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「最近の若いやつらが何考えてるのかよく分からん」おじさん社員にオススメしたい一冊。通勤時間とかでサクッと読むのにいいよ

おじさんが「最近の若者は〜」と会話しているのをよく耳にします。と思えば、ニュースでも「最近の若者の○○離れが……」と話題に……。
なんだか分からないけれど、若者としての価値観のもとで生活をすることは、さも損しているのだと言われているような気持ちになってしまいます。

自分が若者としての生活を(無意識のうちに)選択し生活することは、何も悪いことではないと思います。後ろめたさは何もありません。ですが、ぼくはこの4月からサラリーマンとして社会人生活をスタートさせました。
このタイミングで、自分の”若者”としての側面を客観的に捉えておくことは、上司やお客さんとのコミュニケーションを円滑にすすめるために必要でしょう。

そんな経緯で『若者離れ 電通が考える未来のためのコミュニケーション術』を手にとりました。
2016年出版の書籍だけれど、2020年の今でも活かせる内容が多いと思います。

本著はきっと、「若手の考えていることをもっと理解したい」「若者と一緒にさらなる価値を生み出したい」と考えている世のおじさんたちにとっても、ちょっとしたヒントを与えてくれるはず。

若者が(時に無意識のうちに)考えていること

では、まずそもそも「若者」とはどんな人たちなのか。本書では、アンケートをもとに若者を10種類に分け、それぞれを簡単に紹介しています。

紹介されている分類の例としては以下のとおり。

自己プロデュースキャラ
・「発信する意欲」と「見られている意識」の両方をもっている
・上昇志向が強い
・タグ付けをされるよりもする方が多い
正解探しさん
・「相手からどう思われているか」を気にしてしまう
・世の中的にど真ん中のものに安心感を覚える
・自分の意見を言うが、実は不安でしかたがない
大衆キャラ
・”普通”の人たち
・自分が得た情報をネット上でシェアすることは少ない
・SNSやネットは最低限の範囲で活用する

本書によれば、若者の行動は、SNSなどの普及を背景に「他者からどのように見られているのか」が行動を決める上でとても大きな要因となっているそうです。

そして後半部分では、なぜこのような若者が世の中に出てきたのか、「身の丈志向」「競争より協調」「正解志向」の3つのキーワードをもとに解説されています。
よく「いまの若者は○○を知らないなんてかわいそう」とぼやくおじさんがいますね。ですが内閣府の調査によって、現在の生活への満足度については、全世代の中で20代の満足度がもっとも高いことがわかっています。そんな若者たちを理解するために必要な知識をざっくりと理解することができるでしょう。

個人的には、もはや量において主役でなくなった若者が何かから離れているのではなく、社会における量の主役である高齢者などが若者から離れていく、いわば「社会の若者離れ」が起きている、とする指摘はとてもおもしろかったです。

若者とのコミュニケーションで必要なこと

では若者のことをある程度理解できたところで、そんな若者たちとよりよいコミュニケーションをとるために、おじさんが意識しなければいけないことは何なのでしょうか?

本書の内容を大きくまとめてしまうと、「若者の本質的な欲求を知り、それをゆるく肯定すること」です。
というのも、実際に表面上見えている行動を理解するためには、それを支えている本質的欲求と環境要因を理解しなければいけません。

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そして、その「本当に求めていること」を理解するために、いまの若者たちは「自分の”幸せ”は、自分で定義しなければいけない」時代に生きていることを知る必要があります。

80年代以前は、西洋から輸入したライフスタイルへの憧れを実現化すること(=帰属意識)が幸せだった(だろう)し、90年代は世界有数の経済大国として、人と違うモノを手に入れること(=優越感)が幸せだった(だろう)。

昔は”幸せのものさし”を、誰かが提案してくれました。だけどいまは違います。国境や言語の絶対的な壁が、テクノロジーの進化を受けて次々と崩壊していく時代です。それに合わせて「前例」や「一般論」、「常識」も形骸化し、どれだけ周りを見ても「自分の幸せ」を見つけることができなくなっています。
そんな中で若者は「自分らしさ」を見つけるために努力し、自分なりの”幸せ”を築こうをもがいているのです。(言われてみたら、確かにそうだ、と思った。)

こうした時代背景や育ってきた環境による「大人と若者の違い」を理解したうえで、そのズレを楽しんだり愛したりすることが、コミュニケーションの最初の段階で必要です(本書内では、そのズレを愛するために必要な5つの姿勢も実際に紹介されています)。
そうして初めて若者の欲求と向き合うことができ、その先の、若者を動かしたり、変わってもらったりすることにつなげることができるでしょう。


いま若者であるぼくにとって、どんな環境要因を受けて自分の思考がカタチ作られていったのかを知ることがここまでおもしろいとは思いませんでした。
感覚としてしか認識できなかった自分のココロを、言葉で理解できたので、これからはいろいろな場面でこの知識を活かせそうな気がします。

すらすら読める一冊なので、通勤・退勤途中やお昼休憩でサクッと読めます。
最後に備忘録もかねて、将来の自分にとって特に必要な部分を抜き出しておきます。

情報洪水のなかを泳ぎながら日々過ごしてきた彼ら(若者)は、ほとんどの情報やコミュニケーションを「自分には関係ない他人ゴト」してスルーする能力をもっています。それは、広告であれ、経済ニュースであれ、親の小言であれ、世の中に飛び交う情報すべてを「I(英語のアイ)」の部分で「私ゴト」として受け取っていては疲れ切ってしまうほど、あまりに光(=情報やコミュニケーションの洪水)が強いからです。
[中略]
決して悪気があってスルーしているのではなく、これは若者たちが成長過程で身に着けた世の中との距離の取り方なのです。しかも悪気がないぶん、「もっと本気で聞きなさい!」などと注意したり傾聴を促したところで、あまり効果がないのも特徴です。

これを義務教育で教えれば、若者とのコミュニケーションでつい怒鳴ってしまうおじさんを撲滅できるのではないでしょうか。


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