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 こんにちは、大阪大学外国語学部英語専攻の多田佑香です。

 私は基盤教養教育科目として、筒井佐代先生の「日本語・日本文化を考える」という授業を受講しています。筒井先生の授業では、日本語が母語だからこそ、今まで考えなかったことや、気づかなかったことを発見することができます。そんな授業を通して、先生が日本語を研究しようと思った経緯や日本語教育についてもっと知りたいと思うようになりました。
 そこで今回、私はその筒井先生に、大学教員になった経緯や、研究内容などについてインタビューを行いました。その内容をご紹介します。


目次

  1. 大学教員という仕事について

  2. 研究内容について

  3. 日本語教育について

  4. 学生に向けて

  5. インタビューを終えて


1. 大学教員という仕事について

Q. なぜ日本語に興味を持ち、日本語の大学の教員になろうと思ったのですか?

 もともと日本語には興味がなく、外国語に興味があったのですが、学部4年生になるころに進路が決まっておらず、どうしようか迷っていました。その時たまたま、先輩に日本語を教えるボランティアに誘われて、行き始めました。そこで、周りの人たちに「日本語教育はこれからの仕事だよ」と言われて、ほかにチョイスがなかったので、じゃあ勉強してみるか、って感じで。

 それで大学の先生に相談したら大学院に行ったほうがいいよと言われて、大学院にとりあえず2年行って、もともと先生になりたいと思っていなかったので、向いてなかったら就職しようと思っていました。大学院で日本語を研究し、仕事で日本語も教える中で、日本語教師になりたいと思っていましたが、大学院に行って周りの先輩が大学に就職していくのを見て、大学に応募してみようかなと思いました。


Q. 大学教員という仕事の好きなところと嫌なところ

 ある程度自由にスケジュールが組める、授業の内容を自分で決められる、服装が自由なところが好きです。大阪大学の学生さんは賢くて真面目なので、ありがたいと思っています。
 嫌なところは、好きなところにも関係しているのですが、時間を自分で管理しないといけないので、切り替えが難しく土日も働いてしまうことです。昔はそうだったんですが、今は土日は仕事をしないと決めています。あと、会議の終わる時間が決まっていないところですね。時間がいくらでもあると思われているみたいですが、そうではないので。


2. 研究内容について

Q. 先生はどのような研究をされていますか?

 日本語の会話、特に雑談について研究しています。日本語を教えるときに、日本語話者がどんな風に雑談しているかって、どこにもあんまり書いてないのです。だから、会話に入っていけないという留学生にどうすればいいか教えようと思っても、相槌とか、何をどう教えたらいいのかわからないんですね。
 研究としては、具体的には会話を録音、録画して、文字に起こし、分析をしていくという「会話分析」をしています。私の場合は雑談の中でどういうパターンがあるのかを見つけたいと思っています。そして、それを使って留学生に会話を教えられないかなと思っています。


Q. 日本語の会話を研究しているからこそ、会話しているときに無意識のうちに分析してしまうことなどはありますか?

 自分の気にしている現象には耳がいきます。最近は、補助動詞の使い方に興味があって、昔にはなかった使い方が増えてきたなと思っています。例えば、フィギュアスケートの解説者の「ここで3回転入れてきました」みたいな、そういう「~てきました」とかが最近すごく増えているんですよ。なんだろう、これ、って。そういうところには耳がいってしまいます。


3. 日本語教育について

Q. 先生にとっての母語である日本語を日本語学習者に教えることの難しさについて教えてください。

 意識していないのに使っている日本語について質問されたときに、答えられないんですよね。考えたことがないから。考えようとしているんですけど、ある程度は説明できてもすべてを説明することはできないんです。特に、話し言葉は変化もします。あとは、自分が使わない表現について教えるのが難しいです。例えば、「宝くじ当たっちゃいました」の「当たっちゃいました」とか、「受かっちゃいました」みたいな表現を私は使わないんですけど、学習者に質問されるので、その時なんて説明すればいいかわからないということもあります。


Q. 日本語教育に関わっていてよかったこと、悪かったことを教えてください。

 日本語を外の視点から見ることができて面白いですし、日本語教育をしていなかったら出会えなかった、いろんな国から来た人と出会えることも面白いです。苦労はありますけど、ならないほうがよかったとは思わないです。


4. 学生に向けて

Q. 先生は「日本語・日本文化を考える」という授業をされていますが、なぜ私たち日本人が日本語について改めて考えなければならないのでしょうか?

 単純に面白いからですかね。自分が意識していなかったことに気づくのが面白いから。ほかには、自分の持っているものを客観視する、自分自身を外から見ることができるからです。そういうものの見方が、ほかのところで役に立つかもしれないなと思います。例えば仕事に就いたとき、全体の中で自分の立ち位置を上から見れるとかって、自分のとる行動の仕方を考えるときに大事ですし。あと、日本で生まれ育っていない人とかかわるときに、日本のことも、その人の国のことも対等に見れたり、ほかの国の文化についても理解しやすくなったりします。


Q. 先生は授業のはじめに本を紹介してくださいますが、先生自身が好きな本、学生にお勧めしたい本はありますか?

 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」、「見えないものに耳をすます」です。

Q. 私たちが、学生のうちにやっておくべきことは何だと思いますか?

 いろんな人、というのはいろんな年代、職業、国の、自分とは違う人と会うこと。あと、どこでもいいので一度外国に行くことですかね。外国に行けば、自分と違う価値観を持つ人とも会えますし。


5. インタビューを終えて

 筒井先生の経歴や研究内容、日本語教育についての話など、興味深い話を聞くことができました。日本語を学ぶことを通して自分を客観視することができる、という先生の言葉は本当にその通りだと思います。先生の授業では毎回、日本語を普段何気なく使っているからこそ気づかなかった新たな発見があります。

 また、先生の「外国に行ったほうがいい」という言葉にも共感しました。私自身、高校生の頃アメリカに住んでいたのですが、違う文化、価値観を持つ人と交流することで自分の考え方が変わったり、他者との考え方、意見の違いにも寛容になったりすることができたなと実感しています。また、滞在していたアメリカのことについて理解が深まるからこそ、日本との違いにも気づくことができ、母国についての理解も深まるということが、海外を訪れるべき理由の一つでもあると思います。

 次の授業からも、先生の授業を通して日本語について考え、客観的にとらえていきたいと思いました。筒井先生、お忙しい中、貴重なお時間をいただきありがとうございました。


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