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バラ好きの視点から読み解くさよならローズガーデン第2回~黄色いバラの花言葉

ごきげんよう、はねおかです。
今回は「バラ好きの視点から読み解くさよならローズガーデン」の第2回として、黄色いバラの花言葉をご紹介します。

花言葉の起源は様々あるようですが、元は17世紀のトルコで誕生した「セラム」とされています。
セラムは、あらゆるモノに意味を込め、それをやり取りする風習だったそうです。

草花は言うに及ばず、果物、鳥の羽、石など、ありとあらゆるモノに意味が込められていて、それを手紙のようにやり取りしたのだとか。

その風習が1718年に現在のイスタンブールからヨーロッパに伝わり、花言葉の起源となったと言われています。

現在の花言葉の元となったのが、1819年に発行されたシャルロット・ド・ラトゥールの「Le Langage des Fleurs(フランス語で「花言葉」の意味)」です。
それ以前からフランスの貴族社会では特定の草花を擬人化した詞華集が流行していましたが、この本により労働者階級まで花言葉が知れ渡るようになります。

日本では明治の頃に輸入されたとされています。
1909年には「花ことば(田寺寛二:良明堂書)」が発行され、日本独自の花言葉が掲載されています。
また、1886年に「新式泰西礼法(ルーイス・ダルク原著:上田金城訳述)」という書籍にて花言葉の文化を伝えています。

花言葉は国によって違います。
例えばハナミズキは、英語圏では「Am I indifferent to you?(私があなたに関心がないとでも?)」「love undiminished by adversity(逆境に耐える愛)」ですが、日本では「返礼」という意味があります。
これは、1912年に当時の東京市長が友好の証にワシントンにサクラを贈り、そのお返しとしてハナミズキが贈られたことに由来します。

さて、黄色いバラの花言葉ですが、これは少々印象がよくありません。
英語圏では「decrease of love(愛情の薄らぎ)」「jealousy(嫉妬)」といったものだからです。

バラに限らず、黄色い花は英語圏ではネガティブな花言葉がつけられていることが多いです。
例えばヒマワリは「false riches(偽りの富)」、マリーゴールドは「jealousy(嫉妬)」「despair(絶望)」「grief(悲嘆)」など。
意外に思う人も多いのではないでしょうか。

これは、英語圏、つまりキリスト教の教えがあります。
裏切り者のユダが着ていた服が黄色=黄色は不吉な色というイメージがありからです。
裏切り、不誠実というイメージがつき、それが花言葉にも影響しています。

さて、さよならローズガーデンの2巻では、華子とアリスの心境に変化が出てきます。
イライザ先生とアリスの恋に気付き、それを応援するのが友としての役目だと知りつつも、華子は自分の心に芽吹いた気持ちに気付いてしまうのです。
これは「嫉妬」だとー

さよならローズガーデン 2巻表紙(毒田ペパ子 マックガーデン)

さよならローズガーデンの2巻の表紙には、オレンジがかった黄色のバラが描かれています。

バラの歴史において黄色系バラの歴史は浅く、1900年にアントワーヌ・デュシェとロサ・フェティダ・ペルシアーナから交配したソレイユ・ドールが誕生しました。
当時は黄色系バラの交配は不可能と言われており、リヨンの魔術師と呼ばれたバラ育種家ペルネが15年もの歳月をかけて誕生させたのが、オレンジ色のバラ、ソレイユ・ドール(Soleil d’Or:黄金の太陽)です。

なぜ黄色系バラの誕生が不可能とされていたのかは、以前に書いたnoteをご覧いただくとしましょう。

1900年が舞台であるさよならローズガーデンの世界では、まだこのような黄色系バラは誕生していないことになりますが、それでも黄色のバラを表紙にしたのには意味があります。

そう、嫉妬です。

同性愛が嫌悪されていた時代に、アリスが婚約者エドワードに自分の心をかくしていたことも。
華子がイライザ先生のことをアリスに話さなかったのも。
黄色い花の花言葉、「不誠実」だとー

では、黄色い花にはネガティブなイメージしかないのでしょうか?
それは、「否」であると言えます。

色彩の世界では、黄色やオレンジといった色は「ビタミンカラー」と呼ばれ、活力を与える色とされています。
また、イエローリボン運動というものがあります。
これは、1979年のイランアメリカ大使館人質事件の時に人質の無事を祈り、街路樹に結んだり衣類に身に着けたりしたことがきっかけとされています。

また、湾岸戦争では兵士が無事帰還するよう祈りを込められたり、シンガポールでは前科者の社会復帰の運動のシンボルとされていたり、我が日本でも障害者の社会進出運動として使われています。

もはや、黄色にネガティブなイメージはないのです。

人は醜い感情を抱かずにはいられません。
カトリック教会でも、七つの原罪として、人が抱く醜い感情を示しています。

それらを華子は、アリスは、乗り越えられたのか。
答えは是非ご自分の目でお読みになってください。

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