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小説以外から小説の書き方を学ぶ

 小説を書くことを趣味にすれば、参考のために素晴らしい小説を探したくなります。
 しかし小説の書き方は小説からしか学べないわけではありません。

 漫画やアニメ、映画や演劇……。
 小説以外にも創作の形はたくさんあります。
 それらから刺激を得ることも小説を書くのに役に立ちます。

 あなたが好きなものからノウハウを吸収すればいいのです。

 結論はそれで決まりなのですがせっかくなので私が影響を受けたものを紹介したいと思います。

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俳句・短歌

 文章力を磨くにはどうすればいいか?
 そう考えている時に私が触れたのが俳句と短歌でした。

 俳句や短歌はテレビ番組で勉強することもできます。
 俳句なら「プレバト!!」で馴染みのある方もいるでしょう。

 俳句や短歌は短い定型詩であることが一番の特徴ですよね。
 限られたスペースと一定のリズムを用いて詩を組み立てないといけません。
 短い詩形なのでたった一音の違いでも印象が大きく変化します。

 単語一つ、助詞一つにまで気を配ることが求められるのが俳句や短歌の世界です。

 細部まで入念に検討する文化が俳句や短歌にはあるんですね。
 だから文章力を磨く勉強をするのに丁度いいんです。

 しかし気を付けないといけない点もあります。
 俳句や短歌は、同じ文学とは言え、小説とは全然違うものであることを意識しなければならないのです。

小説との違いを意識する

 俳句で「月」と言った時、そこにはたくさんの情報があります。

 俳句は非常に短い詩形です。
 なので作者は無駄を省き、読者は省かれたものを読み解くことが当たり前となっています。

 たとえば「美しい月を見た」と書かずにただ「月」と書くだけで、そういう意味に解釈してもらえるのです。

 見ていないのなら俳句の中に登場するはずがありませんし、わざわざ登場させるのであれば、それだけ美しかったに違いありません。
 そういう理屈が働くことで細かい説明を省いても読者に意味が伝わるのが俳句や短歌の特徴です。

 俳句には5・7・5の定型のリズムがあるおかげで、そういう大胆な省略がききやすい一面もあると思います。

 また、俳句において月は秋の季語です。
 俳句で月が登場した場合にはその句の舞台は秋だとわかります。
 月が出ているからには時刻は夜です。
 受け手は秋の夜を思い浮かべます。
 そうなると涼しい空気なども想像されてきますね。

 このように俳句では「月」というたった2音の中にものすごい量の情報が詰め込まれます。

 俳句が非常に短い詩形であり、なおかつ定型のリズムがあり、さらに季語というものを最大限利用しようとする文芸であるおかげでこんな省略と情報の密度が成立します。
 短いから受け手も1音1文字の細部にまで集中して読解できます。

 しかし小説で同じことをしようとすると大変ですね。
 だって小説は無数の文章の連なりです。
 季語を特別視して扱う文化もありませんね。
 月が出てきたって秋とは限りませんし、気候などのイメージにもつながりにくいです。

 なので小説の中ではたった2音の単語に同じような情報量を詰め込むことは難しいです。

 読者からしても大量の文章を読まなくてはいけない小説の中で、俳句と同じ情報量の文章を入れられてしまったら読み解くのが大変で疲れちゃいますね。

 ですから小説の場合では、短い中に情報を詰め込むのではなく、複数の文章の積み重ねによって意味を補強するような技法が取られやすいですね。
 文脈を利用して深い意味を生む表現が小説の得意とするところです。

小説にできることを考えてみよう

 小説以外から学びを得たい時には、「同じことが小説でもできるかな?」と想像してみると非常に効果があります。

 真似ができるものは真似をします。
 でも小説には向かないこともありますね。

 さっきの俳句の例なら、文章の細部にまでこだわるところを見習って文章力を磨くことはできそうでした。
 一方で、文章の形が全く違うので俳句の密度をそっくり真似するのは無謀だとも想像できました。

 漫画なら絵やコマ割りによる表現があります。
 アニメやドラマだと映像としての表現方法があって、それらは小説でそっくり真似できるものではないでしょう。

 参考になるけれども、そのやり方に囚われすぎてはよくありませんね。

 世の中なんて大体そんなものです。
 薬を容量用法を守って服用するのと同じですね。
 適度な影響を受ける。染まりきらない。
 そうやって学習すれば小説の腕はぐんぐんと伸びていきます。

 そして、もしかしたら小説であることのアイデンティティを守ろうとしすぎるのもダメかもしれません。

 今の時代、世に出る創作物は複数のメディアで展開されます。
 ラノベがアニメになったり、漫画がドラマになったり、そこからさらに映画化したりしますよね。
 そういった展開を意識するなら、小説らしい表現にこだわりすぎても仕方ないという判断も一つの考え方となります。

 いずれの態度を取るにせよ、小説を書くのに小説だけを参考にする必要はありません。
 世の中にある創作物、目についたもの全部から影響を受けてしまっていいんです。
 あなたの腕を上げるヒントは世界中にたくさん転がっています。
 ぜひ小説に限らず、いろんなものを楽しんでみてください。
 楽しんでいるうちに小説を書くのも上手になりますよ。

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