な毎日。この二年間の出来事が走馬灯のように駆け抜けました。今まで忘れかけていた些細な出来事まで、全部。記憶が駆け巡りました。その記憶たちが、私の涙を刺激しました。

 そのあと、彼は、そう考えるに至った経緯を少し話してくれました。それが最初に話したことです。価値観。それに、私の性格。口にはしなかったけど、私が婚前交渉を拒んでいるのも、理由の一つでしょう。

 見慣れた部屋。決して綺麗とは言えないけど、落ち着く匂いのする優しい空間。少しずつ私の荷物が増えた、第二の家。改めて見渡してみると、今まで見えていた風景と全く別物に見えました。もう二度と、私はこの部屋を見ることができない。この景色を見ることができない。もう二度と、ここに来ることはない。

 その現実が、さらに私の涙を刺激しました。止まってはまた溢れる涙。最後の最後まで、私は泣き虫なままでした。迷惑をかけてばかりでした。

 最後は振り返らない。涙は、ばれてるけど見せない。

 その場で立ち上がり、荷物を持って部屋を出ようとしました。「私の物、家に送ってくれるかな。」「うん。」そう言葉にし、最後に息を吸います。終わってしまう。終わってしまう。この、大切な二年間が、終わってしまう。幸せなことばかりだった二年間が、終わってしまう。

 最後に言いたかった言葉が、喉をなかなか通りません。ドアの前で立ち尽くし、なんとか嗚咽を押さえます。でも、止まらない。二度目の走馬灯。頭がくらくらしました。何も考えられない。でも、これだけは言わなくちゃ。一生懸命呼吸を整えて、震えた声で、私はこの言葉を伝えることができました。

「今まで、ありがとう。じゃあね。」

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