見出し画像

子どもの自主性と監督責任

今年初めてのNote。
冬休みからの3連休で、お子さんとたっぷり触れ合った方も多いのでは。

先日、娘の幼稚園時代の同級生(7歳)が遊びに来た時の話。

自分の感情をどう整理したら良いかわからないので書きます。


娘の友達、Aちゃん

娘の友達Aちゃんは幼稚園の頃から活発で、奇想天外なことをして周りの大人を驚かせていた。
揉め事も度々起きていたので、幼稚園の先生からは少し気にかけられていたと思う。
小学校に入ってからも変わらずで、数ヶ月に1度程度ある学校行事で訪問した時にも先生に注意されているのが目についた。


娘からはよくAちゃんの話を聞いていて、仲良くしてもらっているようだ。
「土曜日にAちゃんが家に遊びに来る約束をした」というのでAちゃんのお母さんに連絡をしたところ、「何も聞いていない」と。
まぁ子ども同士の約束ではよくある。
その代わりに遊ぶ日を決めて、その日を待った。


Aちゃんは既に我が家に来たことがあったので、その時の経験から私は少しだけ心配をしていた。
勝手に冷蔵庫を開け、勝手に食品棚からお菓子を取り出して食べていたり、子ども部屋のおもちゃを全て引っ張り出して片付けもせずに帰った。

片付けをしないのはAちゃんの通常運転らしく、その時の私然り、常に周りの大人や友達に「片付けよう」と言われても行うことはない。

片付けないくらいなら後から片付ければ良いし、何より娘が楽しみにしている友達との時間を、私の勝手な都合で台無しにしたくなかった。


そして当日を迎えた。


1日のはじまり


この日のAちゃんの訪問は9:30~16:30の予定であった。
子どもにとって、大好きな友達との7時間はあまりにも短い。
なんだかんだ、この日もあっという間に過ぎるのだと予想していた。


しかしそんな予想はすぐに外れたとわかった。


Aちゃんは我が家に着くなり、リビングの引き出しを全て開けた。
興味があるものを全て引っ張り出し、見ては捨て、見ては捨てを繰り返していた。
持ってきたスーパーボール数十個を一気に部屋中にばら撒き、そのままスーパーボールだらけの部屋で持ってきたお菓子を食べ始めた。

ここまでものの5分。

既に私の想像の範囲を超えていた。


もう見るものもなく飽きたのを見計らい
「外に遊びに行こう」と誘った。
家には高齢者もいるため、物音や転倒リスクを考えできるだけ外で遊んだほうが良いと考えた。

よく晴れた冬の外遊び、防寒は欠かせない。
Aちゃんは娘に「手袋、きついから交換して」といった。
Aちゃんの手袋は小さくて窮屈らしかった。
娘は自分の手袋を差し出し、Aちゃんの手袋を「小さいね」と笑いながらつけていた。

外遊びはAちゃんが側溝のドブに入り、泥だらけになったところで1時間弱で程なく終了した。

帰宅すると手を洗うことはなくそのままリビングのこたつに入り、置いてあった我が家のタブレットをいじっていた。

「Youtube出して」

というので、「まずは手を洗おう」と促すが全く聞いていない。


頑なにタブレットを離さず、適当な番号を入れている。
ロック解除できなくなっては困るし、これはもう一度見せないと離れないと感じ、Youtubeをつけた。

そこから30分は静かな時間だった。

ちょうどお昼時になり、外に食事に行こうと誘った。
とにかく家にいない方が良いと考えていた。

商業施設につくなり、Aちゃんは走っていなくなった。追いかける娘。
お昼ご飯のためやっと座れたと思うと、みんなでシェアしようと思ったフライドポテトをほとんど一人で平らげ、立ったり座ったりしながら食事を終えるとどこかへ走っていってしまう。

まだ7歳の女児、一人にするわけにもいかない。
監督責任は私にある。

Aちゃんを追い、走ってはいけないこと、商品にぶつかると危ないことなどを説明するが、言えばいうほど面白がり逃げる。

ストローのついたふたつきのジュースを持ち時々飲みながら、「ぎゃあああ!!」と大声を出しながら、商業施設をどこまでも走っていた。

ここはだめだと感じ、児童館に行こうと思った。
しかし児童館のお昼休憩が明けるまであと1時間ある。
1時間もここにはいられない。

一旦帰宅して、時間になったら児童館に移動しようと思い、娘に協力してもらいなんとか車に乗せた。


本当に大変なのはこれからだった


帰宅後、リビングは避け、極力何もないピアノの部屋へ誘っておもちゃを出した。
「スライムがやりたい」と言われたが、大惨事を予期して道具がないことを理由に断った。

代わりにねんどがあったのでテーブルを出して遊んでもらった。
すると、「絵具使いたい」と言い出した。
「絵具あったかなー」というと、「幼稚園で使ったのがあるはず」という。
「ないなら探してあげる!」と言われ、クローゼットを開けられたので
「探してくるね!多分2階にあるから!」と言って阻止した。

絵具、筆、5個連なっている紙コップと紙皿を持って部屋に行く。
ねんどで頑張って遊んでいる。
紙コップに水を入れて、段ボールを切って簡易的なホルダーを作り、紙コップが倒れないようにセットし渡した。

私が大きな画用紙を用意している間に、ねんどに絵具で色を塗り始めた。


もう驚かない。

絵具を渡した以上、あらゆる状況を想定して対応するべきだと思った私は新聞を片っ端から引いていった。

だがそんなもの全く意味がなかった。
赤と黒の絵具を筆につけて大きく振り回す。すると飛び散った絵の具が不規則な形で画用紙についた。面白かったのだろう、それを何度も繰り返した。

