水溜り

雨の日に、外へ出る

 その日、僕は朝の八時に目覚めました。雨が降っているようで、しとしとと音がしていました。焼きそばを朝食に食べ、その後はベッドでスマホを意味もなく眺めます。

 最近の休日はいつもこんな感じで、大学に入ってからこちら、時間が無為に流れていくことが増えました。なんとなく、そんな状態にあることを、嫌だなあとは思っていたのですが、しかしすることがないというのが大学一年生。どうしようもありませんでした。 

 その日はスーパーに買い物に行こうと思っていたのですが、あいにくの雨で面倒になってしまい、家から出ないつもりでいました。

 今日も同じように無為な時間が流れてしまうんだろうな、と思っていた昼前、窓の外を見て、ふと思いました。「雨の日に、外へ出よう」 スーパーじゃなくて、どこか自分の行きたいところに。散歩に行こう。 

 そう思うと、なぜだかやる気が出てきました。よし、出てみよう! と。 卸したての服を着て、いつもより多めに香水を付けて。しかし防寒はしっかり、靴は防水のものを。なんだか気分が上がります。

 こんな雨の日に、散歩する人なんて滅多にいません。すれ違う人たちは皆、必要に駆られて、出ざるを得なくて、外にいるのでしょう。浮かない顔です。しかし僕は違う。好きな音楽を聴きながら、傘に当たる雨粒を感じ、雨の日を最高に楽しんでいます。

 家から少し遠い場所にあるブックオフに立ち寄りました。思わぬ掘り出し物があったので、即決。蔦屋にも寄って、欲しかった本も買えました。ほくほくです。ここで隣のスーパーに寄るなんて野暮なことはしません。だってこれは、散歩なんだから。

 帰り道では、帰ったらコーヒーをドリップでもしようか、なんて考えてしまいます。昼のメニューはお好み焼きなのに。

 雨の日も、案外悪くないかもしれない。少しのおしゃれと好きな音楽のおかげで、『雨』という一つの不快もちょっとしたスパイスとなって、その日を特別なものに仕立て上げてくれている、そんな気がしました。 

 気づけば雨はあがっていて、晴れ間が出るとまではいきませんが、心なしか空が明るくなった気がします。「いい日だったなあ……」少し冷たい風が、僕の頬を優しく撫でました。

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 何事も気持ちの持ちようだと思います。嫌だなあと思うことも、一つ気持ちが変わるだけで、なんだかすごく楽しいことになってくれるかもしれません。そんなことを実感した、昼下がりでした。

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