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『レーザー』加工は数だよ、兄貴!

レーザには2つの種類が存在する。
連続波レーザとパルスレーザである。
連続波レーザがシンプルに熱を発生させて加工をするのに対して、パルスレーザは熱だけでなくアブレーションや多光子吸収のような、まだ完全解明にはほど遠い不思議な現象を組み合わせて加工をしている。
現代の技術と天才達の頭脳を持ってしても、まだ解明していない不思議現象なのに、産業にも研究にも使われているパルスレーザは、不思議界の存在なのかもしれない。

連続波レーザは休むことなくレーザを出し続けて、材料に冷えるヒマを与えることなく加熱し続けて溶融と蒸発で加工するが、パルスレーザははっきりしたON/OFFを繰り返して材料を加工する。
当然ながらレーザが材料に当たっている時間は連続波レーザより短いので、加熱しにくい。
加熱しにくいので、分厚い鉄板の切断や溶接は不得意だが、少ない熱量には大きなメリットもある。

それは加工部周辺への熱影響の抑制である。
レーザ屋さんの熱影響とは、レーザ切断や溶接部を中心に外側に向かって材料が少し溶けたり、改質したりすることを指す。
ビームサーベルを雪に近付けるとお風呂になるシーンは、まさに熱影響である。

雪が温泉になるような諸兄の大好物の奇跡は、熱影響などと言うネガティブな言葉にはならない。
そう熱影響は、ネガティブなことなのだ。
材料の強度が下がったり、特性を変えてしまったりするのである。
そうと分かれば熱影響を抑制したくなるのが、人類の欲望である。
そんな時に颯爽と現れたのが、パルスレーザだ。
パルスレーザは、照射時間が短い分熱量が小さい。
熱量が小さいから、加工ができるギリギリ必要なエネルギに到達するまで、パルスの数でエネルギを稼ぐのだ。
必要最低限のエネルギで加工すると、熱影響はガクッと下がる。

パルスレーザを使う加工は、加工時間を犠牲にして、加工品質を得る等価交換で成り立っている。
そしてそれを実現しているのが、パルスの数である。
『レーザ』加工は数だよ、兄貴!

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