壁もピアノも服も全てに絵の具が飛び散る。

次は洗面台で水を汲んできた。
赤と黒の絵の具を混ぜて、血液を作っているという。
面白い発想だと思いながら、床に並べられた赤黒い液体が並々入った紙コップを見て不安がよぎる。

その瞬間、見事に倒し水浸し。
”予防”で敷いた新聞もろともびしょびしょな部屋が出来上がった。

私と娘が絵具まじりの水浸しの床を掃除していると、Aちゃんは真っ赤な絵具を自分の手に塗り始めた。
そしてそのままの手でピアノを弾き、「手を洗ってきて」をいう私の顔を見ながら壁を真っ赤に撫で回した。


ほぼ幼稚園で数回使っただけの絵具の赤と黒は空っぽになっていた


さすがに疲れた。
この時点でAちゃんの迎えが来るまでまだ1時間強あった。

児童館に行くことも提案したが、応じてくれなかった。

「じゃあ終わりにして、お菓子食べながらYoutubeみよう」

奥の手を出すしかなかった。

手を洗いにいった二人がこたつでお菓子を食べたいというので、またリビングに移動した。
Youtubeがあれば大人しくいてくれると思った。

その間一人で掃除をしたが、部屋から洗面台までの動線全てに赤い絵の具がついていた。おまけに洗った後のはずの手を拭いたタオルまで真っ赤だった。
そのタオルを使って部屋中を磨いた。
水性絵具で助かった。

リビングに行くとお菓子の山を作って寝ながらYoutubeを見ていた。

お菓子を食べてはその手でタブレットを触り、座椅子かこたつの布団で手を拭う。


娘はその隣で座って画面を覗き込んでいる。
「次は私がみたいやつにしてもいい?」という娘の問いには一切答えてもらえていなかった。

娘には申し訳ないが、もう何も言う気にならなかった。
このまま時が過ぎるのをとにかく待った。

お迎えまであと20分のところまできた。
その時、Aちゃんに「飽きた。また絵具したい」と言われた。

時間がないから無理だと何度も伝えたが、諦めてくれない。
もう断る理由がなく困っていたら、ふとチェスト下の奥に入れていたおもちゃがAちゃんの目に入った。

Aちゃんはチェストの下の荷物を例に習って全て出し、おもちゃを開けて遊び始めた。
絵具でなければなんでもいいと思った。

するとお迎えが来て、ようやく帰宅の時間である。

しかしすんなり帰るわけもなく、それから15分はそのまま遊んでいた。
その間何度も何度も説得したが聞く耳を持たない。もう聞く耳を持たないことなど最初からわかっていたが、迎え人が待っている以上放っておくこともできない。

すると急に飽きたのか、そのまま捨てるようにおもちゃを投げ出して帰ってしまった。

娘はAちゃんが帰ってしまうことを寂しそうにしていた。


Aちゃんが帰宅した後の我が家で、「楽しかったね」と言いながら娘と片付けをした。

娘は「また遊びたいな」と言っていた。


その日の夜起こった意外なこと


とてつもなく長い1日が終了し、娘と布団に入る。
娘は「ママ今日は掃除とかありがとう。優しくしてくれてありがとう。」と言って嗚咽が漏れるほど泣いた。

Aちゃんと遊ぶことを楽しみにして、帰る時も名残惜しそうにしていたことから、Aちゃんの振る舞いが嫌で泣いているのではないと思った。

おそらく娘は私に罪悪感を感じて泣いていた。

Aちゃんに振り回される私を見て、申し訳ない気持ちになってしまった。
いや、私がそう思わせてしまったのだと感じた。

本当は娘もAちゃんのように自由奔放に振る舞いたいが、私の顔色を見て、それをしないように娘なりに気をつけて生活をしているのではないか。

Aちゃんの振る舞いは娘とあまりに違って私にはついていけなかったが、それは娘がいい子だからではなく、私が娘に”いい子”を押し付けているだけなのではないか。

私がAちゃんにばかり気を取られている中、娘はAちゃんと遊べて嬉しい気持ちと、私を困らせてしまうことの間で思い悩んでいたのではないだろうか。


Aちゃんの行いだって、まだ幼い子どもなのだからいろんなものに興味を持つし、道具だって決められた方法ではなくて自分で「楽しそう」と考えた方法で使いたい。体力もあるから走り回りたいし、そこに白い壁があれば赤く塗ってみたい。
そんな好奇心の塊なのである。

それは本来尊重されるべきことで、誰にも邪魔されるべきではない。

それを頭ではわかっていながらも、つい自分の身の回りで起きると制限をかけてしまう。


しつけと押し付けは紙一重である。
親の捉え方や子の特性によっても違う。


Aちゃんのご両親も、決して放任主義ではないだろう。
Aちゃんの兄弟は皆後片付けもきちんと行い、道具も丁寧に扱っている。(人の家庭のことなので言えることではないが)

こういう話をすると、Aちゃんの発達に問題があるのでは?という人がいるが、それを私が予想したところでなんの意味もない。
私にとっては娘の友達であり、預かっている時は保護対象であることに変わりない。



私に言えることは、Aちゃんの訪問を経て、もう少し子どもの自主性を重んじてみようと思った。


しかし、家主としてはしばらく遊びに来るのは控えてもらえるとありがたい。本音を言えばもうその日がこないでほしいと思ってしまう。
大人気ない私を許してほしい。


しかしAちゃんのご家族も大変なようで、できるだけ家にいないように友達の家に遊びに行かせたり、家庭保育できる環境でありながら児童クラブに預けているという。

それだけパワーのある子なのだ。


ここまで書いて少し気持ちを整理できた。
また今日から親を頑張ろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?