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デアゴスティーニで気づいた苦手

「たのしいムーミンキルト」というデアゴスティーニを買った。
みんなデアゴスティーニという言葉を一度は聞いたことがあるでしょう。
創刊号が約500円ととても安く次の号から3倍くらいの値段になる、あれだ。
私は無類のムーミン好きだ。手帳もスマホの待ち受けも、家で使っている食器もムーミンだ。なんとなく刺繍もやってみたかったので本屋に寄ったときに買った。だけど私は手芸が苦手だ。どのくらい苦手かというと、ボタンが外れた服をそのまま着るくらい苦手だ。そしてそのボタンはしばらく棚の上なんかに放っておいて、そしておもむろに捨てる。後悔は全くない。なので刺繍が到底自分にできるとは思わなかった。刺繍ってちまちましていて、時間をかけて、失敗したら一度糸を外して、新しい糸と交換して...。
ああっ!面倒臭い!!私は小学生のころ、母親に「手芸をやる際は始めるときと終わったときに必ず針の数を確認して、1本も無くなってないかどうか確かめるんだよ。」と言われていた。そんな面倒なことしたくない。私が使う針は1本なのに。ミシンのようにダダダっと一瞬で終わるものは好きだ。私は過程を楽しむタイプの人間ではないと思う。終わった後の爽快感、達成感が欲しいんだ。でもまあ、まだまだステイホーム続きますし?やらないこともないかなあと思い、ムーミンキルトに手を出した。
 1日目、針に刺繍糸が通らない。「上手くできない人は糸通しを使おう!」と書いてあったが、そもそも糸通しを持っていないので早速詰んだ。15分格闘してやっと通った。その後、説明書をじっくり読んだ。書いてある言葉がいまいちわからない。「そのまま繰り返してください。」とよく出てくるが、まずそこまでできていないので繰り返せない。わからないところはyoutubeのリンクに飛んで動画を見る。そこでやっと少し理解できる。
「なるほどね〜。」と一人で何度も呟きながら少しずつ進める。刺繍は目や身体が疲れてしまうので一気にやってはいけないのか、「ここで休憩しましょう」マークがたびたびページに出てくる。私はその結構手前で作業を辞めた。「どうしよう、続かないかもしれない。」と不安になった。

 2日目、気が重いが昨日のやりかけがそのまま机に乗っているので、渋々向き合う。とりあえずフェルトにプリントされたムーミンの縁をひたすら縫っていく。気が遠くなる作業だ...。でもふとしたときに無心になれている自分がいる。難関、ムーミンの耳!!角を縫うのは難しいのだ。説明書を読む、動画をじっくり観察する。そうすると、一応耳は通り越した。そのとき脳がフアァッ!となった。縫い方の法則というか、やり方が理解できた!!
ドーパミンがドクドク出ている感じがした。たのしい!刺繍ってたのしい!!自分は手芸もいけるのだな...。とこれだけで達成感を得た。我ながら単純である。

 私は好奇心旺盛な方でいろんなものに手を出す。ブログもそうだし、ギター、ピアノ、作曲、プログラミング、料理、ヨガ、等々。なんとなく、ちょっとずつできるのだ。何かを極めたことはないが、割と幅広くできることが多い。その理由として、私は説明書や教本をしっかり読み込むタイプの人間だということがある。家具を組み立てるとき、家電にスイッチを入れるとき、私は絶対に付属の説明書を読む。楽器などのその他の趣味を始めるときも絶対に「はじめに」みたいなものを飛ばさないし、レッスン1から徐々に始める。今はネット上でレッスン動画があったりわからないところをググってやる、みたいな方法もあるが、私は必ず本を買って理論的なものを一度理解してから挑む。なのでイメージトレーニングは何度もやる。これがこうでああだから、こうしたらこうなるであろう...みたいなことを考えてからやるということ。

 だから私はできなくて困ってる人の気持ちがわからないことが多い。
「私これができないのよ〜。辛いのよ〜。」
「ハッ⁉︎ググれ。そして、やれ。」
と思ってしまう。情けない話だが。本当に大人気ない人間だと思う。
私は今まで人に物を教える立場から逃げてきた。
ムリムリ。気持ちに全く寄り添えない。
そもそも後輩的な人がいない。ただの年下の友達。年下の同僚。姉御肌という言葉から一番遠い人間a.k.a半人前。
これは私が割となんでもやったらできてしまうということもあるのだが、自己肯定感が圧倒的に低いのも関係している。
「こんなポンコツな自分でもできたのだから、相手はできて当然だろう?」と思ってしまう。
これは友人のkにも共感された。彼も自己肯定感がめちゃくちゃ低い。
「なんで俺みたいなクズでもできるのに、こいつできんのやろって思ってしまう。」
彼は大学の軽音楽サークルで一緒だった。彼も後輩と仲良いが彼が後輩に何かを教えているのを見たことがない。
楽器を始めたばかりの後輩によく聞かれるのが、
「どうやったらギター上手くなれますか?」だ。
これの回答は「ひたすら練習するのみ。」
もっと詳しくと言われるので「耳コピとかしたらいいよ。」と答える。
耳コピってどうやるんですか?と聞かれると、
「コピーしたい音を聞いて、そこを探して弾く。」と答える。
多分相手が求めているのはそんな答えじゃない。
それはわかっている。
モチベーションとか、共感とか、裏ワザとかを知りたいのだろう?
それをどうにかしてうまーく求めてることを言ってやりたい。
でもさらに愚かな私はプライドも高いので優しく言えないのだ。
「毎日30分でいいからギターを触りなさい。」などと言ってしまう。
思い返すと自分でも呆れます。ごめんなさい。
自分なんかが先輩面していいんですか?という思いもあります。

