セクハラを止めてくれた人がアルハラをする、そんな社会らしい

    こんにちは。先日、恋人と初めて同棲についてリアルな話をしました。私が社会人生活2年目、そして恋人が社会人1年目となる節目。実家から通うには少しだけ遠く、でも一人暮らしではお金が貯まらないことが不安要素である恋人。でもね、提案しようと思っても、ここで提案してしまったら、なんだか妙にリアルで怖くなって2週間くらい寝かせました。で、昨日話した。冒頭に書くにしては長すぎる話になるのでここでやめます。

    はのとです。初めまして。


    私は今年から学校の先生として働いています。職場となる学校はいわゆる進路多様校と呼ばれるような学校で、地元で有名なヤンキー校でした。でも中身は想像と全然違って、素直で可愛い生徒たちと働きやすさ重視の快適な職員室。他の同期の話を聞いても、当たりを引いたなって思います。

    働き始め最初の週。学年の会議が終わってから「親睦会をやるので後で希望とりますね〜」と30代前半くらいの先生が言いました。私は、職場で友だちみたいな関係を作りたくないな、なんとなく距離を置きたいなとは思いつつ、酒は大好きだし連休前の金曜日だったから、行くか〜と思ったわけですね。

    実際に行ってみると、ほとんどの先生は来ていて、学年外の主任の先生とかもいて、でも歳の近い女性の先生たちと席を近くにしていただいたので、とっても楽しく飲むことができました。社会人になって最初の飲み会で、最初の砕けた場だったので、他の先生方とすごく仲良くなれた実感があって嬉しかったです。

    次は学期末ですね〜なんて言って解散。それ以降、もとより居心地の良かった職員室がさらに楽しい居場所になり、いろんな先生方とお話しできるようになりました。


    そして来る7月。私は飲み会に行けなくなります。理由は部活による激務。悪魔の18連勤。副顧問を務める吹奏楽部がコンクールを控えているので、土日返上で部活をすることになったんです。その場にいても何の役にも立たない吹奏楽未経験の私とはいえ、さすがに顧問の先生が一生懸命頑張ってくださっているのに休むことはできず、ということで飲み会の参加を見送りました。


    あ、全然関係ないんですけど、この間面倒見の良いお母さんみたいな女性の先生と20代後半の若い女性の先生と話していたときに、ある年配の男性の先生が話題に上がったんですね。私、思い切って聞いてみたんですよ。

「◯◯先生ってセクハラしませんか?」

「…するよ、何されたの?」

    「何ってほどのことではないんですけど…」と話し始めたことがなんやかんや大事となり、教頭先生から聴取されたりしました。その先生前科あるみたいで、前にも女性の先生に余計なことを言って注意を受けたみたいなんです。繰り返すよね〜。だって、自覚ないんだもんね、どういう発言や行動がセクハラ認定されたのか。


    私はね、今22歳で2000年生まれのミレニアムベイベーなんですわ。ミレニアムベイベーはさ、ハラスメントに厳しいよ。だって、そういうふうに教育されてきたんだもん。「こういう発言や行為はセクハラに当たります。」「これはパワハラの例です。」「困ったことがあったら相談しましょう」「ハラスメントを防止できるような職場環境の醸成に努めましょう。」そんな教育。

    だから過敏かもしれないんだけど、でも、だからこそ、今はもうハラスメントとか過敏と言われるほど気にしなきゃいけない時代になったんじゃないか? そう思うわけですね。オワハラとかもあんじゃん。就活の終わりを急かすやつ。言葉が生まれている背景には、社会がそういうのにシビアになってきているというのがあると思うんです。思うだけです、違ったらすみません。

    だからね、特に男性の方は、むやみに女性に触れないように細心の注意を払っているんだと思うんですよ。少しでも触れてしまったら、「あ、ごめんね。」ってちょっと気まずくなるやつ、あれ何回もやったのよ。ああ、それくらい気にしないのに、生きづらそうだな、とか思ったりしたのよ。


    そんな時代でも、やるやつはやるんだな〜。ガツガツ触れてくる。すごいよ、逆にすごいよ。まじかって思うよ。でも、ここで声を上げないとこれくらいは許容したってことになっちゃう。分かってるけど、声は出ない。自意識過剰だと思われたくないし。

    っていう話を教頭先生に聞かれて答えました。他にも何件かあったんだけど、触れるは違うよな〜触れるは回避できるよな〜触れたらちょっと気まずくなるご挨拶するよな〜って思って事例を出した。

    その後その先生が教頭先生に呼ばれて、校長先生と2人体制で注意があったらしい。私は知らんが。その後も、私は気にせず普通に生活していた。それ以降、その先生からそういった行為はない。距離感も、適切になってきている。ありがたい。そうしてくれれば、とってもいい先生なのに。

    結局ね、そのせいで職員会議内でセクハラについてのプチ研修が始まっちまって、申し訳ない気持ち。お手数をおかけしました。そこまで大事にしてくれなくて良かったのに。管理職のメンツのために必要だったのかもしれない。


