見出し画像

escape (セルフライナーノーツ)

異国情緒溢れる旧市街に佇む、古錆びたアパートの一室。

幻想的でメランコリックな月明かり差し込む静まった夜。

アコースティックギターの繊細な音色とチェロの調べ。

現実の世界と、夢現の世界の狭間。

アルバムのタイトルとなった「between the night」のイメージは、振り返ってみると「escape」の世界観が起点となっているかもしれません。

そのぐらいこの曲は、「頭の中のイメージ」が圧倒的に強く、音や歌詞はその後、そこに呼応する形で生まれました。

こちらの曲を作るにあたって、一枚の「絵画」がずっと頭の中にあったのですが、それは、僕の祖父の寝室に飾ってあったもので、何故だかはわかりませんが、今でもその絵が頭から離れません。

ヨーロッパのどこかの古い街並み。街灯の灯りと、寂しそうに肩を窄めながら歩く人々。

絵画の横にはクラシックギターが飾ってあり、僕はそのギターを祖父から譲り受ける事で、ミュージシャンとしての人生が始まります。

祖父は本業が医師でありながら、クラシックの指揮者をやっていました。

その祖父が好きだった部屋、楽器に囲まれた空間、そして古びた絵画。

色々なイマジネーションが幼少期の頃に育まれ、大人になってからも、それが頭の中から消える事はありませんでした。

そして、HANCEの活動を通して、それが一つの曲として浮かび上がり、今回、パッケージする事が出来たのです。

HANCEの実体験を元にして作ったというよりは、頭の中に存在している「イマジネーションの世界」をそのまま、取り出して、作品にしたのが、「escape」です。

この作品ほど、きちんと形にする事が出来て嬉しかった曲は無いかもしれません。
何年も前にこの世を去った、祖父にも聴いて欲しかったですね。HANCE                                                                       

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?