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列伝 その1〜J.J.Johnson

ジャズ・トロンボニストのなかでも燦然と輝くレジェンド、ジェイジェイジョンソン。

みなさん、J.J.のこと好き?
嫌いな人も、むしろ大好きな人もいるでしょうね。

わたし個人のJ. J. Johnson観は、何周か「好き」と「嫌い」を行ったり来たりした挙げ句、今では「尊敬しかない」に落ち着いています。
(長くジャズに親しんでいると、結局そうなる)

ちなみにCecil McBeeというジャズ・ベーシストの名前を勝手にアパレルブランドにしたという事件がありましたが、では雑誌「JJ」と氏との関係は…
JJ=「女性自身」のイニシャルだそうでJ.J.Johnsonとは関係ないようです。
(ちなみに、Ronnie Scottというブランドもあるんですね!)

スタイル

J.J.のプレイスタイル。
とにかくテクニシャンなんですけれども、ただ、そのテクニックは単純なピロピロフレーズに留まらない部分があります。

バップ期には活躍したトロンボーン奏者は少ないのですが、その前のスウィング〜中間派時代にはトロンボーンはまずまず居るし、みんな結構上手い。

ではJ.J.の「うまさ」は何か?

楽器のうまさ

ストレートが強い。とにかく音が硬くてぶっとい。
車でいうと、大排気量のエンジンを積んだ車みたい。
最高速も速く、トルクが太い。
音色はあくまでストレートで、硬く強い音。

いわゆる技巧派といわれるトロンボーンの多くが、そこそこの音量でテクニカルなフレーズを吹く感じだとすると、ジェイジェイはその真逆。
息のスピードが速く、音がガツンと硬いイメージ。
マリオカートでいうと「クッパやドンキーコング」のタイプです。
スラスラ系テクニシャンの筆頭Carl Fontanaと対比すると明確です。

で、J.J.のすごさは、クッパなのにコーナリングもうまいところやねんな。
すごいスピードはでるのに、ギュッとブレーキが踏めて、鋭角のコーナリングもできる。

Carl Fontanaが明朝体。一方J.J.は完全に太ゴチック。
野球なら、Fontanaが絶妙なコントロールでボールを投げ分けてストラックアウトを自由自在にコントロールする感じだとしたら、J.J.は豪速球で、ストラックアウトの板ごと破壊する(けどストライクゾーンには入ってる)感じ。

録音では迫力は伝わりにくいが、生で聴いたら存在感に圧倒されたんじゃないか…と思う。知らんけど。

インディアナポリスのなぞ

J.J.Johnsonはインディアナポリス出身。
同じくインディアナポリス出身のミュージシャンにはFreddie Hubbardがいます。氏も、艶のある豊かな音量を息のスピードで曲げてフレージングしてゆくタイプ。
音の出し方にはそこはかとなく共通点があります。
インディアナポリスには、一体何があるんでしょうかね。
土地柄?

おすすめプレイリスト:

Dial J.J. 5より Teapot

激速の曲を激速で突っ走る。タンギング強い。音が力強い。
私は最終的にJ.J.の力強いフレージングはフィジカル的にあわず、Carl Fontanaの高速フレージングが好きな軟投派になっちゃいましたが、強い矢のような演奏に憧れます。

Woody Shaw "Cape Verdean Blues"より "Nutville"

これはWoody Shawのベストに入ってたので聴いてました。
Woody ShawはトロンボーンのSteve Turreと何枚か共演していますが、それに比べてもJ. J. Johnsonのキレが際立つ一作です。
Steve Turreも好きなトロンボーンなんですけどね。
それにしてもJ.J.すごい。

J.J.らしさを紹介するとどうしてもチョッ速の曲ばっかりになってしまうんですけど。


J.J. Johnson "Proof Positive"より ”Minor Blues”

これはややゆったり目のマイナー・ブルース。
前半のシャウト気味のフレージングが、J.J.らしさ。
かと思ったら後半はリズムが倍テンしてピロピロする。

ただ、サックスなどのスケールフレージングとは違って、倍テンの部分も、トロンボーンらしいアルペジオや跳躍、高音吹き伸ばし「ドーン!」。
要するに、非常にトロンボーンらしいんですよね。
正拳突き!!!って感じが小気味よい。

Stan Getz and J.J.Johnson at the Opera Houseより"Billies' Bounce"

軽やかピロピロサックスのスタン・ゲッツ。
正直トロンボーンでこのタイプに対峙するのはいやなもんです。
(Stan Getz at the Shrineでは Bob Brookmeyerが相方ですが、ブルックマイヤーはゲッツの速さに対抗せず受け流すプレイに徹しています)

この時のJ.J.は、まけずに軽やかに演奏して対抗。
正拳直突き!みたいな部分より、強めのジャブを打つような感じで、ゲッツのスタイルに合わせているように思える。

このBillies Bounceは割と長尺のFブルースで、トランスクライブの初級編としていいんじゃないでしょうか?もちろん弾きこなすには楽器の技量が必要ですが、割にわかりやすいソロを吹いているとは思う。

おまけ

Apple Musicでのプレイリストも上げておきます。上述の4つに加えて、トランスクライブしやすそうなテイクを少し増やしています(プレイリストは場合によって曲を出し入れするかもしれません)

最後に:

J.J.Johnsonは、うまいし技巧もあるし、高音もでるし、やはりテクニック的にも素晴らしいプレイヤーです。
最初は細かいフレージングに気をとられがちだけど、J.J.の良さは、譜面上なんでもない吹き伸ばしの強さにある。なおかつ豪速球の割に細かいフレージングもできる。この背反性が素晴らしいところだと思います。

類まれなフィジカルから導き出される素晴らしい音が代えがたい魅力ではないでしょうか?ごちゃごちゃ細かいこともできるんだけど、ガツンとしたフレーズで場を圧倒するタイプ。

アメリカだったら、バスの一番うしろに座っているタイプ。
とにかく喧嘩が強いタイプと思われる。
腹に力を込めてガツッと正拳突きじゃ!


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