 こんなことが原因で最近起こしたやらかしエピソードを聞いてください。

 私は12月に転職して今の職場にきた。まだ入って3ヶ月経っていない試用期間なのに、上司と他の社員と自分の意志の3つに挟まれて非常に苦しい思いをしている。
私は営業の仕事をしている。といっても自ら売り込むタイプの営業職ではなくて、クライアントとのやり取りをするポジションだ。クライアントが「この商品どうでしょう?」と持ってきて、その商品の説明を聞き、売れそうかどうか判断する。良い話だと思えば上司の許可を取って契約する。そしてその商品を実際に扱う社員に、商品の説明をする。
基本的には私が判断して、上司が決済印を押して完結するやり取りなのだが、そこに商品を扱う社員の気持ちも入ってくる。
販売する社員は基本的に商品が増えることを嫌がる。覚えるのが大変&ミスが怖いからだ。
今ウチの職場は人手不足で、一人でレジに立つことも多い。一人でいるときに新しい商品を扱ってミスが起きるのを防ぎたい。
その気持ちもよくわかるのだが、そもそもコロナの大打撃を受けて赤字経営。売上を伸ばして回復しないと人件費が確保できない。だから私は良い商品はバンバン入れたい。上司にもそのことは伝えていて、上司も経営のことを考えると私と同じ考えだ。だが勝手に商品を増やすと現場から不満が出る。商品を増やしたときは全員にメールで報告&取り扱いマニュアルを用意して渡してある。でもそれでは納得しない。上司は
「分厚いマニュアル渡されても人は読まんよ。あんたが教えにゃ。」と言う。
はて?私はマニュアルを渡されたら隈なく読む人間なので「なんでやねん!読めよ!!」と思ってしまう。

こういう前提があり、事件は起きた。
年度末なので次年度も商品の契約を継続するかの連絡が毎日入ってくる。
中にはグレードアップしたものもあり、さらにこっちもどうっすか?と提案される。
いい話なのでぜひ契約したい私。
決済印を押すだけなので、ええやん?という上司。
「この商品ちょっと扱いに困るのよねえ…」と言う販売担当の社員。

「どういうところが大変ですか?ヒアリングさせてください!」と言う私。
理由を聞いた後、「マニュアルの◯ページに書いてありますよ!付箋貼っときます!」と言う私。
「半人前さんが契約するなら販売しますよ。忙しくなってミス起きても知らんけど。」と言われ、私はキレた。
「じゃあ契約辞めまーす!!」と言って、上司に事情を説明し了承を得た。
すると、
「私のせいで契約辞めるみたいな、そんな…」と言って、販売担当の社員を泣かせてしまった。
自分よりも20歳も上の人を泣かせた。
最低だ。でもそのときの私の気持ちは
「じゃあどっち選んでも文句あるっちゅーことやないか!」である。 

大人気ないので今は非常に反省している。
私は人の気持ちがわからないイカれ論破女だと自覚があります。

落ち着いた今考えるなら、相手の気持ちに寄り添うことが大事だった。
「そうですよね、不安ですよね。私もミスするかもしれないです。なので今回契約辞めたいなって思うんですけどどうですか?」
そう言えばよかった。

この職場に来て、私は学ぶことがたくさんある。久々の営業職だし、全く今までとは違う業種だし。書いたことない契約書やプレゼン。出勤したら毎朝大量のFAXとメールに目を通して1日のスケジュールを考え、なんとか定時に終わらせている。心が死んでいく…と感じることもある。

 私がここで一番学ばなければいけないことは、「人に寄り添う気持ち」だと思う。
可愛げもなければ、正論で戦うメリケンサックを常に付けている。
めちゃくちゃやる気のある人もいれば、テキトーに定時になるのを待つ人もいるのが会社である。
私は頑張れない人に「頑張れよおおお!」と飛びかかりたい気持ちでいるのを必死に押さえている。それは「自分が頑張っている(頑張った気でいる)のに不公平だ。」と思うからである。
何か人には頑張れない理由があるのかもしれないし、頑張ってもできないことがあるんだろう。
それを理解できないのは、マジで私の心が死んでいると思う。
できる限り寄り添う力を身につけないと、そのうち私は淘汰される存在になる。

武装しているだけで、私は本当はポンコツな人間なのだから。
そのポンコツさを全面に出して、一緒にぬるっと働く時間も必要だと思った。

とりあえず、ゆっくり休んで明日も出勤だ。
朝来たら、FAX用紙をムシャムシャ食べるくらいのことはしておこうか。
「わ〜!FAXのインクってこんな味なんですね!」
和むかな。

引かれるか!

そういうとこだぞ、半人前。

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