外人の胸毛の下には死体が埋まっている

外人の胸毛の下には死体が埋まっている!

これは信じていいことなんだよ。なぜって、外人の胸毛があんなにも見事に茂るなんて信じられないことじゃないか。俺はあの胸毛が信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。外人の胸毛の下には死体が埋まっている。これは信じていいことだ。

一体どんな外人の胸毛でも、いわゆる真っ盛りという状態に達すると、一種威圧的な雰囲気を醸し出すことになる。俺にはその胸毛が何か信じられないもののような気がした。胸毛のない俺は不安になり、憂鬱になり、空虚な気持ちになった。しかし、俺はいまやっとわかった。

お前、この爛漫と生い茂っている外人の胸毛の下へ、一つ一つ死体が埋まっていると想像して見るがいい。何が俺をそんなに不安にしていたかがお前には納得が行くだろう。 

何があの胸毛をつくっているのか。それは死体の養分だったのだ。胸毛の毛根は、貪婪なタコのように死体を抱きかかえ、いそぎんちゃくの食糸のような毛根を集めて、死体の液を吸っている。

ああ、外人の胸毛の下には死体が埋まっている!

一体どこから浮かんできた空想かさっぱり見当の付かない死体が、いまはまるで外人の胸毛と一つになって、どんなに頭を振っても離れてゆこうとはしない。

今こそ俺は、シャツを第四ボタンまで開けてもじゃもじゃの胸毛をのぞかせるジローラモがテレビに映っても、自分に胸毛がないことを恥じずに、安心して番組を見続けることができる気がする。

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