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#136 いわば凝、バリュー算定の方法

わたしの投資手法の核心的な部分になる。

投資をはじめた最初のころはポートフォリオ管理だけを重視していた。今はほぼキャッシュ管理のためにポートフォリオの表を活用しているが、そのころは資産クラスを細かく分けていた。
なぜなら、当時、投資の勝ち筋のイメージは「シーソー」で、何かの資産クラスが上がっているときは、他の何かの資産クラスが下がることを利用しようと考えていた。上がれば売り、下がれば買う。

しかし、うまくいかなかった。上がるものは長く上がるし、下がるものはずっと下がる。同じような動きをする資産クラスもけっこう多い。シーソーで売買をしていると、ポートフォリオが含み損だらけになる。さすがにこのやり方は間違っていると思わざるを得なかった。

その後、ESGの仕事をしていたこともあって、社会トレンドを重視した投資、つまり定性的な考え方をメインとした投資に切り替えたが、これもあまりうまくいかない。
頭の中の「べき論」に、現実がともなわないのだ。頭の中だけで考えたことが、いかに役に立たないかがわかった。マネジメント論で有名なドラッガー先生はイデオロギー(超訳:概念だけで突き進むこと)の危険性を説いたが、まさにこういうことなのだと思う。

投資は結果がすべて。言い訳の余地もなく、間違いが数値で示される。持論にこだわってないで、現実を見て非を認める。この姿勢を手に入れることができたのは収穫だったが、わたしは定性的な考え方に頼る投資法にも行き詰った。
ここまでのわたしは目隠しをして銘柄を選んでいたに等しい状態。次の進化を待たなければならなかった。

なお、外からはあまり見えないようになっているが、投資の世界は、化け物たちの集まりだ。やつらは念能力者たちだと思っていい。能力者でないものは、何をされているかわからないうちに、再起不能にされる。
投資の世界で生き残りたいならば、念能力、少なくとも「凝」を得なければならない。

投資8年目の終わりに、ようやく転機が訪れる。
バリュー算定、つまり、時価総額と企業価値の差を定量化することに成功した。これがわたしにとっての「凝」だった。

これまで、理論株価や企業価値の算定は、アナリストのような専門性がないと不可能なものだと思い込んでいた。しかし、企業価値を計算するDCF法の数式を見ていると、最後は結局、永久価値でまとめられてしまうことに気づいた。

こんな雰囲気の算式、ふーんとだけ思っていただければ

難しい響きがするかもしれないが、永久価値は本当に簡単な計算式で、「企業の利益の実力値」を「期待リターン」で割るだけ。それを踏まえてわたしなりに簡略化すると、企業価値=経常利益×10。それだけだ。
時価総額と比べ、企業価値のほうが大きければ割安となる。わたしはこの考え方をベースに独自のバリュースコアを算出している。

いろいろとコツがある。算式で使う経常利益は、その年だけの数値ではなく、過去の数値、会社の予想、四季報の予想を突き合わせながら、その企業の実力値と思われる数値をえいやで決める。

x10の部分はいわゆる資本コストだが、資本コストは業界によって変わってくるので、10を少し調整する。たとえば、海運業は-2、自動車は-1、運送業は+1、食品、電気・ガスは+2など(業績の変動が激しい業界ほど、投資家はより多くのリターンを求めるため、企業価値は低めに見積もられる)。

さらにわたしはネットキャッシュ(現金-有利子負債+投資有価証券)がマイナスだと追加で-1、自己資本比率が低い(30%以下)と追加で-1している。財務が良くない会社には、相応の期待リターンを求める考え方だ。

このように多少の調整はしているが、基本的な考え方は、企業価値=経常利益×10。いたってシンプル。厳密である必要はまったくない。いろいろな企業を比較すれば、どれが割安でどれが割高なのかが見えてくる。

このように計算したスコアがわたしが今週の投資戦略でときどき書いているバリュースコア(事業)。スコアのバリエーションはぜんぶで4つあるが、細かくなるのでここでは説明しない。

わたしの管理表の一部(4つの視点のバリュースコアが並んでいる)

言いたいのは、割安・割高を可視化し、投資の判断基準として定量化することで、やっと「なんとなくの投資」の域を突破できたということ。
割高なものを持っていたくないので、損切もできるようになった。

その後、四季報通読を経て、テクニカルを組み合わせた投資法に進化していく。ロック堅実投資は、ポートフォリオ管理が大前提にありつつ、「バリュー✕テクニカル✕ESG(定性)」で個別株を選別する。

しかし、ぜんぜん説明しきれない。これはいつか本を1冊書かなければダメなのかもしれない。

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