    さて、話は戻って学年の飲み会の日になるんだけど、行かないって言っていたのに行きたくなっちゃって職員室でごねてたのね。行きたいよ〜でも部活が〜って喚いていたの。そしたら、仲良くしてくださっている先生方が「きちゃいなよ〜」「飲みましょうよ〜」ってニコニコしてくれるの。

    それを見ていたセクハラおやじがね、「あんまそういうこと言ってるとアルハラになるよ〜」って言ったの。「違いますよ、これはお誘いしてるだけで、強制してるんじゃないですよ!」なんて他の先生は言っていたけど。まあ、私が蒔いた種なのでハラスメントもクソもないけど。

    実はその週、というかその翌日、英語科でも歓送迎会の飲み会があったんですよ。だから、「どっちかは来ませんか?」なんて同じ英語科の先生に誘っていただいていたんですけど、まあでも、いずれにせよ次の日も仕事だしきついかなって。

    ようやく諦めもついて部活を見るために階段を登っていたら、初任者研修の教科研修を担当してくださっている、私が最もお世話になっている女性の先生とすれ違いました。セクハラおやじの件についても無限に心配してくれた本当に素敵な人。こんな先生に、大人になりたいって思える、私の母と同い年の先生。

    「はのとちゃん!」ぐっと腕を掴まれ、呼び止められました。何かと思って振り返ると、「明日の飲み会来ないんだって?」と。「すみません、行きたかったし最初は行くつもりだったんですけど、今月休みがなくてきついので…」と普通に正直に答えました。すると次の瞬間、驚きの言葉が放たれるのです。

    「あんた主役なんだよ、歓送迎会なんだから。学年の飲みは定期的に開催されるかもだけど、英語科は年に1回だよ。来なきゃダメだよ。」

    さっき職員室でやった、「来てくださいよ〜」「飲みましょうよ〜」のノリとは完全に違う、本当のやつ。なんか、え、私、今、怒られている? そう思うと、びっくりして言葉が出ませんでした。

    「飲み会は出る。お酒は飲む。でも、次の日休まない遅刻しない。それが大人。それが社会人なんだよ。次から気をつけてね。」

    え、やっぱり怒られている??????? 飲み会を欠席する、という事実に対して指導を受けている??? まじで言ってんの???


    本当にびっくりして涙が出そうでした。すごく信頼している人でした。1番尊敬している人でした。そんな人から、そんなことを言われるとは思っていませんでした。歓送迎会は確かに私も主役の1人だけど、他にも10人くらいいるし、飲み会への参加が強制なんて聞いてない。飲み会を欠席しないのが社会人に求められることだなんて聞いてない。

    そんな時代、10年も前に過ぎたものだと思っていました。


    今や大学でも教わります。飲み会への参加を強要してはいけないと。部活の歓迎会や親睦会だとしても、参加しないことでその子に不利益が生じないように上級生が配慮しなくてはならない、するのが当たり前でした。そういうものだと思っていました。今時、飲み会に参加しないことが責められる世界線が存在しているとは思いませんでした。

    信じていた人からそんなふうに言われたことが、信頼していた人が時代錯誤な考えを持っていてそれをぶつけられたことが、なんだか裏切られたみたいでショックだった。本当にショックだった。もしかしたら、私の考えが甘かっただけかもしれない。思ったより社会は、未だ前時代的なのかもしれない。それでも、それでもだよ。

    帰り際、私が副担任を務めるクラスの担任の先生にぼそっと聞きました。「飲み会に行かないのがあんまり良くないみたいなのって、やっぱりまだあるんですか?」先生は、間髪入れずに答えました。「ないよ。」

    「仕事が終わった後の時間なんだから、来るも来ないも自由だし、疲れてるなら来ないで休めばいい。来たい人だけが来ればいいし、来ても楽しくないなら意味ないでしょ。気にしなくていいよ。」

    その日の学年の飲み会に参加しないことを気にしていると思われたのか、そう付け足してくださいました。そうだよね、それが例え上辺の言葉だったとしても、そういう価値観が一般的ではあるということだよね。正論ではあるということだよね。実際にそう思っているかは別としても。


    皮肉なものです。セクハラを強く非難した先生がアルハラをして、セクハラをしていた人がアルハラに敏感であるなんて。自分の悪いところには気がつけない、人のふり見てって感じですね。自分にも言えることです。

    私の見立てが甘かったこと、社会はそんなに単純じゃないこと、綺麗事しか私が持っていないこと、それはまあ、あるでしょう。でも、そんな社会が間違っていることもやっぱり事実。私は、次の時代を作るために、飲み会に参加しない事例を作ろうって、ちょっと前向きに、というか前衛的に考えてみようと思います。


    あ、別に毎日容赦なく定時退勤することは社会とは全く関係ない自分自身の意思です。

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