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ヒガンバナとリコリス・リコイル~第一回 「リコリスの名、Lycoris radiata」

ごきげんよう、はねおかです。
今回はいつものマリみてではなく、絶賛放送中のアニメ「リコリス・リコイル」を取り上げたいと思います。

とはいえ、僕ですから、焦点は「植物」です。

リコリス・リコイルの登場人物には、植物の名前が多く採用されています。

ミズキ:ミズキ(ミズキ科ミズキ属)、もしくはハナミズキ?(ミズキ科ミズキ属)
クルミ:クルミ(クルミ科クルミ属)
フキ:フキ(キク科フキ属)
サクラ:サクラ(バラ科サクラ属)
楠木:クスノキ(クスノキ科ニッケイ属)
エリカ:エリカ(ツツジ科エリカ属)

さて、主人公の千束とたきなが所属するDAの組織がリコリスですが、リコリスとはヒガンバナの学名(Lycoris radiata)です。

ヒガンバナは多数の別名を持つ植物です。
特に日本では「死人花」「葬式花」「地獄花」など、不吉な名前が多いです。
現代社会における、社会正義を実現するための掃除屋(スイーパー)たるリコリスには、やはり後ろ暗い名前が与えられたのでしょう。

ですが、ヒガンバナに不吉なイメージを持つのは、日本人だけなのです。
台湾の連江県では、ヒガンバナが県花として採用されています。

ヒガンバナは中国原産とされ、いつ頃日本に渡来したのかの文献が存在しないため、有史以前に渡来したと考えられています。

ヒガンバナの名は彼岸(秋分の日の前後7日間)から名付けられており、その名の通り9月頃に開花します。
彼岸と聞くと、我々日本人は先祖の墓参りをする習慣がありますね。
秋分の日は「国民の祝日に関する法律」で定められており、第2条では「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ。」日とされています。

彼岸は仏教用語「波羅蜜」の漢訳「到彼岸」に由来すると言われています。
我々のいる俗世が此岸で、そこを超えた世界が彼岸です。
彼岸に行われる仏事を「彼岸会」と呼び、最古では延暦25年(西暦806年)に行われた記録があります。

この彼岸会、日本にしか存在しない行事で、仏教発祥の地インドや中国などでは見られません。

ちなみに、ヒガンバナは有毒植物として知られており、彼岸花の名も「これを食べると彼岸(死)へと至る」からである、という説もあるほどです。

人の世を超えた世界へと誘う、有毒で、血を連想させる赤い植物。
それが彼岸の時期に突然咲くのです。
昔の人が、そんな植物の名前に不吉な意味を持たせることがあっても、不思議ではありませんね。

さて、日本以外ではどうでしょうか?

ヒガンバナは学名をLycoris radiataと呼び、Lycorisはギリシャ神話の海の精リコリアスから名付けられています。
種小名であるradiataは、ラテン語で「放射状の」という意味で、花弁が放射状に開花することから名付けられています。

放射状。
僕はこの言葉が、リコリス・リコイルのキャラクター達の人間関係に思えてなりません。

不殺の誓いを立て、喫茶リコリコで人間関係を育む千束。
DAから離れ、同じく喫茶リコリコで新たな生活が始まったたきな。

「死人花」などという後ろ暗い名前より。
「放射状に」広がる新しい関係を。

リコリスの名に与えてもいいんじゃないか。
そう思っています。

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