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【家族通信】

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記事一覧

君と孤独

 高校生のとき、車の中で聞いたユーミンの曲の、そのフレーズが忘れられなかった。  あのときユーミンをたくさん聞きたくて、中古で安いCDをたくさん買ったり、図書館で借りたりして、どのCDにどの曲が入っているか、きちんと覚えていないものもあって、これもそのひとつだった。  けれどもこのフレーズだけは、どれほど大人になっても、晴れやかに吹き抜ける風みたいに、ときどきぶわりと、わたしの心臓を揺らしてゆく。  遠くへ行った友達に、何もできなくても、それでもいいと、なぜだか許されたよ

おもちゃの行進

 久しぶりに聞こうと思ったこの曲は、親友が贈ってくれた曲だった。  苦しい冬だった。  けれどもそんなつもりはなく、わたしは幸福であるように努めた。  まだ大丈夫、わたしは良い方。落ち込んでいる場合ではない、と自分を鼓舞し続けた。それが、余計に首を絞めるとも知らずに。  苦しい、と言って泣けばよかった。  病院の帰りのバスで、この曲をよく聞いていた。  ひとり、遠回りのバスに乗って、景色を見て、仕事にも行かないで、  あのときの苦しさに宛てて、なんてものではない。充てた

【家族通信】20241010 そして、それでいいと思う。

 書きたい、と思う。  ときどき、とらわれたようにそう思う。ほんとうに、ほんのときどき。  それは人生のほんの小さな隙間で、たいていは眠いなあ。と思っている。  書きたい、と思う今だって、ほんとうは眠ってしまいたいのだけれど、「書かなかった」という事実がわたしを傷つける未来を知っているから、わたしのために書く。そう、わたしはいつもわたしのためばっかりだ。  それが身勝手にも、誰かの救いになればいい。と願っている。  書きたい、というその衝動は、じんわりとからだにまとわり、し

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【家族通信】 20240928 道標のない手紙

 手紙が好きだ、と思う。  いつから好きだっただろう、と考えると、十代の頃からだったと記憶している。月刊ピアノのペンフレンド募集から、気がつけばインターネットの海に飛び込んで、BBSでいつでも交流できる友達に手紙を書いたりしていた。  大学の図書室は、今でも思い出す。やっぱり、よく手紙を書いていた。  別に話したいことがすごくあるとか、そういうことではなくて、結局とてもシンプルに手紙が好きなのだと思う。コミュニケーションツールとして。わたしにとっての適温。  もちろん、適温

【20240910】 苦いものは、苦いまま

 いつか、書きたくなるものだと思っていた。  気力が満ち溢れて、選ばれた人間みたいに、書きたくて仕方がなくなるような妄想をしていた。  けれども、そんな人間ではなかった。  少なくとも、わたしは。  むかし、バンドをやっていた頃に働いていた会社で、シルバーアクセサリーを作っている同僚がいた。  あの頃は、10時から19時までキッチリ働いて、初めてのデスクワークで、サボり方もわからなくて、なんていうか会社全体が真面目な雰囲気だった。あの人の履いていた、穴の空いたジーパンとは裏

【家族通信】20240901 1→12

 9月最初の記事は、「家族通信にしよう」と決めていた。  などというとカッコ良いのだけれど、実際のところは「8月の家族通信が少なかったから、月末に更新できなかったわたし」の後悔なのだ。  実際のところ、「有料記事を毎月2本」の規定はきちんと越えていたし、もし仮にそうでなくても、(現状の家族通信に於いては)ちょっとサボったくらいで、目くじらを立ててわたしを叱責する人はいない。と、わかっている。  勝手にできなくて、勝手に落ち込む。そんなのばっかりだ。  同じ事象(結局、家族通信

思い違いたがい

「大丈夫?」と尋ねたかった。 「少しは元気になった?」と問い掛け、できれば頷いて欲しかった。  それから、はっとして、すべての言葉を飲み込んで、「ただいま」と言った。  いま、わたしが君にかけようとした言葉のすべてが  あのとき、わたしが言わないで欲しかった言葉であることに気づき、驚いている。

