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小説のプロットを練るためのアプリと物語論
小説やシナリオを書く上でプロットを練ることは大切と言われています。
しかしプロットを練るのって面倒なものです。
「そんなことよりとっとと書き始めたいんだ!!」
と思う方もいるのではないでしょうか。
私も同感です。
だけど大切なものは大切なのです。
なのでプロットを練るためのアプリを作ることにしてみました。
※人様に使ってもらえるほどのものは作れないので自分専用アプリです。公開の予定は今のところありません。
アプリの仕組み
プロットを練るアプリと言っても大層な仕組みではありません。
プロットのテンプレートを用意しておき、各項目に入力していく。
というだけのものです。
そして入力したものをpdfファイルにします。
pdfの形式を選んだ理由は、印刷を考慮してのことです。
長編小説を書く場合にはプロット等の資料を紙で持っておいた方が便利な時もあります。
それにpdfファイルならパソコンでもスマホでも閲覧できます。
作成したプロットを後で確認する時のことを重視して、pdfを選びました。
見てのとおり仕組み自体はとても単純です。
ただ、全てが自由入力のスペースではありません。
たとえば文字数は選択式になっています。
物語によってテンプレートを分岐する
プロット作成において、このアプリでは「ヒーローズジャーニー」と呼ばれる理論を参考にしています。
ヒーローズジャーニーでは物語を12個に分割しています。
(8個や17個に分割したヒーローズジャーニーもありますが、私は12個に分割したものを用いることにしました)
主人公を取り巻く日常から始まり、非日常に誘われ、そして新しい日常へと帰っていく……。
その物語の流れを12のステップに分解しているのです。
しかし短編を書く際には12ステップも書くスペースはありません。
なので短編のプロットを練る際には6ステップに省略したものにテンプレートが切り替わるようにしました。
内容に応じてテンプレートの切り替えが自動でおこなわれる。
これはアプリならではの利便性だと思います。
物語のジャンルによっては、ヒーローズジャーニーが適さないこともあるかもしれません。
ですからジャンルごとにひな型を変更するように設計してもよさそうですね。
ヒーローズジャーニーを選んだ理由
私のアプリでは物語の定型としてヒーローズジャーニーという理論を引用しています。
しかし物語論って色々とあります。
私たちに馴染み深いものといえば「起承転結」です。
どうして起承転結ではなくヒーローズジャーニーを採用したのか?
その理由は以下のとおりです。
・具体的な指示がある
・エンタメ的な起伏を作れる
・一定の認知度がある
非常に有名な「起承転結」ですが欠点を感じています。
それは具体性に欠けることです。
起承転結の起ではなにを書けばいいのか?
承ではどうするのか?
それぞれの書き方について、指示がいまいち曖昧で困ります。
(元々は漢詩の理論だったそうですから、漢詩を作る場合であれば困らないのかもしれません)
一方でヒーローズジャーニーは指示が明確です。
「背を向けられない問題が起こり、非日常に足を踏み出さなくてはならなくなる」
「主人公を導く師が現れる(師は人間とは限らず、重要なアイテムのこともある)」
という具合に、具体的にどんな出来事が起こるのかが明確にされています。
だから素直に指示に従うだけでプロットを組めます。
大量生産を意識した場合には大きな利点ですね。
そしてエンタメ的な物語の起伏を作れるところも強みです。
ヒーローズジャーニーは「大きな壁を乗り越えて成長する物語」を意図した理論です。
冒険譚にしろ恋愛物語にしろ、エンタメに壁と成長は付き物です。
なので気持ちいいエンタメを書きたい時にヒーローズジャーニーはうってつけと言えます。
私がいただいているシナリオの仕事もエンタメを書く必要があるので、それに向いている理論を採用したのです。
そして知名度があることも大切です。
多くの人は権威に弱いです。
有名な理論だと言われると「それはすごそう」と納得してくれます。
なので有名な起承転結を用いないからといって、知名度を無視することはできません。
そこでオリジナル理論ではなく、世に知られている物語論を採用することにしました。
物語を作るために必要なもの
壁を乗り越えて成長する物語を考える場合、
「ケーキ職人が大変な仕事を達成して名誉を得る」
「冴えない学生が勇気を出して恋愛を成就させる」
「エージェントが悪の企業を打ち倒して平和を守る」
と様々なパターンが想像されます。
出世を夢見るケーキ職人なのか、恋する学生なのか、正義のエージェントなのか。
どれを選んでも結局は「壁を乗り越えて成長する物語」になるのですから、ある意味では「なんでもいい部分」と言えます。
なにがなんでもケーキ職人じゃなきゃいけない理由なんてありません。
しかしこのなんでもいい部分を決めないことには具体的なストーリーを決めることもできないのです。
そこでプロットを組む際には「なんでもいい部分」→「物語の流れ」という順番で決めていくこととなります。
私のアプリでも、なんでもいい部分を最初の方で決めるように作りました。
このなんでもいい部分がかなり曲者です。
書きたい物語がある人は、ここが既に決まっているようなものなので大して苦労しません。
しかし仕事などの都合で物語を量産しなくてはいけない人は、なんでもいい部分の枯渇と向き合わねばならないのです……。
枯渇しないためにはまた別のアプリを……。
という方法ではなさそうですね、解決策は。
たとえば俳句には歳時記という季語辞典みたいなものがあります。
俳句をたしなむ方はその歳時記を見て、季語を選ぶことがあるそうです。
そんな感じで小説でも、ネタとその使い方を記した辞典があったら便利かもしれないですね。