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大海原を「自律航行」してみた!

船の自律航行とその難しさ

制御技術の進歩に伴って、自動車をはじめ鉄道や飛行機などモビリティ業界の至る所で、自動運転技術の開発が活発になっとる。そして、陸や空だけやなくて、海のモビリティすなわち「船の自律航行」の実現に向けた取り組みも盛んに行われとる。

でも船の自律化は技術的にかなり難しいねんて。その理由の1つが「何もない海にどう”白線”を引くか」らしい。車の自動運転であれば、基本的に道に白線が引いてあって、どのへんを走ればええか見当が付きやすい。確かに海にも港の中など輻輳(ふくそう)海域と呼ばれるエリアには航路が決められてる。せやけど、大海原に出てまうと“道”はなくなって、どこを走ってもよくなる。つまり、目的地に加えて地形や海流、さらには他の船との位置関係なども踏まえたルート設定を自力でせんとあかん難しさがある。

また「”ガッタガタ”の海をどう乗りこなすか」って難しさもある。車には道路、鉄道には線路といったように、走りやすい環境が整っている。しかし、船にはそれがない。さらに、波・海流・風といった激しい外乱に晒されながら走らなあかん。ガタガタの道で車を運転してるとハンドル取られそうになって不安になるときがあるけど、海ではそれと常に闘わなあかんくなる。

ここではそんな高難度ミッションに挑んだ例を2つ紹介します~

日本近海の「渋滞」をくぐり抜けてみた!

日本近海は大型の外航貨物船から小型の漁船まで多種多様な船舶が密集する世界有数の“輻輳海域”として知られとる。なかでも、東京湾は1日に平均して500隻以上もの船が行き来する海上交通の難所である。その東京湾から伊勢湾にかけて、内航コンテナ船の自動運航を行うという前代未聞の実験が2022年2月末から3月にかけて行われた!

これは日本財団が2025年までに無人運航船を実用化することを目標に掲げて行うプロジェクト「MEGURI2040」の一環で、2020年2月から総額約74億円の支援を受けて実験を行ってきはった。今回の実験は、日本郵船グループの日本海洋科学を代表に、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)、NTTドコモ、東京海上日動など約30社が参画する「DFFAS(Designing the Future of Full Autonomous Ship)」コンソーシアムによって行われた。

彼らは、自律機能を持つ船舶側システムに加え、遠隔操船機能・機関異常予知機能を含めて陸上から船舶を監視・支援する陸上側システムや、船陸間の安定した情報通信維持を司る通信システムで構成された包括的なシステム「DFFASシステム」を整備しはった。

実証実験では、この自律制御システムを搭載した内航コンテナ船「すざく」(749総トン)が、まず東京湾から浦賀水道を通って太平洋に出る、そして太平洋から伊良湖水道を通って伊勢湾に入ってくるという航海を行った。その結果、離岸操船、湾内航行、沿岸航行、着岸操船といった全てのシチュエーションで無人航行を成功させ、往復ともに無人航行率95%以上という高い成績を叩き出さはった!

船の自律航行には、既存の操船技術に加え、遠隔監視・遠隔操船といった新たな技術が必要になってくる。そのため、今後は船員養成の方法を検討していかなあかんらしい。また船を無人化するだけやなくて、自律船に対応した港湾設備などのインフラ整備も今後の課題やねんて。

1カ月かけて「太平洋横断」してみた!

さっきのはめっちゃ混んでるけど短めの航路の自律航行の例やった。一方で、韓国のヒュンダイは2022年5月1日から33日間かけて、大型商船に自律航行で太平洋を横断させることに成功しはった!

ヒュンダイは海洋環境における自律航行の課題に対処するため、2020年12月に子会社Avikusを設立しはった。そして、彼らは天気や波の高さ、近くの船などを認識するように訓練されたAIを使用した自律制御システム「HiNAS2.0」を開発しはった。

実証実験では、この自律制御システムを搭載した18万㎡クラスの超大型LNG船「PRISMCourage」が、メキシコ湾沖のフリーポートから航海を開始し、パナマ運河を通過した後、33日間で約10,800海里(2万km:地球半周)という長い航海を終えて、韓国の保寧LNG基地に到着した!航行距離の約半分で自律航行が行われ、その間に遭遇した多くの船に対して回避行動を取ることで、約100回の衝突を回避することに成功しはった。さらに、ルートの最適化を行ったことで、温室効果ガスの排出量を約5%削減しながら、燃料効率を7%向上させて航海を完了することにも成功したんやって!

近々、無人で太平洋を横断できる日が来るかもしれんね。そしたら、1962年に日本人として初めて小型ヨットの太平洋単独無寄港横断に成功した堀江謙一さんにその姿を見てもらって、何を想うか聞いてみたいな。ちなみに、堀江さんは今年3月にカリフォルニアを出発、6月4日に和歌山県に到着して、世界最高齢(83歳)での単独無寄港太平洋横断を達成してはる!おめでとうございます!!

今後の技術開発に期待!

自律航行技術は、海運業界の労働力不足を解消し、汚染物質を削減し、人為的ミスの可能性を完全に排除することで安全性も向上できる技術として注目されとる。その証拠に、世界的な市場調査会社であるAcuteMarketReportsによると、自律航海船および関連機器市場は、平均年率12.6%で成長し、2028年には2,357億米ドルに達すると予想されてる。世界の海上移動を日本や韓国がリードしていけるといいね!

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