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服装とジェンダー2

ファッションを楽しむことに女性も男性も関係無いはずだけど、現代はまだ「難易度」に差があるよね、という話。それにマニッシュファッションと男装の違いについて思うこと。現状認識の回。

1.女性が男性的な服を着る

昨今、女性のメンズライクなファッションはかなり好意的に受け止められている。ココ・シャネルによるコルセットからの解放、イヴ・サン・ローランによる女性物パンツスーツの提案に基礎固めされた「マニッシュファッション」の枠はジェンダーレスに好意的な世相を受けてレイドマジョリティ~ラガード層へも急拡大したように感じる。

・フェミニンなブランドがセットアップスーツを発表する

・メンズライクを売りにしたモデルが頻出

・「女性のためのメンズスーツ」という提案

・オフィス服でも男女の垣根を無くそうという取り組み

なるほど女性が男性的な格好をするのは最早普通のことになりつつあるらしい。

では逆はどうだろうか?男性は女性的な格好を気軽に楽しめるだろうか?

2.男性が女性的な服を着る

古くは古代エジプトから、有名なものではスコットランドのキルトのように、スカートが本来男女共有の衣服であったことは有名だ。男性服の世界でも何度かユニセックスのムーブメントがあったようだが、あまり女性的な服を着る風習は定着していないように思う。それは何故か?という話は服飾史研究に譲るとして、男性は女性ほど気軽に異性性を感じさせる服を着られないようだ。

個人談になってしまって申し訳ないが、数ヶ月前に彼氏と服屋にロングTシャツを見に行った。メンズのロングTシャツだ。着丈は推定118㎝ほどで、ぱっと見ロングワンピースだが、広がらずにストンと落ちる形。黒をベースにサイケデリックなイラストが施され、なるほどこれなら男性でも着用しやすいデザインだなと感じた。それでも試着をした彼は「女性っぽい」と照れて購入には至らなかった。ショップの店員さんも勧めてはいたが同じような反応。これだけ男性っぽさを押し出したデザインであっても、スカートという一つの女性要素が男性にはネックになるのだと軽い衝撃を受けた。

昨今のジェンダーレスブームは勿論男性にも波及しており、ランウェイでは男性のスカートなんて当たり前。フリルやリボンをふんだんにあしらったデザインもよく見かける。でもそれは、「そこがファッションの楽しむ場」であり「敢えて女性性を押し出した感度の高いファッションをしている」んだと観客全員が認識出来るからこそ成立するのではないか。そういうことはよくある。コレクションに出てくるような奇抜なファッションを街中でそのまま取り入れることは難しい。でも女性のメンズスタイルに比べて男性のレディーススタイルは何と難しい事か。

男性がひとたび街中でスカートを履いて出掛けようものなら、少なくとも私の住む田舎では奇異の目で見られること請け合いである。

この様に異性装に対する「難易度の差」といったものは未だ大きく存在しているように思う。

そしてそれは同時にジェンダーの表明の難しさにも繋がってくるのではないかと考えた。

3.MtF(トランスジェンダー女性)の女性装

MtF、つまり生まれ持った身体は男性だが性自認が女性の場合。

MtF女性は比較的ジェンダーの表明が容易な様に思われる。一般男性が女性的な服を取り入れる事の難しさが、逆にMtF女性の性表明をベクトルの大きいものにしているからだ。男性が髪を伸ばしてメイクを施し、淡い色のスカートや鮮やかな色のヒール靴を履く。これは強烈なジェンダーの表明だ。たとえ趣味嗜好で上記のようなファッションを楽しんでいたとしてでも、世間はそうは見ない。これは強烈な個性となりえる。

女性的なファッションは足し算の要素が強いように思う。ヘアアレンジを「足し」、メイクを「足し」、色を「足す」。無に有を足すという行為は意識的なもので、社会は服を通した意思表明を無意識に感じ取る。

MtF女性はそれ故に服に悩むということもあるだろう。何か女性的な物を「敢えて足した」という意思決定を周囲は敏感に感じ取ってしまうから。しかし「自分は女性だ」と周囲に理解させることそれ自体は比較的容易ではというのが私の考えだ。

4.FtM(トランスジェンダー男性)の男性装

FtM、つまり生まれ持った身体は女性だが性自認が男性の場合。

FtM男性はことにジェンダーの表明が難しいように思う。ショートヘアにノーメイク、渋い色使いの服を着たからといって、そんな「ボーイッシュな女性」はたくさん居るからだ。

女性的なファッションが足し算なら、男性的なファッションは引き算だ。髪を伸ばさ「ない」、メイクを「しない」、胸を「潰す」。女性的な要素を足さなかったからといって、それがイコール「男性的」とは見られない。

もちろんそれ故に気軽にメンズスタイルを楽しむFtM男性も多い事と思うが、一目見て「あの人は男性だ」と思わせることの難しさはMtFのそれとは比べものにならないと思う。

5.男装とマニッシュファッション

トランスジェンダーでは無い私がそのファッションについて言及することに大きなお世話だと思われた方も多いだろうが、それに触れたのはひとえに「男装」と「マニッシュファッション」の違いについて述べたかったからだ。(私自身がトランスジェンダーでは無い故に、認識に違いがございましたら申し訳御座いません。)

男装とマニッシュファッションについて、それぞれwikiとfashion pressの定義を載せておく。

男装とは、それぞれの文化によって「男性用」と規定されている衣装・装飾品を身につけることで、一般には女性の異性装であるとされる。(Wikiより)
マニッシュとは「男性のような」の意。マスキュリンと同義。女性が男性的な装いをするスタイル。 テーラード・スーツなどを着ることで、逆に女性らしさを強調する点も意図されている。(fashion pressより)

そう、男装とマニッシュファッションは似ているようで違う。男装とは「メンズ」として売られているものを着用しているか、あるいは装いによって女性を男性のように見せたい意図がある。上記で言うところのFtM男性が目指すところはこちらだと思う。

対してマニッシュファッションとは男性的な要素のあるファッションをすることでより女性性を強調させる(あるいは自分を魅力的に見せたい)意図がある。

私の目指すところは後者なのだが、前回のnoteに挙げたようにどうやら稀に前者だと思われているらしい、という事がこのnoteを作成するきっかけになった。

原因~改善策~意識の変化は次回以降のnoteで。

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