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朝、くもりガラス

朝起きると、布団の外はもう、少しだけひんやりしていて、ああもうこんな季節なのかと新しい空気を吸い込む。

季節が変わろうとしていても相変わらず朝は苦手で、重い腰を上げて少しだけベッドに腰掛ける。ぎゅっと目をつぶってから、ゆっくりと目を開ける。
肌を十分に空気に触れさせると、体の細胞たちが起きてくる。

熱いハーブティーが飲みたくなって、ヤカンでお湯をわかす。
シュー...とコンロの音がする。
電気のない朝の部屋では、窓のくもりガラスから差し込む日の光だけがほんのりと手元を照らしてくれる。

少し前までカーテンで覆われていた台所の窓は、ここのところずっとガラスがむき出し状態で、向こう側に人がいれば、そのシルエットが揺れ動く。
きっと向こうからもこちらがぼんやりと見えているのだろうけど、誰かと、何かと、お互いの纏う空気の交換をしているようで、そんな一瞬が嫌いじゃない。

朝の窓は、向こうがわからかすかに誰かの気配だけが透過してやってくる。

カタカタカタ...ヤカンの音が変わって湯気があがると、くもりガラスのもやが、心無しか揺れ動く。

これが見えたら、いい朝のはじまりを知らせる合図。

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