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おみくじ1〜100番まで作ってみた。

おみくじを作ってみたい、という漠然とした願望は昔から持っていたように思う。

ただ、それは例えば宝探しゲーム(指示をどこかに隠して最後にプレゼントにたどり着くようにする)を計画するとか、ダンボールで小さな家を作ったり、いろはカルタやオリジナルのマッチを作ってみたい、というのと同列の「ワクワクする遊び&モノづくり」の一つだった。

形に残っているものとして、最初におみくじ作りを実行したのは2004年あたり。イベント用(デザインフェスタや、手づくり市など)に、その辺にあるわら半紙に印刷した10種類ほどのもので、制作までの所要時間は1時間程度。ゆるくて雑なので「おみくじ」などと名乗ってはいけない内容だけど…

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その後も、「いつかちゃんとしたおみくじを作ってみたいし、それ以前に一度、お寺で引くおみくじの全種類を見てみたいんだけどどうしたらいいのかなぁ…わかんないなぁ」などとぼんやり思いながら年月が過ぎて行った。

転機が訪れたのは、2018年。その年の正月、兄が引いた凶のおみくじの挿絵があまりにも気になるものだったことから…まずは「おみくじについて調べる」ことに、やや本気を出してみた。

*このときの詳細(兄が引いた凶みくじの挿絵も)はこちらに…

調べた結果、おみくじについて詳しく書いてくださっている方のサイトを参考に国立国会図書館のデジタルコレクションにたどり着き、気になっていた種類のおみくじの本や同系統の資料などを見つけて、兄の引いたおみくじに似た絵も見つけることができたので、まとめて1〜100番までプリントアウトして見比べたりしながら、試しに10数種類だけ作ってみた。

といっても江戸期〜明治時代頃の資料の挿絵を参考に真似て描いただけなんだけど、昔の服装、装束や調度品を描くのや旧漢字など文字の打ち込みが大変なことを痛感。こりゃ大変だぁ、と。

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その後、古書店で入手した(明治時代に刊行された)みくじ本や国会図書館蔵のデジタルデータなどを参照しつつ、「昔風の絵で描くのは大変だから、自分なりに描きやすい絵にしよう」と、描き慣れたペンギンの「はにほさん」で制作。実際の「元三大師みくじ」では100首(100種類)あるところを、「いろはにほへと」にちなんで、いろは順に47番までにとどめたものの、根気がない自分にとっては結構大変だった。

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そうして出来上がった「はにほみくじ」はイベント出展時や自分の一坪の店で様々な方に引いていただいたり、たまに取引先にご挨拶に伺った折などに、名刺交換のついでに話のタネになればとお配りすることもあった。

ある時、友人二人と深大寺へ出かけておみくじを引いた時に、たまたま全員47番以内だったので、鞄に入れていた「はにほみくじ」の同じ番号のものとそれぞれ見比べて「ふむふむそういうことか…」となり、その時に友人が「おみくじ全種類の内容を解説した本を作って欲しい〜」と何気なく口にしたのがきっかけで、4ヶ月ほどかけて「(お寺などでよく目にする元三大師系の)おみくじ全種類を紹介&プチ解説をつけたZINEを作ったのだった。

その経緯はこちらに…

そして、ここから「今」の話。

両親の葬儀やその後の法要などでお世話になっている真言宗のお寺さん(元バーテンの、フリーランス僧侶の方)から、何度か「はにほみくじ」を分けて欲しいと声をかけていただいていて、でも「いや、ゆるい絵なのでお寺さんで扱っていただくのはちょっと…」とか「あれはイベントやお店で引いていただく関係で、内容はそのままで吉凶判断のうち凶だけは末吉などに変更しているので…」とか、「実際には100番あるのに、47番までしかないので…」などと、グダグタ言い訳をしている間に半年以上が経過。

自分が口にしたことは、そのまま「おみくじ作りが現時点では中途半端」だと自分に言い聞かせるもので、「やるならちゃんと100番まで作って凶もしっかり入れなければ、でも時間がないしどうしたものか…」というジレンマがあった。