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【家族通信】20240824 ずうっとこもっていて

 帰りの電車の中で、「これは良い感じに書けそうだ」と感じたそれを、きれいさっぱり忘れてしまった。忘れっぽいのですぐに忘れてしまうからメモを取るようにしているのだけれど、メモを取ることすら忘れていた。  約束より早めにスターバックスに着けたのはよかったけれど、今日に限ってAirPodsの充電が切れている。あれは、外で集中するための必殺道具だったのに……あれを手に入れてから、ずいぶん身軽に書けるようになったはずだったのに。  今日に限って、ということばかり覚えているのが人生だ

手頃な神様

「そういうときこそ、あせっちゃあだめですよ」  この人の言うことは、いつも正しいなあ。と思って、目の前の人を見つめている。  白衣のおじいちゃん。  精神科の、主治医である。 「あせっちゃだめ」というのは、人生に於いて理解し尽くした言葉である。 「あせってよかった」と思ったことが、あっただろうか。 「早めに行動できて(あるいは気付けて)よかった」と思うことはあるにしても、それは焦りとは違う気がする。  むしろ、「落ち着け、落ち着け」と念じながら生きている。はずだったのに、気

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【家族通信】20240710 明日もきっと書く

 また、4日も籠城してしまった。  日曜日はお休みで、ごろりごろりと過ごして  日が落ちてから買い物に行って、小松菜とか茄子を買って少しだけ料理した。  月曜日は起きられなかった。  起きようとして、頑張って、なんとかラジオ体操の開始ボタンを押したのだけれど、半分に満たないところで立っていられなくなってしまった。  そのままベッドとソファを行き来して、  夜にはなんとか洗濯をしたのだけれど、ひっくり返している洋服を元に戻すことすらできなかったから、かなり正常じゃなかったと

【家族通信】20240704 エンドレスワルツを踊れない

 まるで、ワルツのような日々だった。  仕事、執筆、休息、くるりくるりと繰り返していた。  終わらないワルツ。  何かに急き立てられるようで、休憩の仕方がよくわからなくなってしまった。  だって、好きで書いているわけで。別に仕事ではないし、ということもガンガン書いていた。  変化のキッカケは、恐怖でしかないと思う。 「このままでいることが恐怖」になったならば、人は変化を選ぶ。  わたしにとって、今がそういう時期だとわかっていたから、踊ることを決して辞めなかった。  そうし

【家族通信】20240617 人生にときどきある、そういう瞬間のこと

 昨日、骨董通りのことを書いた。  自分の記憶を、少し小説っぽく書いた掌編で、本当に十年振りに骨董通りを訪れた話となっている。  この物語の中で、「会社は浅草に移転してしまって」というふうに書いたのだけれど、実際は蔵前だった。浅草と蔵前の間。実際は蔵前寄りだっただろうか。とにかくわたしは、乗り換えの都合で蔵前駅を利用していた。  けれども「浅草」と書いたのは、こちらの方がわかりやすいから。人に聞かれたときも、「浅草」と答えるようにしているし、浅草駅を利用していた人の方が多

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【家族通信】20240612 壁と屋根を抜けて

 ちょうど今日の Xで投稿したんだけど、  ベランダの装備が最高すぎる。  ずっと買おうか悩んでいた「置きっぱなしにできるテーブルと椅子」をついにゲットした。なくてもいいから、と思っていたのだけれど、あるとすごい良かった。なんていうか、おうちが急にカフェ。季節が急に愛おしい。 「日中は暑いし使わんだろ」って思っていたのだけれど、夕暮れとか、曇りとか、6月12日、今日の夜とか。心地良すぎる。風があって、暑くない。  何より、ここでは横になれないし、スマホとiPad以外の装

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乾杯して終わる日々に

 会社の、その依存性のようなものについて考えている。  復職して、3週間。  仕事をすることにも、出社をすることにもだいぶ慣れた。  負担の少ない業務を回してくれて、すごく助かっている。  今までは、終わったと思ったら電話で追加の仕事。タイミングが読めなくて、それが精神的負担になっているとは思ってもいなかった。それが仕事だったから。  でも一線を退いて、大切にしなければぶっ壊れる身体で、ゆっくり働いてみると、あれもこれも負担だったのだなあ。と、のんびり世界を見させていただい

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