気づいたら1学期終わり。社会人生活最初の夏休み。

 こんばんは。社会人になってから、めきめきとギターが上達している。高校大学で弾いていたキーボードは、でかいのと準備が面倒でプラグが多すぎるのでずっと部屋の隅でひっそり息をしています。半面、ギターってだしっぱでも幅取らないし、すぐその場で弾けるし、飽きてもすぐしまえるし、弾きやすいったらない。先月からずっとBUMP OFCHICKENの「ラフ・メイカー」を練習している。

 はのとです。


 今はBiSHの「BiSH 星が瞬く夜に」を聴いています。解散直前で興味を持ち始めて早1か月。毎日聴いている。同じ曲ばっかりだけど。エモい曲が好きなので、タイプの曲がたくさんありました。それでもやっぱり、今のところ最初に聴いた「プロミスザスター」が大好きです。

 アイナ・ジ・エンドのあの特徴的な声が大好きなんです。人生で初めて好きになったアイドルはももクロなんですけど、小学5年生ながら、有安杏果の特徴的な歌声に惹かれて人生の推しになりました。その後ちょこっとだけ立ち寄った日向坂では、齋藤京子と佐々木美玲にちょびっと惹かれた。声に惹かれることが多いな、アイドル。女性アイドルしか通ってないけど。


 なんてことはどうでもいいんだけどね。タイトルと関係ない話しすぎ。


 さて、高校で英語の教員として働き始めて4か月が経とうとしています。学校ですので、区切りのいいところまで来ました。1学期が終わった。6月でほぼすべての授業は終了して、残りはテストと講演会とかLHRとかそういうの。

 思い返せば昨年度2月。2023年の2月。今でも昨日のこと、というかさっきのことのように鮮明に思い出せます。当時大学で所属していた軽音楽部の卒コン的なライブに向けて、ミスチルのコピーバンドで練習に入っているときでした。

 たぶん練習していた曲は「fanfare」。ワンピースの映画の歌みたいですね。知らなかった。私が選んだのに、知らなかった。その曲を練習している最中。曲の途中。

 いつかかってきても気づくように、普段はオフにしているけれど臨時的にオンにしていたバイブが胸ポケットでぶるぶると震え出しました。電話です。普段電話なんて大学の学生課とか教務課からしかかかってこないから、これはもしやと思って画面を確認。

 曲の真っただ中で退出し、少し離れたところで電話に出ます。「はのとさんの携帯電話でよろしいでしょうか。私、〇〇高校で校長をしております〇〇と申します。来年度より本校で採用となりましたので、ご連絡差し上げました。」

 私、今にも座り込んでしまいたくなる衝動を抑え込んで、必死に受け答えをしました。「はい、ご連絡ありがとうございます。」自分がなんて答えてどんなやり取りをしたかは覚えてないけど、とにかく卒業旅行が私だけ日帰りになることが確定したことがどうでもいいくらい、ショックで練習していたスタジオに戻って私の帰りを待つ後輩たちに大声で叫んだのを覚えています。


「私、辞めちゃうかも!!!!!」


 それを聞いた後輩たち。私の告げた高校名をすぐさまネットで検索し、「いつでも戻ってきてくださいね。」と優しい言葉を掛けてくれました。その言葉が優しすぎて、私は自分がいるのが大学のスタジオ内であることも忘れ、部活動真っ最中ということも忘れ、母に電話。そして同じように、「辞めちゃうかも。」と告げて電話を切りました。

 「〇〇高校生徒 SNS炎上」そんなタイトルの記事が腐るほど出てくるインターネッツの海。地元から少しだけ離れた県内の地区にある大学で出会った後輩たちは、私の配属先となる高校名を知りませんでした。田舎だからね、仕方ないね。

 でも、調べた途端に、「あ、ここか!」と納得。それくらい、みんなが知っているような炎上騒動を起こした我が配属先。私が動揺することも仕方がないというか、その後改めて合わせたfanfareはミスしまくりの状態で、でもまあしょうがないよね、と後輩が言ってくれるくらいには、ねえ。


 そもそも地元でも有名なヤンキー校でしたから、なんつーか、もう、絶望だよね。母校に実習に行ったときに、母校は自称進学校で偏差値的に言うとそこまで高くなく、まあ平均よりちょっといいかな、というくらいでした。そこでも、「ああ、やっぱりうちの高校の生徒はこんな簡単な文法も分からない子が多いんだ。」と驚いたものです。

 でも、配属先はもうそんなレベルではない。そもそも授業が成立するかどうかも分からない、ボイコットとかされちゃうかもしれない、そんなイメージの高校でした。怖くて怖くて。学生最後の春休み、「そろそろ英語勉強し直さないとな~」と思っていた意志も、「なんだ、勉強しなくていいじゃん」と覆るくらいの、あれでした。

 もうね、ほんと。ショックだったんだよ。忘れられないよ、あのときの気持ち。


 そんな感じで4月から社会人になったわけですが、驚くべきことに、私は今もその高校で元気に先生をやっているわけです。

 これにはからくりがあります。私たち外部の人間が知らない内に、その高校はかなり生徒の質を上げたようです。偏差値的にはまあ褒められたものではありませんが、問題行動とか、授業中の態度とか、予想とは大きく外れたものでした。いい意味で。

 まずね、4月3日。初めて高校に出勤した日。「失礼します。〇〇部の〇〇です。〇〇先生に用があって参りました。」と言って職員室に入ってくる生徒を見て、私は言葉を失いました。