そして昨年末、「おみくじ、やっぱり分けていただきたいんですけど」と言われた時、私はついに宣言した。「それでは、せっかくなので1から新たに作ります。今度はちゃんと100番まで作ってお届けします!」と。

実は以前、おみくじ関連のnoteをご覧になった別のお寺の方から同じように「おみくじ制作」のお声をかけていただいたものの、条件面やタイミングの関係などからお受けできなかったことがあって、その時の申し訳なさと残念さから、「お寺さんへ納品できる内容のおみくじを作る」ことを目指したのが、まず一点。

もう一つは、様々な方におみくじを引いていただく中で、「大吉かどうか」だけを気にされている方が多いような気がして、凶を引いた場合はがっかりして終わり(お寺だったら内容をじっくり読まずにそそくさと「結び処」へ直行するなど)だとしたらもったいないなぁ、と

大吉を引いたお客さんの笑顔を見ると、つい大吉を多めにみくじ箱の中に入れておきたい気分になるし、いっそ「大吉と吉」だけにしてしまいたくもなるのだけれど、でもそれは、何かが根本的に違うのではないか。

実際の人生には愉快で幸せなことだけではなく、ほろ苦く理不尽なこと悲しいこと、自分の力ではどうしようもないこと、取り返しのつかないことも多いので、凶を引いて「良くないお告げ」をどう受け止めるか何を参考にするかは、うまくいかない時にどう過ごすかを考える機会として、人にとって結構必要なのではないか。そう思って、新しく作るなら、ぜひ「凶」をフィーチャーしたものにしたかった、というのが一点。

そんな二つの思いで2021年1月からコツコツ、空いた時間にまず文字部分を、その次に私からの一言コメントを一番下に添えて、最後に100種類の挿絵を1から一つずつ描いていって、それはもう普段やり慣れているいろは順に47種類のものを作ることの倍以上の作業なので、途方に暮れることもありつつ…気づいたら3月半ばに。

やっと昨夜、100番まで何とかできた。

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大吉や吉は吉祥文様などを使うなどして、一方の凶は内容とかけ離れすぎない程度にほのぼのさせて、ところどころで「悪い状態の絵」の代わりに「厄除け」のアイテムや文様を使ってみた。例えば難を転じる「南天」や鱗模様、鈴や桃など…

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今回、自分の店やイベントなどで引いていただく場合は、凶や末吉が出た時には運気が快方するまで身を守るためのしおりを「おまけ」でつけたい。

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大吉や吉を引いた方は普通に「良い運勢」だと喜んでもらって、凶や末吉が出た人には「ああ嫌だ。でも、なんか厄除けしおりをもらっちゃった、ふふ」と笑ってもらえるように、個人的な願いを込めて。

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【お知らせ】凶にも注目してほしいハニホ堂謹製「宝寿みくじ」(元三大師みくじ系の史・資料に基づいて制作)は、私の店で4月中旬ごろから引いていただけます。こちらは「はにほみくじ」とは違って凶が入っているのでサービスで「おみくじどうですかぁ?」と気軽におススメすることはありませんが、ご興味ある方はよろしくどうぞ。

最後に、宝寿院 山本栄光先生からのお言葉を。

おみくじは、神、佛からのメッセージで、その年、その日、その時の祈願内容によって示されるものです。
おみくじを引くときは心身を清め、その場所のご本尊を心に思い祈願をとなえてから引きます。
内容は祈願により様々ですが、「大吉がよく凶が悪い」ではなく、その祈願に対する心構えを示されています。例えば大吉でも傲慢に進めると失敗するなどの内容であったり、大凶でも心のあり方で成就するといった内容が多いと思います。
ですので、示される内容に真摯に向き合って行動と言葉と想いを一つにして生活するための一つのアイテムがおみくじではないでしょうか。

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(追記)上の画像のだるまさんの絵の下のexcellent luckのはずの部分のスペルにミスがあると気づいて、入稿前に修正しました。

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