マガジンのカバー画像

一坪のお店を開くまでと、その後の話。

26
両親の介護を終え、その後どうしよう…と思いをめぐらせ、思い立った引越しと小商いの話。
運営しているクリエイター

#イラスト

デザインフェスタvol.59出展レポート

デザインフェスタ出展、無事終わりました。 今年、ハニホ堂のブースは南館4階(東京ビッグサイトでは西館が手前にあって建物入り口に近く、奥の南までたどり着くのに時間がかかる)だったので、お客さんが来られるのは早くても開場後20分くらいしてからだろうとのんびり構えていたら、気温が高いので来場者の体調を考えて10分前倒しで開場するという旨のアナウンスがあり、「え、そうなの?」と思っていたら午前10時になる前から付近のブースでお客さんと作家さんのやり取りが聞こえてきたのでした。 てっ

自分を応援する。

頭の中で「こんな感じ」と思い浮かべたり、自分が好きな感じの絵がいつまで経っても描けない。 世の中には好きな絵や立体作品がいくつもあるのに、自分が何かを描いたり作ろうとするとどれにも全く近づけないというか、こうしたい、こうありたいと思う何かに気持ちは近づこうとするのに同極の磁石が反発するように寄っていけない。 なぜだろう。 冷蔵庫の中の材料でチャーハンや親子丼を作る時なら「想像通りか、想像したより結構美味しいorイマイチ」と誤差は少ないのに、絵や物づくりでは頭でイメージしたこと

その後の話。

関東に引っ越してきて、9ヶ月。 シロアリが発生したり浴室の換気扇が壊れたり、郵便や宅配の誤配が何度かあったり、シャワーがぬるいか熱湯かしか調節が効かないなどの不便は多少あれど、徒歩30秒で商店街の立地&優しい大家さんの敷地での暮らしはいい感じです。 と同時に、前に住んでいた土地(奈良市)がいかに魅力的な場所だったか、そこに点在するお店の個性やクオリティがいかに得難いものか、思い知ることにもなりました。 先日、こちらで知り合った奈良出身の方が「地元にいた頃は大阪や京都、兵庫

終わりは次のはじまり。

お店を閉める月に入ったと思ったらもう一週間経過。 あと二週間したら閉店前の展示会期間に突入すると思うと、レイアウトや内容説明の看板や値付けなど、「色々やることあるなぁ」と焦る一方で、とても晴れやかで穏やかな気持ちになる。 私の一坪の店は、自分の作品を置く場所でもあったけれど、それ以前に実家の遺品整理で処分できなかったものと自分の仕事関係のサンプルや資料などを誰かにお分けするために設けた場でもあったので、例えば父が遺した杖や絵具、文具類、母の手芸用品や食器類、スカーフなど、

そんなこんな。

築100年ほどの家に越してきて、玄関部分で一坪の店を始めてから、半年あまり。 外出制限が出ている期間中に店を閉めがちになってから、何となくなし崩しに閉める日の方が多くなって、当初よりモチベーションも下がっている今日この頃です。 それでも、週に何度か店を開けるとお客さんと何かしらのやり取りがあって「止まっている空気が動く」というか、締め切った部屋でデザインの仕事だけをしているのとは違い、たとえお客さんが誰もこなかったとしても、程よく気持ちが引き締まって諸々はかどるような気が

今できることと、気づいたこと。

フリーのデザイナーとして、そして一坪雑貨屋の店主として、今思うこと。 こんな状況で外出や旅行がままならなくなって、会いたい人と会えず、約束をキャンセルするたび「1日も早く、元どおりの暮らしに戻りますように」と口にしていたのは数週間前くらいまでです。 最近は「元に戻るのではなく、暮らし方を変える覚悟がいるのかもな」と思い始めました。 例えばマスク。 私は花粉症のため毎年1月中旬からマスクをつけ薬を服用して5月初旬頃まで過ごすので、毎年、一年の半分近くは家の中に使い捨てマ

「また来よう」、と「もう、来ないかも」。

お店って大変なんだなぁ、と、まだ開店していないけど実感しています。 新しい町で暮らし始めて一ヶ月。 準備は少しずつ進んでいて、今はこんな感じ(看板は下駄箱の余っていた棚板で制作)。ただ、自分の店の準備より、この町のお店を発掘・調査する方に今は重きを置いてしまっているかもしれません。 新しい町の地図を自分の頭と体にインプットするため、これまでいろんな道を歩いて、文具はここ、画材はここ、コーヒー豆は当面ここ、パンはどうしよう、はっ、こんなところにケーキ店が。などと発見しつつ

幸せな散歩を求めて。

夏の散歩は夕暮れ時に限る。 昼間、酷暑の中で目的もなくぶらぶら歩くことは危険だから、散歩好きの私も寄り道せず、目的地へ急ぐばかりだけれど、夕暮れ時は別。 夏の夕暮れの空は、何層かになったカラフルなジュースのようなグラデーションだったり、雲が奥行きを感じさせてくれて大きな空色のドームの下にいる気分になったり、四季の中でも格別だ。だけど油断して夜になったら、またぼんやりよそ見して歩くことなどできないから、ほんのわずかのハッピーアワーだ。 私の好きな散歩は、整備された並木道や

一回休む。

これまで「1コマ進む」から「3コマ進む」まで新生活とショップ開店へ向けての話を(自分の背中を押すために)書いてきましたが、4月に入り、もうそんな机上の空論に時間を費やしている場合じゃないな、とハタと気づきました。花粉症を言い訳に長らく放置していた庭に出てみると、いつの間にか草が生い茂り、すごいことに… これからは仕事と実家の片付けをしつつ、中旬からは宝塚歌劇・宙組公演『オーシャンズ11』を観に行き、その公演を最後に退団される男役スターさんの姿をできるだけ多く見ることに集中し

3コマ進む。

何年くらい前からだろう、飲食店以外のお店で、お茶を振舞われることが増えたような… 和菓子店で試食を兼ねて出されることはもともと多く、土産物店などでも時おりあったけれど、作家ものの細々した雑貨やヴィンテージの紙雑貨を扱う狭い店内などで入店直後に出された時など「え、今?商品にこぼしたらどうしよう」と戸惑う場合も。3人連れで店に入って全員にお茶を出され、誰も何も買わずに店を出るのも気が引けて「自分が代表して何か一個買うか〜」となることもあれば、疲れているときは一息つけてありがたい

2コマ進む。

子供の頃、雑貨を扱う店に行くのが好きだった。サンリオなどの文具を売る店やソニープラザはもちろん、年齢不詳のマダムが大人向けのレースのスリッパや手鏡、猫のブローチなど非実用的なものばかり売っている店に意を決して入ることもあった。 思春期以降にも様々な店に興味を持ち、チープでキッチュな雑貨やレトロな駄菓子やおもちゃを扱うお店、不思議の国のアリスをイメージしたレースやピンタックがあしらわれた洋服や小物を売るお店、自分ではまったく買うあてのないステンドグラスのお店、北欧系の家具や国

1コマ進む。

自分の人生を、すごろくや人生ゲームのように振り返ることがたまにあります。振り返ると、これまで幾つかのステージを経たり時に戻ったり脇へそれたりしながらも、気づけば年齢を重ね、望むと望まざるとにかかわらずマス目を進んできました。 この数年、両親の介護が生活の中心になり時間と感情の多くを消耗する一方で、宝塚の男役スターさんのファンクラブに入って各地公演に観劇に出かけたり出待ちをしたりもして時間とお金をたくさん消費し、それでいて雑貨デザインの仕事を介護前と同じペースで受注していたの