「え、いいこじゃん。」


 そう、いい子だったんです。今も思っています。うちの生徒たち、いい子たちばっかりなんです。勉強はすこぶる苦手だけど、素直でいい子たちなんです。こんなに素直な高校生っているんだって、そう思うくらい、素直。ピュア。

 うちの生徒たちが抱える問題は学力だけではありません。育ってきた環境です。育んできた人間関係です。まず、両親揃っている子が少なすぎる。片親の場合がとても多い。中には、親ですらない、祖父母とかの子もいる。

 そして、貧困家庭が目立つ。生徒がバイトをしないと生活ができない、というレベルまで。生活保護なんて珍しいものではありません。修学支援金とか、特別給付金とか、そういうの該当する家庭が多いこと多いこと。

 在学中に親が離婚する場合もあるし、絶賛離婚調停中とか、離婚はしていないけど別居中とか、そういうのも多い。下手に家族の話題を授業とかで出せません。母の日とか、まじで言えない。親も、両親とか言えない。保護者の方、って感じ。

 大学や短大、専門への進学を断念するほとんどの理由が、経済的理由。大学なんか行けない。お金がない。そして、兄弟がいたりすると余計に。てか、兄弟多い子も本当に多い。だから貧困なのかは分からないけど、大学に行くお金がないから就職、という子がとっても多い。

 そして、褒められ慣れていない子しかいない。しかいない、は過言かもしれないけど、本当にそう。少しのことでも、褒めるようなことじゃなくても褒めてあげると、はち切れそうな笑顔が返ってくる。中には素直に受け取ってくれない子もいるけど、照れくさそうにニコっと笑ってくれる子が多い。

 そして、少しでも褒めると、簡単にやる気が出る。いい点とった小テストとかをニコニコで見せてきたりする。そのテストは、I (    ) a student.(私は学生です。)みたいな問題ばっかりだけど、それでも満点に近い点数を取って、嬉しそうに報告してくる。

 そういう子たちを見ていると、私の使命に気付いたりする。この子たちを目一杯認めてあげよう。それが、この学校で私から生徒たちにできる最大の使命だって、思う。彼ら彼女らの無垢な笑顔は、それまでの人生の困難を示しているんだもん。


 家庭でも学校でも、勉強が苦手な彼らは、きっと肩身の狭い思いをしてきたんだろうなって、節々で思うの。人と比べられたり、悪い成績しか載っていない通知書を見て叱られたり、やってもできないから先生が構ってくれなくなったり。

 そういうの、見えてくる。だから、初めて褒めたときはみんなびっくりしたような顔をする。簡単な問題でも、「すごいじゃん、合ってるよ。」と言うと、まるでテストで満点を取ったかのように、「やった! できた! 分かった!」と喜んでくれる。今まで分からなかった、分からないまま放っておかれたものが、分かった。その一歩は、彼らにとってあまりにもでかいみたいです。

    それを感じてから、今までにも増して「学校は勉強をするところではないな」と思うようになりました。勉強はするんだけどさ、それは学校に来る意味にはなっても価値にはならない気がする。これは一個人の意見なので、共感とかなくて大丈夫です。そんな考えもあんのかと思ってもらえれば。


    そしてね、もう一個気づいたのは、褒められ慣れていない、認められ慣れていないからこそ、少しでも他者から認められると、中にはその人に対して依存していまう。実際に、私も感じていることです。

    今まであまり人に認められてこなかった子、困っているときに誰も助けてくれなかった子。私は22歳だから、背も低くて童顔だから、生徒にとっては先生というよりも年上のお姉さん、下手したら友だちという感覚に近いのかなと思います。だから、私に世間話をする感覚で、その延長で、クラスの子とのトラブルを打ち明けてくれました。

    私は、せっかく人に話せるようになったのだから、この信頼を損なわないように全力でその子を受容することに努めていました。でも、私ができたことは「共感」のただそれだけ。ただただずっと共感していただけ。それだけど、その子にとっては大きな愛だったのかもしれません。

    それ以来、私を見つけるとくっついて離れなくなりました。相談があると言われて話を聞いて、その話に区切りをつけられないまま2時間くらい経ってしまうとか。あげくの果てには、「はのと先生にしか話したくない」と担任の先生の声がけを足蹴にしてしまう。

    そこまで来て、私もその子の担任の先生も、「あの子には依存気質があるね。傷つけないように、ほどほどの距離を保たないとだね。」ということに気がつきました。難しいけど。せっかく信頼してくれたのに、少しでも素っ気なくしたらまた悩んでしまいそうで怖いけど。


    そんなことに気がついた、初任としての4ヶ月間でした。先生の仕事って、授業がもちろん1番なんだけど、人間と人間の関わり合いなんだよな。人間と人間。生身の衝突なんだわ。そっちの方が気遣うし、そっちの方が問題として起こりやすい。

    だからさ、夏休み明けは、もう少しバランスよく生徒と関わっていけるように頑張ります。いや、頑張らないよ。仕事は頑張らないよ。努めます。


    夏休み最高。授業がないだけで、毎日が休みみたい。夜遅くまで起きてても困らないし、いや困るけどそれが精神的負担にならないし、体調不良になっても容赦なく早上がりできるから、本当にストレスがない。夏休み終わったら怖いよね。

    今週は明日まで生きれば明後日から恋人と一ヶ月ぶりのデート! 激萎えデートドタキャン(私が)を乗り越え、多幸感をもらってこようと思います。

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