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君に伝えたい百の言葉

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あなたに伝えたい言葉が残っている。見失っても、百個積んだ先に何かがあるかもしれない。光を追う者のエッセイ集
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2019年12月の記事一覧

糸をつなぐ

今年最後の大きなイベントを終えて、 片付けも全部して そうだ年末だから、スガシカオの「大晦日の宇宙船」を聴く。 去年もそんなふうに、この季節を過ごしていた。 駆け抜け過ぎたこの1年のことは、 走っているうちにぼろぼろ記憶を落としてしまった 来年、同じ季節がくるときに、また拾える気がしている。 駆け抜けて、少し時間が落ち着いたときには 結構なパワーを失っていた。 失っていた、と気づくのにもかなり時間を要し、 気づいたあとも、どうしていいかわからず 眠ったり煙草を吸ったりして

ときどき、さみしいと思う。

こどものころ、の話になった。 いまの彼女からは想像できないはなしで、 本当に、見えていないものって多いなあ、と思った。 見えるものしか見えない。のかもしれない。 こどものころ、のことはもうあまり思い出さない。 夢で会うくらい。 実家の夢や、同居していた家族の夢は、たまに見る。 いろんなことが当たり前だと思っていた。 小さい頃の夢は、おつかいにいくことで 本当に、徒歩でおつかいができる距離にお店がないことは、わたしにとって当たり前だった。 茶畑に囲まれていたことも、川が流れ

ここにあるのに、どこにもない

今日はコメダ珈琲に座っている。 昨日、本を読むためだけにコーヒー屋に立ち寄るということの「良さ」に気付いたわたしのリュックサックには、新しい本が入っていた。 昨晩のうちに、本棚の前で10分間仁王立ちしたあとに選んだのは、鷺沢さんの「ウェエルカム・ホーム!」だった。 ほんとうに、すごく久しぶりに読んでみよう、と思った。 今日はせっかくだからばんごはんを食べよう、と意気込んで座ってみることにした。 ピザトーストとグラタンと悩んで、ピザトーストにした。 やたら感じの良いお兄さ

思いわずらうことなく、愉しく生きよ

「休みたいときは、休めばいいと思うよ」 かろやかに笑うそのひとのことを、何度も思い出した。 彼女はいつもかろやかだった。 疲れて少し不機嫌なところを除けば、怒っているところを見たことがなかった。 もっとも、その「少し不機嫌」だって、他のひとにはあまり気づかれないような、ささいなものだった。 「明日、交通事故にあうかもしれないし」と言ったときも、彼女はかろやかに笑っていた。 休むことと「サボる」ことの線引きや違いについて難しいと感じているのは、おそらくわたしだけではないと思う

落下の季節

資料チェックの締め切りはすぐそこだった。 逃げ回るのも嫌いじゃないけど、ほんとうにそんな余裕のないスケジュールだし、手を抜きたくなかった。 手を抜いてしまった、という後悔を持ち続けることの方が、億劫だった。 資料の中に、君の書きかけの曲のことが少し書かれていた。 そうか、君はまた書いているし、 しばらくしたら、この曲に会えるんだ、と思った。 便宜上、自分をバンドマンと形容するならば わたしはバンドマンの生き方しか知らないし、 わたしの友達は、というか バンドマンは、という