見出し画像

コンニャクで大量の水つくってみた

日本では「飲み水に困る」ということはあんまり考えられへん。せやけど、世界では水不足が深刻化している。国連人口基金の「世界人口白書2021」によると、世界人口の40%以上にあたる36億人が水不足に悩まされてるらしい。この状況が続けば、2050年には約97億人になる世界人口のうち、約半数が水不足にさらされ、4人に1人は慢性的な水不足の影響を受けると予測されてる。

近年の浄水技術の進歩によって、海水や汚染水から飲み水を得る方法が確立されつつある。せやけど、浄水技術は砂漠地帯のようにそもそも水源があらへん地域には適してへんことから、全く別の切り口から飲み水を確保する方法が求められている。

そこで、テキサス大学の研究チームは、食物繊維セルロースとコンニャクの主成分であるグルコマンナンから、大気中から水分をめちゃめちゃ集めるフィルムを開発しはった!

開発された吸湿フィルム/ Credit: Y. Guo et al., "Scalable super hygroscopic polymer films for sustainable moisture harvesting in arid environments", nature communications, 2022

コンニャクの成分は約97%が水分で、それを除くと主成分は「グルコマンナン」という水溶性食物繊維となっている。このグルコマンナンは水に触れると粘り気のあるゲルをつくり、大きく膨張するという性質がある。そのため、グルコマンナンを摂取すると、食品に含まれる水分を吸って胃の中で何十倍にも膨張するという働きがあり、ダイエット食品として市販されてたりする。

研究チームが開発した「高吸湿性ポリマーフィルム」の構造は、グルコマンナンでできたコンニャクガムとよばれる多孔質になっており、そこで大量の水分を捕らえることができる。また、そこに熱に反応して水をはじく性質(疎水性)を発揮するセルロースを混ぜ込むことで、集めた水を簡単かつ低エネルギーで取り出すことができる仕組みになってるらしい!

このシステムの最大の魅力はその「製造コストの低さ」にある。そもそも材料は食物繊維とコンニャク成分やからめっちゃ安い。そして、作り方も「材料を混ぜて型に流し込んでから乾燥させるだけ」といたってシンプル。材料さえあれば家庭でも作れるくらい簡単らしい。

材料を混ぜて型に流し込んでから乾燥させるだけで作れる/ Credit: Y. Guo et al., "Scalable super hygroscopic polymer films for sustainable moisture harvesting in arid environments", nature communications, 2022

さらに、こいつの吸湿能力はかなり強力で、実証実験によって、フィルム1kgあたり相対湿度15%未満の乾燥した地域でも1日6L、30%ある地域ではなんと13Lもの水を生成することができることが確認された!

実験装置の概略図/ Credit: Y. Guo et al., "Scalable super hygroscopic polymer films for sustainable moisture harvesting in arid environments", nature communications, 2022

この研究はアメリカ国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)の資金提供を受けて行われており、乾燥地域で活動する兵士に安定的に水を供給することを主眼としている。そんな大層な背景とは裏腹に、めちゃめちゃシンプルな技術やから、近い将来ホームセンターで市販されててもおかしくないと思う。水不足に悩む多くの人々に新たな「マンナンライフ」を提案するおもろい研究でした!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?