Deep learning driven de novo drug design based on gastric proton pump structures
本研究の学術的背景と問いは、現存の薬品が有害な副作用や低い結合親和性、薬物動態の問題により効果を発揮しきれない問題を解決するための新たな化合物の開発にあります。より具体的には、胃プロトンポンプ(胃酸の生成を担当する酵素)に結合する薬物の構造情報を深層学習を用いて解析し、その情報を基に強力な阻害効果を持つ化合物を設計するという課題に取り組んでいます。
本研究の目的は、深層学習モデルを用いて、胃プロトンポンプに結合する薬物の構造情報から新たな化合物を設計し、それが実際に高い阻害効果を持つかどうかを確認することです。今回開発されたモデル(Deep Quartetと名付けた)は、構造と機能の情報を統合することで、新たな化合物の設計を可能にすると共に、既存の化合物の改良や新たな化合物の設計も可能にするという、大きな創造性と独自性を持つものです。
本研究の着想は、医薬品の効果を向上させるためには新たな化合物の設計が必要であるという認識から得られました。特に、胃酸関連疾患の症状を緩和するための薬物においては、強力な阻害効果を持つ化合物の開発が求められています。これまでの研究では、化合物の設計は主に実験的な手法に依存しており、その結果が必ずしも満足行くものではありませんでした。しかし、構造生物学の進展により、薬物がターゲットと結合する構造の詳細な情報が得られるようになり、それを基に化合物を設計するフレームワークを確立することが可能になりました。
本研究では、我々は深層学習モデルを用いて新たな化合物を設計し、それを有機合成し、さらに超解像度電子顕微鏡(cryo-EM)を用いてその結合姿勢を解析しました。その結果、我々は本研究で最も高い阻害効果を持つとされる化合物DQ-18を設計し、そのKi値(阻害定数)が47.6nMであることを見出しました。さらに、2.08Åの解像度で行われたcryo-EM解析により、DQ-18の結合姿勢を明確に決定することができました。
本研究の有効性は、設計した化合物の実際の阻害効果を試験管内(in vitro)で評価し、さらにその結合姿勢をcryo-EMで解析することで確認しました。この結果、設計した化合物が予想通りに高い阻害効果を持つこと、そしてその結合姿勢が予測と一致することが確認され、結果として、我々の手法が構造に基づく新薬設計のフレームワークとして機能することが示されました。
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